依頼人の家
俺は依頼人の家の前に来ていた。
木造の家はツタがはっていて、薄暗い印象。
今回の依頼は家事手伝いだ。
簡単な掃除と料理をする事。
多分大丈夫だろう。
「ここで、間違いないよな?」
俺の外見は目つきが悪くて、ガタイの体をしている。
つい忘れてしまいがちだが。
加えてこの世界では珍しい黒髪と黒目だ。
初対面の依頼人が驚いたりしないだろうか?
「まあ、今更だけど…」
深呼吸をして、俺はドアをノックした。
「は~い」
若い女性の声がした。
え?女の人?
家事手伝いっていうから男性かと…。
ドアが開けられた。
目の前には銀髪で、俺より少し背が低く髪が長い女性が立っていた。
「ああ、冒険者の方ね。どうぞ入ってください」
彼女は俺を見ても動じることなく、落ち着いた口調で家に招き入れた。
「あれ?」
俺は思わずつぶやいてしまう。
この人エルフじゃないだろうか。
耳が長くてとんがっている。
白い肌が透き通っていて、エメラルドグリーンの瞳が深海を思わせる。
「わたしは、カモミール・ムルフェ魔法使いをしています。研究してるとお掃除やら食事やら面倒くさくなってしまってね」
俺は自己紹介をした。
「俺はミライです。簡単な料理や掃除くらいなら出来ます。よろしくお願いします。」
「フフッ」
カモミールは口に手を当てて、笑った。
「君、真面目そうだね。見た目と中身が全然違う。今まで苦労してきたんじゃないかな?」
初対面なのに、何もかも見透かされている気がした。
「あれ・・?」
この家に入ってきた時から感じていた違和感。
なんだろう?
もやがかかっているような・・。
「ちょ、ちょっと?カモミールさん?何ですかこれ…。」
ぼや~っとした視界の先には大量のゴミが積まれていた。
「どうもお掃除って苦手みたいでね。出来なくてさ。一応努力はしたんだけどね…。」
目が慣れてきて、台所も洗い物が大量に積まれている。
「あ、ばれちゃった?魔法かけて見えないようにしてたんだけどね。君には効きにくかったのかな・・・」
足の踏み場もないほどのごみが散乱していた。
「まじか・・・」
俺に隠すことじゃないと思うけど・・隠れてたら掃除出来ないし。
「はぁ。まあお仕事だし。頑張りますか。」
俺は袖をまくって、近くにあるゴミに手を付けた。
****
「お~だいぶ片付いたね。良かった、良かった。もうお昼だから休んでくれていいよ」
床に散乱していたゴミは、ひとまとめにして端によけておいた。
とりあえずごみを気にせず、歩けるようにはなった。
家に帰ったらとにかく早く休もう。
「次からは、こうなる前に何とかしてくださいね?」
「大丈夫だよ、そしたらまた別の人雇うから…。」
この人は・・全く懲りていないようだ。
まあ、俺は依頼された仕事をすればいいだけだ。
報酬も高いし危険な仕事でもない。
そう考えれば楽な仕事ではないか。
今は口うるさく言わないでおこうと思った。
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