家族のなかでも2番目です
「さて、そろそろ朝食でも食べるか」
「はい」
妹と寝室を出て、顔を洗い、食堂に向かう。
「よう、レオ、ティア」
廊下にはボサボサヘアーの親父がいた。
親父も加わって食堂に向かう。
俺は十数年前に赤ん坊として、田舎貴族のこの親父の息子に転生した。
どうして転生したかは知らん。興味ない。
ナンバー2というポジションになれるならば、どうして転生したかなど、まあいいだろう。
こちらの世界のほうが都合いいしな。
ただ、ウチは貴族とはいえ、ど辺境のエント村周辺が領地の田舎貴族だから村人と言っても差し支えないだろう。
ちなみに家の廊下の窓から見える岩山の向こうには魔王城があるから、エント村は前世でいうところの〝ラストダンジョン前の村〟なんだけどね。
妹と親父で食堂にはいる。
「おはよう、レオ、ティア。ついでにアナタも。朝食はもう出来ているわよ」
いつものように母が朝食を作ってくれている。
美人で、大きな子供がいるとは思えないほど、若く見える。
親父は平民の出だったが、王都の騎士団でナンバー1の剣の使い手になり、エント村を領地に貰ったらしい。
エント村の近くに魔王城があることは一般には知られていないが、この辺のモンスターが強力なことは有名だ。
最強の騎士団員である父でなければ、エント村を守れないという名目で派遣されたのだ。
というのは表向きで、実際は体のいい左遷であり田舎に飛ばされたというのが真相だ。
これだ。ナンバー1になると、ろくなことがない。
良家の子女であった母は不満たらたらで父についてきた。
そのせいもあって、家族のポジションは、母、俺、妹という順位で、最下位を父とペットの犬が争っている。
俺は〝家族でもナンバー2〟だ。
顔を洗って、妹と席に座る。
「昨夜は帰るのが遅かったじゃない? モンスター狩りが大変だったの?」
朝食を食べようとすると母が話しかけてきた。
「ああ、昨日は少しだけ大変だったよ」
俺が母にそう答える。
「うふふ。モンスターではなく、この星さえ壊しかねない巨大隕石でしたからね。さすがお兄様です」
ティアが俺に耳にそっとささやいた。
ちなみにこの世界は戦闘力が社会的な評価に繋がりやすい。
何故なら人間の敵が多いからだ。
魔族や竜族、亜人族なんかもいて、それぞれ知能を持っている。
それらの異種族と争っていて、人間が安定的な支配種というわけではない。
人間を襲うモンスターも多い。
そのため敢えて言葉には出さなくとも、戦闘力が高い人物がナンバー1のポジションと認識されやすい。
その下は言わずもがな……ナンバー2だ!
どこでもいいのだが、ナンバー2をとるという意味においては実にいい世界に転生したもんだ。
というわけで、俺はぶっちぎりの最強を隠しつつも積極的にモンスター狩りをしている。
そんなことを考えていたら外の方で気配がしたので食堂の窓を見る。
「よう、レオ。おはようございます」
剣をもった少年がやってきて、食堂の窓から顔を出して挨拶する。
噂をすれば、村の戦力ナンバー1の少年冒険者のガイだ。
俺と同い年にして剣の使い手。今も大剣を背負っている。
ガイもやはり積極的にモンスター狩りをしている。
ナンバー1であり続けたいのかもしれない。
愚かなことだが、ナンバー2が欲しい俺にはありがたい。
「よう。ガイ」
軽く挨拶する。
「剣か……。ガイ、またモンスターが出たのか?」
親父がハムエッグを食べながらガイに話しかけた。
「ああ。村の外の畑が荒らされましてね。少しでも減らさないと」
まあ本当はガイより親父のほうが強いだろうが、家族内で親父がペットとポジション争いをしているのは有名だからな。
名目は領主様でも村での実質的なポジションは低い。
ちょっと可哀そうだが、親父は何だかんだ言われながら母に愛されているようだし、楽隠居の地位に甘んじているようなところもあるからいいだろう。
何より俺が家族や村のナンバー2を維持するのに都合がいい。
俺は素早く朝飯をかっ込むと弓と矢筒を取った。
「助かる。いつものようにレオとティアちゃんは、俺の剣を弓でサポートしてくれ」
「わかった。じゃあ、親父、母さん、行ってくる」
モンスターを直接斬り伏せる剛剣の使い手を弓や魔法で支援するナンバー2。
これこそ俺のあるべき姿だ。
俺とティアとガイで向かう先は村外れの門。
村はモンスターを防ぐ魔法の結界で守られている。
門の外はモンスターのフィールドだ。