12話 俺ら3人
俺はクラと2人で話していた。
「クラ……どした?」
「凛先輩の初恋の人が橘先輩でショックだった?」
「そうだな、悔しい。けどどうしようもない事もわかってる」
「テルはすぐ諦める」
自分でも実感してる。へたれだってな。
「そうかもな」
「私なんかずっと片想いしてるのにシンは気付いてくれないんだよ? ちゃんと告白して振られただけマシだよマシ」
「まぁ告白しただけな」
「かと言ってここで諦めるのも違うと思う。だってあんなの勝ち逃げじゃん。まだ諦めないよね?」
「あぁ……そうだな。まだ諦める事は出来ねぇよな」
「話は終わったか?」
「シン……」
「今、どんな話したのかは知らねぇが、決心はついたみたいだな」
「あぁ」
「まだ打つ手はたくさんある。とりあえず"生徒会室"に行かないか?」
「橘も所属している生徒会か……確かにそこなら何か情報とか見つかりそうだな」
シンの口から生徒会が出るのが意外だった。
「じゃぁ行くか。クラは先に教室行っててくれ。なんかあったら連絡してくれ」
「了解」
俺とシンは、生徒会室に向かった。
「なんだ? もうそろそろ授業も始まるんじゃないのか?」
生徒会室に入ると、会長 佐々木優香が座っていた。そういや入学式とかにチラッと見ただけなので、よく見るとボーイッシュな美人な人だなと思った。
「優香会長、橘について何か情報とかありませんか?」
シンが問いかける。
「橘か……あいつはいろいろ噂もあるが上手い男だ。私も手を焼いている。だから生徒会に入れて監視下に置いたのだがな」
「実はいろいろありまして……」
俺とシンはあったことを説明した。
「わかった。お前らはここで諦めきれないんだな?」
「「はい」」
「わかった。なら私も力を尽くそう。と言っても、ここまで私もあいつを倒す、と言うか追い詰めることさえ出来てないんだかな」
「優香先輩から見ても強敵ですか」
「やつは親が政治家でな。何というか上手い。コネの使い方、力の使い方がわかってる」
「「なるほど……」」
「まぁいろいろ策は考えてはいるんだが、君らが来たならあいつに勝てるかもしれないな」
「……ではまた後日来ます。打ち合わせしましょう」
シンがそういうと、優香会長はふふんと笑った。
教室に向かう途中、まだ時間があるので俺は心に思ってることをシンに問いかける。
「シン、生徒会長と知り合いなのか?」
「中学からの付き合い」
「お前、デレデレしてたな。好きなのか?」
それはちょっと冗談ぽく、そうではないという希望も込めて言った。
「あぁ好きだよ。お前が凛先輩を好きな以上に」
「……そうか」
「でもクラの気持ちも気づいてる。ここだけの話、クラも可愛いと思うし、付き合えたら幸せだと思う。
だからまぁ優香さんに振られたら、クラと付き合おうかなって」
「てめぇ、本気で言ってるのか?」
「本気だよ。俺の本音」
「クラがどんな気持ちかわかってるのか、てめぇ! お前も橘と同類だよ!」
「でも別にクラは俺の事が好きだから幸せだろ!」
「な訳ねぇだろ! そんな振られたから付き合おうで本当に喜ぶと思ってるのか、馬鹿野郎っ! クラが長い間思ってた気持ちを馬鹿にしやがってぇっ!」
「じゃぁお前はクラが告白してきたらどうするんだ?」
「あいつは確かに可愛いとは思う。けどお前みたいにそんな最低な事はしねぇよ」
「……そうか。」
「俺はそんな最低な男じゃねぇよ。じゃあな、"野口"」
「ふん、親友の資格はないってか」
「そうだよ。てめぇは橘と一緒だ。よく考えてクラに謝るんだな」
問題は山積み。いろんな気持ちが複雑に絡まりあう、この物語はまだ続く。
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