過労死した男は魔王に異世界転生して家出を目指す
ちょっとした思いつきなどを不定期で更新していきます。
人生は上々だ。
私は宿のベッドにくつろぎ、この世界の小説本を読み耽っていた。
薪ストーブは部屋お暖め、少し汗ばむくらい。私は喉を潤すために、グラスの酒をチビリと含む。
私は魔王。異世界転生した魔王だ。前世の私は働きすぎ、過労のため命を落としてしまった。
そのことを憐れんで、神さまは転生する私のリクエストをひとつきいてくれるとのたまった。
「でしたらはたらかなくともいい身分でお願いします!」
そうして私は魔王に転生したのだ。
魔王の生活も悪くない。しかし私にはもうひとつ、前世での不満があった。妻と不仲であったのだ。そして人間関係が疎ましかったのである。それなのに私の居城、ダンジョンの魔軍どもは私と接触したがったのだ。
「もうイヤだ! 人間関係はゴメンなんだ! 私を一人にしtwくれないか!」
そんな本音をもらす訳にもいかず、私は悶々とした日々を過ごす。
そしてヒラメいたのだ。
家出をしようと。
なに、魔王の魔法や能力があれば、食うには困らない。魔軍の女幹部には「人間世界を視察してくる」とかなんとか適当なことを言って、上手いこと逃げ出してきたのだ。
魔王の能力を使って賭場で少しばかり稼ぎ、宿をとる。そのようにして私は、一人だけのスローライフを手に入れたのだ。
もう、働くことも人と関わることもない。私のために私だけの有意義な時間を過ごすだけである。
しかし、脳内に直接語りかけてくる者がいた。
「魔王さま、大変です! 勇者一行が攻めてきました!」
魔軍の女幹部である。
「ちょっと待て! 何故に君は私の居場所がわかるのだ!」
「はい、魔王さまの強大な魔力がダダ漏れでしたので、すぐにわかりました」
本音を言えば帰りたくない。しかしここで帰らなければ生き残った魔軍どもは私を裏切り者と追ってくるだろう。
大変にイヤではあったが、私はダンジョンへと帰還した。
炎の吐息、ブレストファイヤー。勇者軍は全滅した。
そして私は魔軍の連中に讃えられる。やはり魔王さまだ。魔王さまがいなくちゃ始まらない。
以前にも増して、私に擦り寄る者が多くなった。勝利と同時に、こんな生活に嫌気がさす。
「だが、一度上手くいきかけたのだ。次やれば、もっと上手くいくさ」
早くも私は次の家出計画を練りはじめていた。




