表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者召喚の帝国と人形遣いの皇女様  作者: バッド
2章 けんこくきのはじまり〜
18/21

18話 人形皇女は家族と食卓を囲む

 ボロい大きなテーブル。今にもギシギシいいながら崩れそうなテーブルには、ご飯が置かれています。


 最近慣れてきたら美味しいと思えてきたナン。野菜がちょこっと入った塩味のスープ。そしてオムレツです!


 黄金色に輝くふんわりオムレツ。美味しそうです。バターも少ししか使われていない、具も入っていない普通のプレーンオムレツです。なかなか上手く焼けていますよ。焦げているところもないですし。


 ニコニコと私は可愛らしい幼女な笑顔で、オムレツをワクワクした表情で見ます。


 そうなのです!私は卵の安定供給に成功しました。ライオンバードを何十羽か捕まえて、卵回収用にデックを作りました!名前はエッグです。わかりやすくて良いでしょう?餌などは他の人間族にまかせて、卵回収のみをやる機動兵器です。


 朝に少し動かせば良いだけの安心安全な作業となりました。ライオンバードは卵を取られると思った時だけ乱暴に暴れるので、それ以外は普通の人でも世話ができたのです。まぁ、卵を取るのが凄い大変なのですが……。


 なにしろ数十羽の牙魔法は一体のデック1型をボロボロにします。そりゃ、他の種族も育てることはないですね。デック1型は丸太が素材なので、いくらでも作れちゃいます。なので、できる力技ですね。緑しかない我が国は丸太取り放題ですし。環境破壊どころか、畑が木に飲み込まれそうです。


 というわけで、食卓に卵料理がのることとなりました!拍手〜、パチパチパチパチ。


 料理した人は母様ではありません。誰かというと……。


「おい、ご飯ができたんだから、みんな集まれよ」


 ぶっきらぼうに言うのは、なんと父様!でも最近は料理ができることは当然な扱いなので、意外でもなんでもないかも。母様の作った料理は普通に不味いので、もういらないです。ごめんなさい、母様。でも焦げているオムレツは食べたくありませんので………。



 でも父様は宰相なのです。代々王族や高位貴族が権力の頂点を支配しています。というか王族でないと他の種族に負けますので……。高位貴族も小さな村を領地としているので貧乏暮らしは変わりません。裏切ることもありません。裏切っても、蔑まれている人間族です。すぐに冷遇からの冤罪コンボで殺されるでしょうから。裏切りがない点は人間族有利ですね。でも、もっと裏切れるほどの力は欲しかったど思いますけど。


 そんな宰相自ら料理を作ります。なかなか上手ですよ。少ないバター。火加減が難しい薪を使っての卵料理は素人にもかなりの難しさとわかります。なにしろ、レバーを捻れば自由自在に火加減を変える事ができるコンロがあるわけではないですからね。


 それなのに、この黄金色のオムレツ。すごい。感心して幼女用のフォークでツンツンつついちゃいます。


「たいしたことないぞ、日本人の一般常識として備わっていただけだ」


 私が喜んで、オムレツをツンツンしているので、内心を読み取ったのでしょう。さすがなんだかんだ言っても宰相です。2歳の幼女の考えを読み取るとは。


「いや、お前の兄弟も同じことをしただけだから


 またもや私が考えている内容が分かったみたいです。もしやエスパー?感知魔法の使い手は人の心を読めるんでしょうか?


「読めないからな。そんな便利な魔法は強力な魔法だ」


 あ、やっぱり魔法にはそんなのがあるですね。まぁ、それもそうか。嘘を見破る魔法とかもあるんだろうなぁ。


 でもですね、一つ疑問に思う事があるんです。以前から思っていました。


 それは、どこまでが日本人一般常識として転生者に宿っているかです。ほら、人ってそれぞれ日本人の常識なんて基準は千差万別に違うものです。現に私はこんなに美味しそうにオムレツを焼く技術は記憶にない。オムレツを上手く焼く漫画は覚えているんですけどね。


 だから、みんな違う記憶を一般常識と言っているんじゃないかなと疑っています。でも、この辛い人間族の生まれで活用できない記憶だから、しょうもない記憶なんでしょうけど。


 まぁ、考えても仕方ない事です。他人の頭は覗くことはできませんしね。


 それよりオムレツを食べようっと。母様、オムレツを切ってくださいな。幼女では厳しいので。


 パクリと食べると、ふんわりしたオムレツの味。中は半熟でフワトロとです。やるな………父様。見直しました。料理だけでも、この力は素晴らしいものです。あ、魔法もあるか。


 でもなぁ、美味しいかと言われると微妙です。やっぱりバターの量が足りません。あと、塩コショウ。卵のみの味なので、なんか一味足りません。幼女的にはケチャップが欲しいところです。前世でもプレーンオムレツは大好きでチーズを挟んだりして作っていましたよ。で、ケチャップは外せませんでした。


