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ゴルゴダ四天王の秘密 絶対にバレてはならない

 魔族たちが俺を伝説と言い出したあの日から3ヶ月ほど経っていた。

 今は魔王国の会議に出席している。


「ユダよ。王国の状況はどうだ?」

「はい魔王様。逆らうものはゴルゴダ様が粛清しましたので、臨時徴税、農地開墾、治安維持などは上手くいっています。ただ難航している案件もありまして……」

「人間の国々との和平交渉だな」


 魔王のリリスがお誕生日席でなにか言っている。

 俺はそのリリスの隣。ナンバー2の席に相応しい。

 ユダの馬鹿の席はと~くの席だ。

 魔王国の運営は、そこそこ上手くいっている。

 脳筋の軍人しかいなかった執政部に俺が官僚を登用して、地球の諸制度を取り入れたからだ。

 それはいい。

 だが、一つだけナンバー2の俺を悩ます大きな問題があった。

 ゴルゴダ四天王、つまり俺の四人の直属の配下の問題である。

 気なって集中できないので会議の内容は聞けていないが、議題もきっとその問題のことだろう。


「どの国も我が魔王国と和平を結ぶ気はないようです」

「おお。和平を結ぶ気はないとはいえ、返事があったのか」

「はい。半分ぐらいの国から」


 ユダが書簡を探りながら答えている。

 魔王城の会議室は青い炎が出る蝋燭で彩られている。

 今が夜だから陽の光がなく、蝋燭の火が必要なのだ。

 魔王城はどの部屋も不必要に暗いから昼間でも必要なのかもしれない。

 ナンバー2として城の採光も考えるか。

 ともかく今は夜だった。


「大きな進展だ。まずは連絡を取り合えた」

「左様でございますな」


 何故、夜にまつりごとをしているのか?

 俺の都合だった。

 俺はこの世界の田舎村の領主の息子に転生した。

 つまり昼は村人、夜は魔王国のナンバー2である宰相として生きている。


「書面にて和平の書状を各国に送ればいいというゴルゴダの案は、やはり名案だった」

「誠に。使者としてトロール族一の巨人ダローンを派遣した時はあわや戦争になりかけましたからな」

「どうして、そうなってしまったのでしょう?」

「はて。どうしてでしょう? 人間どもは壁が壊されたとか魔王軍が攻めて来たとかなんとか」

「誠意を示すために魔王軍のつわものを使者に立てたのだが……。人間の国のことはわからぬ」


 正直、少し眠い。

 妹のティアはユダの長話を聞きながらコックリコックリと船を漕いでいた。

 可愛いけど、〝ゴルゴダ四天王〟になったのに居眠りは良くないな。

 そう。ゴルゴダ四天王は四天王なのにティアしかいないのだ。

 このままでは上級の魔族どもに「ゴルゴダの奴は数も数えられないんちゃう?」って思われてしまう。

 そんなことになったらナンバー2の地位が危うい。

 今は力で押さえつけているが、早急に残りの三人を見つけなければ内心では俺を舐めてナンバー2と認めない奴が現れるに違いない。

 ユダの馬鹿がゴルゴダ様の直属の部下の四天王を作ったらどうでしょうとか媚びるからついつい乗せられてしまった。

 怒りに任せて机を叩く。


「くそっ! ユダの奴め!」

「ひいいいいぃっ! ゴルゴダ様!?」


 早急に誰かをゴルゴダ四天王に任命しなければならないが、直属の部下であろう四天王をその辺の奴らに任せるわけにはいかない。

 それこそナンバー2の威厳に傷が付く可能性がある。

 ん? そういえばユダはどうだろうか?

