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山登り

「・・ったく油断も隙も無い」

カモミールさんがあんな人だとは思わなかった。


「悪かったって!わたしの好みの人なんて、そうそういないから・・逃したくなくてね・・ちょっと魔が差したっていうか・・」

俺の前で必死に手を合わせるカモミールさん。


「半径1メートル近寄らないでくださいよ」

よくわからないけど、魔法が効かなくて良かった。

好きでもない人とキスはしたくない。


「部屋出て行ってもらえます?」


「わ、わかったよ。明日朝、花取りに行くから、準備しといて」


パタン


カモミールさんは出て行った。



****



私はお父さんに相談していた。

本当なら母親がいいのだろうけど、家にはお父さんしかいないから。

年の近い友達も私はいないし。


「アンそれ、本当か?」


「うん。ミライはカモミールっていうエルフと旅に出るっていってた」


「それで付き合ってるって言われたのか?」


「言われてないけど・・・」


「じゃあ、わからないな。本当に用があって旅に行ったんじゃないのか?」


二人きりの旅。

何もないはずがないって思っちゃうんだよね。

私はますます落ち込んでいた。

考えすぎなのかなぁ。

でもなぁ。

頭の中がぐるぐるする。

何もしたくない。



****



翌朝になった。

初めて寝るところって寝付けない・・・。

若干寝不足だ。

部屋を出ると、カモミールさんが支度をしていた。


「ふあぁ・・・」


「おいおい、大丈夫か?今日山登るんだけど・・」


「え?本当ですか?」

寝不足で山に登るのか・・仕方ないか。


「たぶん、大丈夫ですよ」


カモミールさんが心配そうな目でみていたが・・こればっかりは仕方ない。

頑張るしかなかった。


目指す木は山の頂上付近に生えているらしい。

その木にしか生えない花。

とにかく行ってみるしかない。


「はぁはぁ・・」


この世界に来てから、疲れにくくなった気がしたのだけど、山登りはきつかった。

前の世界でも山登りはしたことあったけど、結構大変だった。

汗がしたたり落ちてくる。


「ついてこれてるな」


カモミールさんは涼しい顔をしている。

慣れているのもしれない。


「ああ、言い忘れてたけど、聖なる山は光の魔力が強くてね、魔力耐性の無い人は体調をくずしてしまうんだよ。強すぎる光は毒ってことかな」


光とは回復魔法などの属性をいうらしい。

薬も多すぎると毒になる・・そういうことか。

カモミールさんの体が少し発光しているように見えた。


「ああ、これね。自分の魔法で体を守っているんだよ。君は平気みたいだけどね」


「俺?」


これも魔法耐性なのだろうか。

知らないうちに体が守られているようだった。


「昨日の夜といい、その不思議な力なんだろうな」


「そうですね。俺もよくわかりませんが、女神さまから力を頂いていたのかもしれません」


「女神ラシーネ様?まさか、君は会ったことがあるのかい?」


カモミールさんが目の前に迫ってきた。

食い入るように聞いてくる。


「そうか、もしそれが本当の事だったらこの魔力耐性も、うなずけるな」


『ミライ、わたくしに何か聞きたいことがあるのですか?』

俺の頭の中に声が響いた。

え?これって…。


『突然、失礼しました。わたくしラシーネです。言っていませんでしたが、ミライ様には、多少の加護をつけてあります。何分危険な世界ですので…』


そうだったんだ。

突然俺が立ち止まったので、カモミールさんが怪訝な顔をしている。

まさか、ラシーネから話しかけられてるとは言えない。

俺は何事もなかったように、山を登り始めた。

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