 なので、幼女用の椅子から立ち上がり父様を見ながら聞いてみます。椅子の上にうんしょと立ちあがったので、ちょっとグラグラしていて怖いですね。落ちたら痛そう。


「とーさま。けちゃっぷほしゅうでちゅ」


 まだまだ言葉使いは治せません。むむむ、はやく治したい。


 そんな私を見て、ため息をついて父様は返事をしてくれた。


「トマトって、高地にある野菜なんだよ。で、誰も見つけた者は聞いたことも見たこともない。そして高地と聞いたら何を想像する」


 むむむ………剣と魔法の世界の高地ですか………。強敵しかいない予感ですね。


「その通り。人間族どころか、他の種族でも無理だろうな」


 くぅ、なるほど納得です。オノレ魔法の世界め。どこまで文明の発展を止めるのだ。料理の進歩は絶対に必要だと思います。


 納得して、鳥の雛みたいに小さなお口で、ちょこちょこ食べながら母様に口を拭かれたりして夕食をすすめると、お爺様が皆を見渡して話し始めた。


「これから、重要な話をする。みんな聞いてくれ」


 テーブルに手をつけて、真面目な重々しい顔で話しかけるお爺様。


 みんなが注目してお爺様を見ると、お爺様は話を続けた。


「どうやら東部の雄、イーマ・ナーガが戦争の準備をしているらしい。まだ不確定情報だが不味い情報だ」


 重々しい口調で皆を見渡す。その口調に真剣さを感じて、神妙な表情で母様が問いかける・


「もがもがもがっ?」


 母様………なんで貴方は常に口に限界まで食べ物を入れて食べようとするのですか………本当に次期王妃?


 ごくりと飲み込んで、再度問いかける。


「本当に、それは間違いない情報なんですの?」


「いや、ランプナー街の裏通りの店の悪徳商人からのみだ」


 そう答えるお爺様の顔をじっくりと見て冗談ではないと感じたのだろう。困り顔になり話を続ける。


「表通りではなく裏通り………。どういった状態で手に入れた情報ですか?」

 

 軽く腕を組んで、聞いてくる母様へ一言返すお爺様。


「奴が死ぬ前の情報だな」


 その答えを聞いて、不愉快そうに眉を顰めて考える母様。およよ、考えてる母様とは珍しい。


「それでは本当のことかもしれませんわね。裏世界の商人なら、命を賭けた情報の時に確度の低い情報は出さないはず。あと、ネムの教育に悪いので、ほどほどにしてくださいませ」


 あらら、ばれてーら。どうやら戦闘試験が血生臭いことになったことを悟ったようですね。ちょっと母様を見直しました。


 ふ、と小さく口元を歪めて笑い、お爺様は話を続ける。


「そこで、対抗策を考えたい。恐らくは長くて1年、短くて半年以内には攻めてくるかもしれん。何しろ竜神山脈の古代神殿で覇を唱えようとするやつだ。根回しが終わったら移動するはずだ」


「そこでちゅ! はおとなえるってなんでちゅか?」


 ちっこくてかわいいおててで挙手します。せんせ~、質問で~す。でも、うむむ、自分の舌足らずの言葉が面倒ですね。でも可愛いから良いかな幼女にふさわしくて。


 その質問を父様が引き取って、私へと真剣な視線を向ける。


「竜神山脈の古代神殿ってのは、行くのも帰るのも厳しい場所だ。何しろ溶岩地帯に吹雪の止まない雪の草原、そして、何もないただの岩山地帯。もちろん、そこまで行くには各地帯に合わせた竜を始めとする魔物がわんさかでる」


 うひぃ~、そこで私は東部の盟主だぞ~って叫ぶだけなのかな?意味なくない?


「お前、今、意味ないでしょとか思っただろ? 意味があるんだな、これが。古代神殿での盟主の儀は盟主となったものに竜が一匹守護してくれる。強大な力をもつ竜だ。北部の竜帝国のように、圧倒的な力をもつ。まぁ、守護竜はあくまでも守護するのみ。侵攻には加わってくれないが、それでも広大な領土をもっているやつが、守護竜を手に入れたら、守りを考えずに後は侵略戦争し放題ってわけだ」


「ふぁんたじぃ~、あれ? でもなんでりゅーてーこくはしんりゃくせんそーを………。いえ、りかいしまちた」


 侵攻しようにも、手持ちの兵が人間族だけだとできないよね………。弱すぎて。


 でもナーガ族は事情が異なるだろう。彼らは強力な種族だ。覇を唱えたら膝を屈する国は続出だろう。イーマ・ナーガが覇を唱えようとする理由を理解しましたよ。


「それに、守護竜の加護で寿命が200年は伸びると言われている。現に竜帝国の皇帝はもう100年の治世だ」


 お爺様が竜帝国の現状を教えてくれる。なんというボーナス加護。その古代神殿とやらに行くのは大変そうだけど、そこで盟主の儀?とやらをやったら、たしかに計り知れない利益が出るという訳ですね。自分にとっても国にとっても。


「なので、なにか対抗策がないか? お前ら」


「う~ん、人間族の国と同盟を結ぶ国はいないでしょうし………。ゲリラ作戦といきますか?」


「ナーガ族の感知魔法がずば抜けているぞ。無理だな」


 父様が考えただろう答えをあっさりと否定する爺様。


 そこで、はぁ~と大きい溜息をついて、母様が発言した。


「言いたいことはわかりました。遠回りな言い方ですね。私たちがゲームよろしくパーティーを組んで、強い敵の素材を取りにいく。そしてそれを利用して人形をネムが作るのですね」


 呆れた表情で鋭い全てを見抜いてそうな目つきでお爺様を見る母様。なかなか鋭いんですね。


 その返事が予想した通り、満足した答えだったので、にやりと笑いながらお爺様は頷いた。


「そうだ。余らでパーティーを組んで、強力な敵を狩りに行く。さしずめ精霊系魔物種を狩りにいこうではないか。まずはウィンディーネ退治に行くぞ。期限はイーマ・ナーガが攻めてくるまでだ」


 その言葉にみんなが頷く。それで方針は決まったみたいです。


 私もわくわくです。パーティーなんてゲーム的で楽しそうですもんね。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