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対決! 古の勇者アルバーン!

「何、考えてるんだ? 死ぬぞ!」


 やはり、リリスは弱い。


 勇者アルバーンの聖なる結界に入って、もろにダメージを受けている。


 聖なる魔力によるダメージは魔族にって業火に焼かれるような苦痛のハズだ。


「うううぅっ……どうしてもレオ様に夢を助けて欲しくて」


 俺はナンバー2のためなら、どんな痛みにも苦労にも耐えられる。


 決意と覚悟があるからだ。


「ならば、この子にとって人間と魔族にとって共存の夢は……ウオオオオオオオオオォ!」


 核反応を連鎖させて膨大な魔力エネルギーを作り出す。


 魔力エネルギーをを変換して、あまり得意ではない闇属性の魔法を発動する。


「古の勇者アルバーン! ナンバー1のリリスを救うため……勝負だ!」


 圧倒的な力を持っていた初代魔王を討ち取った勇者アルバーン。


 張った結界も凄まじい。


 闇属性の魔法は不得手ということもあるが、なかなか打ち破れない。


 だが、徐々に聖なる結界に亀裂が入り、ついにバリンと砕け散った。


「はぁはぁっ」


 今頃は村に光と闇の魔力ダストが煌めいているだろう。


 しかし、魔王のダメージは深刻だ。


 既に人間を装えず、魔族特有の角が生えてしまっている。


「大丈夫か?」


 魔王を抱きかかえる。


「だ、大丈夫です……急激に身体が楽に」

 

 大丈夫ではない。魔法で確認すると生命力が著しく低下している。

  

 その時だった。


 穀物倉庫の扉がバラバラに切断される。


「レオ! 女と遊んでる場合じゃない! 村の結界がやられたんだ! 魔族やモンスターが雪崩込んできてもおかしくない! 戦える奴は村の柵に……ん?」


 扉には魔法の鍵をかけておいたのに。


 親父はかつて王都騎士団ナンバー1と言われていただけのことはある。


「そ、そいつは上級魔族じゃないか? すぐ殺せ」


「いや、こいつは殺さん」


「殺さんって、おい! どうするつもりだ?」


「助ける」 


「助けるって……そんな場合じゃ……」


 親父が俺とリリスの様子を見る。


 ふっと笑った。


「お前を信用していいんだな?」


「俺は信用してくれなくていいが、この魔族は信用していいぜ。人間のためにこうなったんだ」  

 

「まあ、お前は昔から俺よりずっと強かったしな。何か考えがあるんだろう」


 俺が思っていた以上に、親父は昼行灯を演じていたらしい。


「すまん。しばらく親父とガイで村を守っていてくれ」


「わかった」


 親父が、また穀物倉庫を飛び出ていく。


 それと同時に転移魔法を使う。


 聖なる結界のなかでは転移魔法もできなかったが、今はリリスと魔王城のゴルゴダの部屋だ。 


「ぐっ」


 リリスをベッドに寝かすとクラッときた。


 魔力の消耗が激しいな。


 古の勇者アルバーンと苦手な属性で魔力比べ、自分だけならまだしも他人と一緒に転移魔法、隕石破壊の影響もまだ残っている。


 そして今からするのは……。


 ただの回復魔法ではない。復元魔法だ。 


 回復魔法は基本的に人(この場合は魔族だが)が持っている自然回復を超促進するものだ。


 だが、リリスにはもう自然回復する生命力が残っていない。


 勇者アルバーンの結界は想像以上に強力だった。


 復元魔法は実は回復魔法ではない。


 原理はタイムマシーンに近い。


 対象の時を戻すのだ。


 時に干渉する魔法の消費魔力は、一般の回復魔法とは比べ物にならない。


「魔力は持つか……いや、持たせる!」


◆◆◆


「ここは?」


 リリスが目を覚ます。


 俺は本当に息をきらしながら言った。


「ま、魔王城の……ゴルゴダの部屋だ」


「魔王城のっ!?」


 ベッドから上半身を起こす。


「どうして?」


「リリスが死にかけたからな。ここで大魔法を使った」


 俺はベッドに倒れ込む。


「きゃっ!」


 そこはリリスの太ももだった。


 偶然だ。偶然。


 リリスが優しく俺の頭を撫でる。


「どうして……私のためにそこまで……」


 俺は前世で信用するナンバー2から裏切られたことを思い出した。


 ナンバー1をやっていた時に、ナンバー2に裏切られ、矢面に立ち、刺されたことを、ふと思い出した。


 俺はリリスの今の問いには答えずに、村で頼まれた願いについて答えた。


「ナンバー2やるよ」


 俺の言葉にリリスの手が止まった。

 

