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仲間を気絶させる時はやっぱり首筋に手刀

 すぐにモンスターの死体の山ができた。


「はぁはぁ。今日のモンスターはやけに強いな」


「はぁはぁ。そうね。どうしてかしら?」


 それでも今日のモンスターの群れはガイとエレナを少し疲労させたらしい。


「レオ、大丈夫?」


 エレナが俺を心配した。


「ん?」


「心配したけど大丈夫みたいね。あんなに強力なモンスターの群れだったのに、息一つ切らしてないわね……」


「あ、あぁ、そんなことないぜ! はぁはぁはぁはぁ。疲れたなー」


 ここはガイやエレナよりも疲労した素振りを見せてナンバー2を死守する。


「そ、そんなに疲れた? た、たまには私がレオに回復魔法をしてあげようか?」


 エレナが何故か赤い顔になる。


「いいよ。俺もエレナほどじゃないけど、自分で回復魔法はできるから。ガイにしてやってくれ」


「そ、そう……」


 エレナはなんだかうなだれたようにガイのほうに行く。


 どうしたんだろうか? 


 やはり最近モンスターが群れて人を襲うことを憂慮しているのだろうか。


 ちなみに通常のモンスターは危険な野生生物と変わりない。


 モンスターを統率して、意志を持たせ、軍隊化する存在。


 それが魔族だ。その魔族の王が魔王。


 つまり俺が山の向こうの魔王城に行って魔王を倒せば、人類の問題の一つはアッサリ解決だ。


だが、単身魔王城に行って魔王など倒そうものなら、完全に村でナンバー1になる。


 それどころか世界中の英雄のなかでナンバー1、イケてる男ナンバー1になってしまう。


 人類の問題など、どうでもいい。


 必要なのはナンバー2の座!


 俺がナンバー2という甘美なポジションに居続けることこそが重要なのだ。


 パーティーで畑に向かう。


 エント村の結界のなかにも少しは畑はあるが、村の人口の全てをまかなえるほどの面積はない。


 村人は危険でも結界の外に畑を作らねばならないのだ。


 前方に三体の巨人が見えてくる。ミスリルゴーレムだ。


「いたぞ! 三体か! 支援してくれ!」


 ガイが剣を構えて突っ込む。


 すかさずエレナが、ガイの攻撃力と防御力を上げる支援魔法バフをかけた。


 俺はガイが向かっていったゴーレム以外の二体のゴーレムの目に向けて矢を射る。


「ぐぎゃあああああああああ」


 一体には命中させた。


 もう一体はあえて矢を外す。


 二体とも即当てると村ナンバー1の弓使いである狩人のジンさん(ハーフエルフ)よりも弓が上手いと思われてしまいかねないからね。


 常にナンバー2を目指している俺は弓使いナンバー2の座にも抜かりはない。


 ガイは剣の腕を上げているようでミスリルゴーレムの一体を袈裟懸けに肩から両断した。


 しかし、俺があえて矢を外したミスリルゴーレムに殴り飛ばされてしまう。


「ぐおっ」


 ガイの体が二、三度跳ねて後方にふっ飛んでいった。


「ぐ、ぐううううぅ……」


 幸いエンシャントソードを盾にしたのか、意識はあるようだ。


「レオ、ティア、時間を稼いで! 私がガイを回復させるわ!」


 エレナはガイを回復させるようだ。


 ミスリルゴーレムなど素手でも倒せるが、そんなことをしようものなら村で即ナンバー1になる。


 妹と必死に攻撃をかわすフリをして時間を稼ぎ、ガイが魔法で回復するタイミングにあわせて、ティアがゴーレムの単眼に弓を命中させた。


 これで残りの二体のミスリルゴーレムも視力を奪われている。


 後はガイの剣でもなんとかなるだろう。


◆◆◆


「はぁはぁ。ミスリルゴーレムが三体もいるなんてな」


「はぁはぁ。さすがに危なかったわね」


 ガイとエレナは完全に息が上がっていた。


 妹のティアは俺が鍛えているから息も上がっていない。


 もちろん本当はガイやエレナより強い。


「でも、気になるのはモンスターが畑を荒らしたことね」


「この辺にモンスターを統率するような魔族がいるのか」


 二人は気がついてないようだったが、俺はとっくに原因に気が付いている。


「ほう。先ほど送ったモンスターの群れを退け、今またミスリルゴーレム共を倒したのか。人間にしてはやるな」


 早速、原因のお出ましだ。


 ガイとエレナが声の方向に慌てて振り向いた。


 前世でいうところの悪魔のような見た目の魔族が二人。


 それを従える魔族は黒い甲冑で頭てっぺんから足先まで覆われていた。


 だが、何だ? あの鎧は? ミスリル? アダマンタイト? オリハルコン? 違うぞ。


 俺の知る人間の情報を全て照らし合わせても、何の金属かわからない。


 こいつが、というより、この鎧が、結界の外に出た時に感じた瘴気の原因だな。


「じょ、上級魔族? それも三人だと」


「ど、どうしよう……」


 ガイとエレナが怖じけている。魔族の個体数は少ないが、人間と比べるとかなり強い。


 上級ともなれば、ガイとエレナの二人がかりで、やっと一人を倒せるかどうかだ。


 ティアで互角といったところだろうか。


 さらに、黒い甲冑の魔族は取り巻きの二人よりも確実に強い。


「こいつらを村に行かせるわけにはいかない。相打ちを狙うぜ」


「そうね。お父さんとお母さんと皆のために」


 ほとんど勝てないとわかっても、ガイとエレナはひるまなかった。


 俺は少なからず驚いた。村のナンバー1戦士たちというだけのことはある。


 しかし……。


「ふっ。お前らに死んでもらっちゃ、俺が困るんだよ」


「「え?」」


 俺の唐突な台詞に驚いたガイとエレナの首元に、優しく手刀を当てた。


 二人はすぐに気を失って草むらに倒れる。


「ティア、二人を村の結界内に」


「はい。お兄様」


 ティアはうなずいて、二人の首根っこを掴んで村のほうへ走って行く。


「お前らが死んだら、村の剣と魔法で俺がナンバー1になっちまうだろ」


 仲間というには弱過ぎるが、いい奴らだしな。

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