洗脳レベルで俺をナンバー2と主張してくれる妹 略して洗妹
窓から陽光が、俺の顔に降り注ぐ。
エント村には青々とした高い空が広がっていた。
平和そのものだ。
まあ昨夜は巨大隕石の直撃で人間が滅亡する危機だったけどね。
「ふぁ~あ」
ベッドから上半身を起こして伸びをする。
「〝ナンバー2のレオお兄様〟、おはようございます」
振り向くと、少しだけ青みのかかった髪の美少女が、俺のベッドで女の子座りしていた。
「おはよう。ティア」
妹のクリスティア、愛称ティアに、俺は挨拶した。
妹といっても血は繋がっていないし、年齢も俺と同じぐらいかもしれない。
初めて会った日は傷だらけで鎖につながれていた。
この国では異民族である奴隷少女。
扱われ方は最悪だったのだろう。
田舎貴族の子息である俺が、子供のころ街に行った時に両親に我儘を言って買った。
その後に回復魔法で傷を治してから、親に養子として妹にして貰ったのだ。
ちなみに、一箇所だけ胸の谷間に傷を残している。
ティアが要求して残した傷だ。
「お兄様、今日も私の胸を見てください」
「あぁ」
今朝もその傷を俺に見せる。
毎朝のこの行為は俺への恩を忘れないための儀式なんだぞうだ。
ところで奴隷の少女を助けるようなことを俺はどうしてしたのか。
もちろん、ボランティアでも、美少女の妹が欲しかったからでもない。
ナンバー2というポジションを得るためさ。
たわわに成長した胸を見ても、俺の心は揺るがない。
目的は常にナンバー2だからね。
「ティア。今日も俺をナンバー2にするために働いてくれよ」
「はい!」
俺が命令するとティアは満面の笑顔で答えた。
ナンバー2は所詮ポジションである。
実力はナンバー1だろうが、底辺だろうが、誰かがナンバー2だと強く主張してくれれば、通ってしまうことも多い。
だから本当はぶっちぎりの最強である俺の実力を知りながら、ナンバー2を主張してくれるティアがいると非常に助かる。
「でも、レオお兄様」
「なんだいティア?」
「私の役目が、お兄様のナンバー2を主張することだとはわかっていますが、どうしてナンバー2なのですか? 私はお兄様の本当の実力を知っているので心苦しく感じる時もあります」
「ふふふ。ティアは馬鹿だな。ナンバー2こそ至高のポジションなんだぞ」
ナンバー1として苦労し、矢面に立たされ、自由にふるまえず、最後には刺されてしまった前世の経験を妹に話す。
ナンバー2が、その陰で、いかに自由に振る舞えて、うま味があるかを語った。
「さすが……レオお兄様……です」
「お前も俺がいない組織や集団ではナンバー2を目指すんだぞ」
「はい!」
「なんかの事故でナンバー1が死んだりして欠損した場合は、お前がナンバー1をやって俺のナンバー2を死守しろよ」
「もちろんです! ところでレオお兄様……」
「なんだ?」
「ハグしてもらってもいいですか?」
ティアが上目遣いで聞いてくる。
「ははは。よしよし」
ティアの頭を抱いて撫ででやる。
俺がこうしようと思ってこうなったわけではないが、〝洗脳レベル〟になってしまった妹は今日も可愛い。