ナンバー2に俺はなる!
俺の名はレオ。転生者だ。
転生者であることなど、俺にとってはどうでもいい。
重要なことはナンバー2というポジションや立場にこだわりを持っているということだ。
転生前の俺は愚かにもナンバー1のほうが好きだった。
昔から他人の目を気にしないで突っ走るところがあった俺は、魔法少女マムさんの絵がデカデカとプリントされているシャツで登校してしまい、スクールカースト最下位になってしまったのだ。
スクールカーストの最下位を味わいつくし、ナンバー1に憧れた。
それまでは努力などしたことが無かったが、最下位で蔑まれた辛さをバネに努力をして学内ナンバー1の座に上り詰めたのだ。
大学を卒業してからもナンバー1であり続け、金、名声、地位あらゆるものを手に入れた。
だが、それが死ぬ原因になった。
ナンバー1になることで、目立ち、妬まれ、恨まれ、刺されてしまった。
アッサリと死んだ俺は何故か異世界に転生した。
その時、気が付いたのだ。
ナンバー2というポジションは素晴らしい!
ナンバー1よりも、ずっと、ずっとだ。
集団においてそれほど目立たず、矢面に立たず、大きな影響力を行使できる。
トップとは責任の重さが隔絶している。
つまり、もっとも自由に大きな影響力を行使できる立場がナンバー2なのだ。
新しい人生は……。
ナンバー2に俺はなる!
賞金首として狙われまくる海賊キングになるより海賊船の副船長。
責任ばっかり重い忍者マスターになるよりその陰にいる忍者。
天下の大将軍になるより参謀になって実際に軍を動かすほうが、はるかに魅力的だ。
ただ、ナンバー2というポジションは狙ってなるのが難しい。
下からは這い上がってくる奴は常にいるし、上の奴を追い抜いてしまうこともある。
まず圧倒的な実力になって、手加減してナンバー2のポジションを維持すれば確実だ。
つまり、この世で一番TUEEE奴になって、他人から二番目の実力だと思われるように調整するしかないのだ。
転生前の世界では、さらに圧倒的な実力を得ることは難しいという問題があった。
どんなに努力や工夫をしても100メートル走で平均的な学生の倍の速さで走ることさえ難しい。
転生前の世界は個人差の小さかった。
一方、転生先の世界は身体能力や魔力といった個人の力の差がとてつもなく大きい。
赤ん坊だった俺は、バブバブしながらやった……と思った。
この世界だったら圧倒的実力を得て、ナンバー2に調整することができるはずだ。
ハイハイ歩きの時から、努力して、努力して、努力して、工夫して、工夫して、工夫した。
多少の危険を伴ったが、飛躍的に力を伸ばす実験も試みた。
前世の科学知識をこの世界の魔法技術と掛け合わす。
皮肉なことに前世で求めていたナンバー1の知識が役に立った。
前世でナンバー1の学校に入学して、専門の科目は当然のこと、一般教養の科目までナンバー1になった俺は最新の兵器、原子核反応、さらには相対性理論や素粒子物理学にいたるまで(少なくとも表面的には)かつての世界の大概の知識を持ち、理解していた。
幾度とない失敗の末に……実験は成功した。
特に大成功したのは、魔法の力で原子核分裂や原子核融合を起こし、発生した膨大なエネルギーを自分の魔力に変換することだった。
原子核反応から湧き出る無尽蔵の魔力を使ってさらに科学知識を応用する実験を進める。
そして……俺は新しい世界で文字通り覚醒し、ぶっちぎりの最強になったのだ。
ただ、俺にとっては最強など単なる過程だ。
目指すのはあくまでもナンバー2!
実力を隠し、まずは村の戦力としてナンバー2のポジションを獲得。
剣も弓もナンバー2、槍、ナイフ、盾、全ての武器をナンバー2。もろもろの魔法もナンバー2のポジションを獲得した。
村の女の子からの人気だってナンバー2だ。
俺が15歳になるころには、転生先の村で様々な〝ナンバー2のコレクション〟得て、心から満足していた。
もちろん、そのコレクションは手加減して得たポジションだ。
本当の実力はぶっちぎりの最強であることを知るのは妹のみ。
もし、俺の努力や工夫、それによって得た実力を見せたら、どんなにプライドの高いエリートからだって、
「やるなレオ……お前こそナンバー1だ!」
と言われて、アッサリとナンバー1になってしまうからな。