第18話『いつものように』
亜空間へ潜行して、帝国本星惑星スカルの大気圏へ。
潜望鏡深度で様子を見れば、孤島に飛行場。
そして無数の飛行機が並んでいる。
「潜水艦桜姫は待機中の飛行機を撃ってください。乙姫は通信電探施設。そのほかをねらいます」
「わかりました〜〜お姉ちゃん♪」
二隻並んで半身浮上。
すでに主砲の狙いは定まっている。
「いきますよ、サクラちゃん」
「サクラ、撃っちゃいま〜〜す♪」
一秒間に一発撃てる主砲が二隻で十門。
それが次々に砲弾を降らせるのである。
無防備な飛行場としてはたまったものではない。
最初に乙姫が撃ったのは通信電探施設と思われるパラボラアンテナ。
次に高射砲。
そして整備用と考えられる倉庫。
さらに司令部風の建物であった。
飛行機の整列した飛行場が破壊される光景も派手ではあったが、乙姫の砲撃もまた、壮観な眺めであった。
計算上では一分間に一門六十発。
それが十門揃って六百発。
もちろん狙いを移動させるためのロスタイムがあるから、そこまでの数は撃っていないけど、飛行場が壊滅したことに変わりはない。
「それじゃあ亜空間を使って、大気圏外へ行きましょうか」
「そうですね、お姉ちゃん♪」
飛行場破壊で気をよくしていてはいけない。
宇宙空間を航行する補給艦隊、輸送船団の破壊こそが僕たちの本命なのだから。
しかしいの一番で通信施設や電探を破壊したのは正解だったかもしれない。
一番最初に目と口と耳を奪ったおかげで、帝国軍の誰一人として、あの飛行場が破壊されたことに気づいていないかもしれないのだ。
そうなると案外に、輸送船団補給艦隊が通常通りのこのこと、僕たちの網に飛び込んでくれるかもしれない。
そして待つこと一時間。
四隻の駆逐艦に護衛された輸送船団三十隻が、電探に引っかかった。
「護衛がずいぶん少ないね」
「おそらくあの飛行場をアテにしているのでしょうね。壊滅しているとも知らずに」
乙姫、桜姫。ともに潜望鏡深度。
ポジションは甲板方向、つまり輸送船団の上方にとっている。
通常輸送船団や護衛艦隊は上方を作らないそうだ。
お互いに船底を向けあって上下左右に甲板を向け、死角を作らないという。
それを防御編制というそうだが、彼らはその配置をとっていない。
「本星のお膝元ということで、すっかり油断してますね」
これは乙姫の分析。
「じゃあ訓練のように」
僕が命じる。
「ハイ♪ 訓練のようにですね♪」
散々シゴかれ、夢にまで出てきた訓練を思い出し、対艦戦闘用意を命じる。
いつものように僕たち乙姫が先制魚雷で輸送船団を追い立てて、護衛の駆逐艦を引きつける。
輸送船団の進路には桜姫が待機。
とどめの魚雷を撃ち込んで、残りの駆逐艦も始末する、という作戦だ。
まずは駆逐艦のソナー、集音器の圏外にポジション取り。
ズバリ命中コースへ魚雷を放つ。
それから主砲の射程距離まで急速接近。
半身浮上と同時に駆逐艦へ主砲を撃ち込む。
想定外なのは、輸送船団の数が僕たちの魚雷の数より多いことだが、カナザワ博士が主砲の威力を調整できるシステムを組んでくれている。
いざとなれば重巡の威力まで主砲を高めて、逃げる輸送船は砲撃でしとめればいい。
なにも問題は無いのだ。
「敵輸送艦隊、魚雷の命中コースへ入りました」
「潜水艦乙姫、魚雷発射」
僕の指示に乙姫は艦首方向を微妙に変えながら魚雷六発を発射した。
「両舷前進全速」
発射した魚雷を追いかけるように、潜水艦乙姫は走り出した。
魚雷が敵の集音器に捕らえられるのが先か?
僕たちが主砲の射程距離に入るのが先か?
当然のように魚雷は速い。
しかし突然魚雷警報を受けても、すぐに舵を切ることはできない。
すぐに舵を切ったところで、大型輸送艦が機敏に動けるわけがない。
僕たちの撃った魚雷はことごとく命中した。
そして護衛の駆逐艦のうち二隻が、怒り狂ったように乙姫へと突進してきた。
おかげで両者の距離が詰まり、主砲の距離になった。
「乙姫、半身浮上。狙いよければ接近中の敵駆逐艦に発砲せよ」
命令とほぼ同時。
潜水艦乙姫の6インチが火を吹いた。
5インチでも日を吹く駆逐艦の装甲だ。
乙姫の主砲を受けてはたまったものではない。
歯向かってきた駆逐艦は、二隻とも火だるまになって爆発した。
「主砲、すぐに重巡砲へ切り替え。最低でも六隻沈めるぞ!」
乙姫が敵を六隻沈めれば、桜姫の魚雷と合わせて三十隻を沈められる。
そんなことを考えているうちに、桜姫の魚雷が命令した。
こちらも大出力の主砲をぶっ放す。
命中、機関部に当たったようだ。次の弾は積荷を四散させる。
護衛の駆逐艦二隻も右往左往だ。
なにをどうすればいいのか、迷っているみたいである。
主砲三番、四番。これも輸送艦を吹き飛ばした。
輸送艦隊はそのほとんどを失っていた。
そこへ桜姫の魚雷が命中する。
この海域は鉄の墓標立つ墓場となったのだ。




