23話 立ち上がれ
レンをどうにか説得しようとするがもちろん無理。絶体絶命というやつだ。
「うーん。クラちゃんが僕の彼女になれば生きて帰れるんだけどね」
「……くっ」
俺は自分が情けなくなった。
「まぁそれだけクラちゃんに会いたいなら連れてくるよ」
「……」
「クラちゃんに交渉してみたら? はっはっは」
そういってクラを連れてきたレン。手を縛られている。
「クラ!」
つい叫んでしまう。
「テル……助けて」
クラの声が俺の心に刺さる。
「はっはっは。無理無理」
そういってレンが油断している間に股間に蹴りを入れる。流石のレンもダウン。
「ぐっ……」
「べ~」
そういって舌を出すクラ。
「はは。流石だな」
強い幼馴染に自分の弱さを感じ、苦笑してしまう。
「昔、テルが男に襲われたときは股間蹴れって言ってたからね」
「もう許さないぞ……」
「ここで爆破したらお前も死ぬぞ」
何とか俺は爆発しないようにするしかない。
「どうでもいいよそんなこと。好きな人と一緒に死ねば本望だしね」
「へっ卑怯な男だぜ」
そういって挑発する。
「何?」
「爆弾とかに頼ってよ。男なら正々堂々奪ってみろや」
「言ってくれる!」
「ぐはぁっ……」
腹に蹴りを入れられ、声が出る。
「はは。カッコつけてその程度か」
「テル!」
「この野郎!」
「もうあきらめなって。立っているのがやっとじゃん」
「頑張ってみんなで生きて帰ろうよ」
クラが泣きながら……でも笑顔で言う。
「だな」
だから俺も笑顔で返す。
「⁉」
シンと橘先輩が何とかレンの足をつかむ。
「ちっ、邪魔だ」
「そこだぁぁぁぁ!」
そういって隙を見つけ、レンの顔に拳がようやくヒットする。
「ぐっ」
「私はテルのことが好きだからっ! いつでも大事に思ってかっこいいテルが好きだと気付いたから……だから勝ってぇっ!」
「……任せとけ」
そう言ってレンにどんどん殴りを入れる。
「なんでなんでなんで」
「愛する人の力と言っておこう」
たまにはかっこつけていいよな。
「ちっ!」
「これで終わりだっくたばれぇ‼」
「これが本当のちか……」
そう言いかけてレンは気絶した。
後日爆弾も取り除かれ、山田グループも逮捕された。病院で大事をとって入院させもらった。
「これが愛の力ね……くくく」
「シン笑いすぎ!」
「あの時のこと全部消去したい」
カッコつけた俺が恥ずかしくなった。
「ま、山田グループも逮捕されたし、警察がうまくやって橘財閥の評価も上昇したし」
「橘先輩ありがとうございました」
橘先輩のおかげで何とか勝てた。
「いやいや。こんなの罪滅ぼしにもならないよ」
「じゃ後は二人で話すがいい」
優香会長がそう言って俺とクラだけになる。
「……もうすぐで凜先輩とかが見舞いにくるって」
「ね、テル……」
俺と幼馴染の話は、もうちょっとだけ続くんじゃ。
今回は昼投稿です!