 こいつは俺が何回も殴っているのに死なない。

 体力と防御力はある。


「あわわわわわ。このユダ。未だに人間の国との和平の交渉を未だ進めることができず……」

「けどユダは攻撃力がねえんだよな」

「ひっひいいいいい。申し訳ございませぬ。攻撃力がないとはどういうことでしょうか?」


 コイツはなにを言っているんだ。

 攻撃力がねえって言ったら、強力な攻撃魔法がないとか、威力のある剣技を使えないとかに決まっているだろうが。

 やっぱり四天王は任せられねえ。


「わからぬかユダよ」


 俺を伝説にした例の長老の魔族がしたり顔でユダに説明し始めた。


「な、なんでしょう?」

「それはだな」


 確かヤウダとかいう名前らしい。

 三千年ぐらい生きているとか聞いた。

 ちょうどいい。

 俺はナンバー2の地位を保つため四天王の問題で忙しいのだ。

 くだらない説明はよぼよぼの爺さんに任せることにした。


「ゴルゴダ様は和平を受け入れなければ攻めると人間の国への書簡にしたためろとおっしゃられておるのじゃ」


「ええ? 和平交渉なのに?」


 よく聞いていないが、リリスまで話に加わりはじめたようだ。


「わかりませんか? 魔王様」

「長老ヤウダよ。和平をすすめようというのに攻めると書き記してはまるであべこべではないか」

「魔王様。そうではございませぬ。外交の要轍は背景にある武力なのです。平和のためには時に武威を示すことも必要です」

「なるほど。そうかもしれない。魔王国が今、治まっているのもゴルゴダの武威があったからだな」


 そういや昔、七大諸侯とかいう魔貴族がいたな。

 伝説の日以前の魔王国は七人諸侯と呼ばれていた貴族がそれぞれの領地を勝手に治めていた。

 つまり君主たる魔王の権限が及ばない分権国家だった。

 今は魔王の直下にはナンバー2の魔宰相ゴルゴダ、つまり俺しかいない中央集権体制に移行中だ。

 旧七大諸侯なら、そこそこ強い奴がいてもおかしくないんじゃないか?

 ただ、残念ながらここは会議の場だ。

 脳筋の奴は入れてない。

 以前の魔王国は力が重視されていたから、きっと七大諸侯も脳筋だろう。

 とすると会議にはいないだろう。

 七大諸侯はどこにいるんだろう?

 気になって仕方ない。


「ねえ。昔の七大諸侯って今どこにいるんだっけ?」

 ちょっと聞いてみたら、皆はなぜかポカンとした顔で俺の方を見た。

 脳筋は排除したけど、会議には魔族が沢山いるから誰か知っていると思ったんだが。


「な、なるほど。ゴルゴダ様はいつも妙案を出されますな。人間の国の前に旧七大諸侯の軍を展開させて、その上で和平交渉をしようという、ぎゃっぎゃぴー」


 俺はユダの顔面にこぶしを叩き込む。

 話を聞いてんのか?

 軍を展開させるとか、和平交渉がなんだとかわけがわからん。

 ナンバー2の地位がかかっているというのに。


「七大諸侯がどこにいるかって聞いてんだよ!」

「は、はい。魔獣伯アリゲダイルは反旗を翻し、ゴルゴダ様が粛清しました」


 あ~そんなのもいたな。

 伝説の日に粛清した奴だ。


「ああ、そうだったな。アイツはいなくなった。他の奴は?」

「不死公ネクロデスもゴルゴダ様が封印しましたよね」

「あ~アイツか。魔法で封印したんじゃない。殺しても復活するからブラックホールに転移させたんだよ。すぐには取り出せそうにない」


 ネクロデスは元々自殺した人間だったらしい。死んだ後に魔力で自らアンデットになった筋金入りネクロマンサーだ。

 殺しても復活する点はゴルゴダ四天王に相応しかもしれないが、陰気な奴で人間の国の墓場の遺体を使って勝手にゾンビの大軍団を作った。

 頭にきたので転移魔法でブラックホールに投げ込んでやった。


「ブ、ブラックホール? ブラックホールってなんでしょう?」

「そんなことはどーでもいいだろ! 他の奴は?」

「す、すいません! 冥海伯シーザーベンドもゴルゴダ様が殴って死んでしまいました」


 シーザーベンドは事あるごとに大津波を起こす。

 人間の国のみならず、新しく開墾した魔王国の農地まで押し流しやがった。

 やはり頭にきたので殴ったら死んでしまった。


「だってアイツ、津波とか起こして迷惑だったんだよ。生きている奴はいないのか?」

「最果ての魔女ベアトリアは引退して魔の森に籠もっています。魔龍候ヴェルガダンデはどこかに飛び去ってしまい、それから見たものは誰もいません」


 碌な奴がいねえ。

 ベアトリアとかいう魔女は引退したなら年寄りだろうし、ヴェルガダンデとかいうドラゴンはともかく頭が悪そうだ。

 生きていてもあまり使えそうにない。

 俺ゴルゴダも七大諸侯の一人だから、残りはもう一人しかいない。


「最後の一人は?」

「剣鬼姫とも言われる剣鬼候ナターリアも生きていますが」

「あぁ、ナターリアか」


 ナターリアの剣の腕は俺も聞いている。

 魔族一の剣の使い手らしいな。

3日に一回ぐらいのペースでまたしばらく更新できたらと思っています。

よろしくお願いします。

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