「え? ほ、本当ですか?」


 もともとナンバー2なら何でもしたいのだ。


 俺が人間だから魔族のナンバー2は無理だと思っていただけで。


「ゴルゴダの鎧を着れば誤魔化せるだろ。多分」


 そう。前回だってバレなかったのだ。


「そ、そんな手が……」


 リリスが驚いた声を上げる。


「まさか、気がついて無かったの?」


「は、はい。レオ様は天才です!」


「じゃあ、どうやって人間の俺を魔王国の宰相とかナンバー2にしようとしたわけ?」


「ともかく、レオ様になって欲しいなと。私、思い込むと周りが見えなくなっちゃうことがありまして」


 ちょっと前世の俺と似てるところもあるな。


「わかった。とにかくゴルゴダの鎧を着るか」


「何故ですか?」


 リリスが名残惜しそうに俺の頭を太ももに押し付ける。


「魔王城の大広間で宣言したほうがいいだろう。これからはゴルゴダが、つまり俺だが、宰相となって魔王を支えると」


「そうですね。ゴルゴダ様と対等の魔族が他に六人もいますしね。早いほうがいいかもしれません」


 な、なんだと?


「ゴルゴダと対等の魔族が六人いる?」


「え? えぇ。かつてのゴルゴダは七大諸侯でしたから」


 話が見えてきた。ゴルゴダはナンバー2と勝手に言ってるだけで、ユダのやつはおべっかで言っていたのだろう。


 まあ魔王本人も俺をナンバー2にしたいというのだから話は簡単だ。


「いつものことだ。ナンバー2は力でもぎ取ればいい」


 ニヤリと笑って立ち上がろうとするも、またクラっと来て、リリスの太ももに落ちてしまう。


「大丈夫ですか?」


「まあ魔力が回復してからだな」


 そう次々と問題は起きまい。


「ははは」


「ふふふ」


 膝枕ならぬ太もも枕をしてもらった状態で、リリスと笑いあう。


 そんな時、廊下からドタバタと足音がやってくる。


 俺はリリス手を借りて慌ててゴルゴダの鎧を着る。


 部屋のドアがノックも無しに開けられる。


「た、大変です。ゴルゴダ様~!」


 開けたのはユダだ。


 ちょうど最後の腰部の鎧をリリスがつけているところだった。


「ゴ、ゴルゴダ様、魔王様、これは一体?」


 とりあえずユダの顔面を手甲部分で殴る。


「ぎゃぴー」


「何事だ?」


「そ、それが! 勇者が魔王城の目前に迫っております!」


 勇者~?


 リリスの顔が真っ青になる。


 確かに魔力が尽きている今、千年前の勇者アルバーンなら困る。


 結界もヤバかった。


 しかし、俺が知ってる今の勇者なんてガイやエレナのほうが気が利いてるってもんだ。


「上級魔族を二、三人派遣しろ。それで事足りる」


 魔族のナンバー2の威厳を満々に伝える。


「それが勇者は既に上級魔族を十数人も突破。血だらけになりながらも勢いが止まりません~」


「な、なにっ?」


 本物の勇者の血筋とかじゃねえだろうな。


「万が一もあります。ゴルゴダ様と魔王様は迎え撃つご準備を」


 魔力が尽きた時にタイミングが悪い。


「どんな勇者だ?」


「お”に”い”さ”ま”あ”あ”あ”、などと叫んでいる若い女勇者です」


 お”に”い”さ”ま”あ”あ”あ”、だと? おにいさま、お兄様……。


 それ勇者じゃねーよ! 洗妹ティアのバサーカーモードだよ!!!

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