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寿さんの雑記帳  作者: 寿
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惑星間戦争に巻き込まれたけれど、僻地でノンキに輸送船狩りをしています

第5話『スマホ持ち』

その夜は艦内で泊まった。

まだ給料は入っていないし、どうせ見知らぬ星で街だ。

外出や上陸をしても面白くない。


と思ってベッドで横になっていたら、ドアがノックされた。



「どうぞ」



「失礼します、麻実也艦長」



乙姫だ。

しかも制服が違う。

黒のスタンダードなセーラー服だったのが、ニットのベストに折り目の多いスカート(短め)に黒いハイソックス。そしてネクタイと、ちょっと女子高生風な制服に着替えていた。



「制服、変えたんだ」


「はい、麻実也艦長の御要望でしたから……おかしいでしょうか?」


「そんなことない、とてもよく似合ってるよ」




乙姫は胸の前で手を合わせ、「よかった〜〜♪」と微笑む。

うん、どこからどうみても美少女だ。



「麻実也艦長は上陸されないんですか?」


「給料も入ってないしこの星のことも街のことも知らないんだ。出かける気にはなれないよ」


「それでは不肖この乙姫が、艦長を御案内いたします。お出かけしませんか?」



あら、これは意外な展開。



「とは申しても、ムシル泊地は田舎そのもの。あまり見るところはありませんが」


「いやいや、乙姫のお誘いなら断る訳にもいかないよ。行こう行こう」




乙姫に向こうを向いてもらって、私服に着替える。

私服といっても支給品のようなものだ。

艦長室のロッカーに用意されていたものである。




「こちらが艦長の身分証明書です。無くさないようにしてくださいね」



チェーンつきの定期入れのようなものを渡された。早速ズボンのベルト通しにロックした。



「船の舷門や基地の正門を通過するときにこれを提示してください」



なるほど、まさにパスポートだ。さっそくタラップを上がって船の上甲板に出る。

乙姫が先に登ったので、スカートの中が見えるかと思ったのだけれど……残念!

灯火管制で船の中を薄暗くしていたので、まったく覗けませんでした。


甲板の上は風が少しあったのだけれど、乙姫も僕もコートを羽織っている。

これでは風のいたずらも期待できない。

ますます無念であった。


甲板にはテントがはってあって、そこに門兵が詰めていた。

身分証明書を提示して、岸に降りる。



「乗組員たちも上陸してるの?」



ウチの乗組員はアンドロイドばかりだ。

船を降りて遊びに行ったりするのだろうか? と疑問に思ってしまった。



「はい、司令部で最新のデータを更新したり、気晴らしに外へ出かけたりしますよ。とは言っても船の備品ですから、飲み食いはしませんし遠くへは行きませんけど」




正門を出ると、田舎くさい繁華街が広がっていた。

メインは飲み屋。次に風俗店、そして食堂。

なるほど、これではアンドロイドたちも遊べない。

というか人間相手の店ばかりだ。


この光景を見て思ったのが「特選! 男の繁華街!」というフレーズだ。

野郎ばかりの街なんだろうなと、改めて思ってしまう。

しかし乙姫は迷うことなく僕の腕を引く。

どこへ連れていかれるかと思ったら、いわゆる携帯ショップであった。



「緊急の連絡を入れるときに必要ですから。それに娯楽品としても利用できますしね」




その辺りは地球のスマホと同じ扱いのようだ。

僕の銀行口座はすでに開かれていて、スマホ購入のための経費が振り込まれている。そしてその手続きはすべて乙姫がしてくれた。

これで僕もこの星でスマホ持ちとなった訳だ。



「麻実也艦長、これでさまざまな情報を仕入れて、早く惑星アルファの文化になれてくださいね」


それと。


「ときどきえっちなサイトを閲覧して、欲望を高めてください……」



真面目な女子高生風の乙姫が、恥ずかしそうに言う。

目をそむけて。顔を真っ赤にして。

その姿を見るだけで、「この戦争、頑張ろう!」などと軽く感じてしまった。


外出の用件はスマホ購入だけ。

僕たちはすぐに船へ帰った。

発令所へタラップを降りてゆくと……。



「艦長就任おめでとーーっ!」



砲雷長を筆頭に、乗組員総出でクラッカーを鳴らす。

しばらく耳がキーンとしたくらいの音だった。

その砲雷長、ならびに砲雷科の赤いセーラー服連中は、髪型がポニーテールになっていた。



「あれ? その髪型……」


「艦長が髪型を変えてくれって言ってたろ? だから砲雷科はこうして揃えてみたんだ」



ちなみに船務科はふたつにわけただけのおさげ。

機関科は髪を一本に束ねただけ。

そして飲み物を運んできた主計長は……なんと一本三つ編み眼鏡付きであった。



「……これは、私も負けてはいられませんねぇ」



いや、副長乙姫さん?

髪型は勝ち負けじゃありませんから。

そうして飲めや歌えやの歓迎会は夜おそくまで続いたのであった。

飲んだのは僕だけだけど。


早く補給船狩りに出てください。お願いですから。

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