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勇者召喚の帝国と人形遣いの皇女様  作者: バッド
2章 けんこくきのはじまり〜
17/21

17話 人形皇女は戦闘試験を終了する

「『スライムネット』」

「『マジックアロー』」

「『フィアー』」


 じゃんじゃんこちらへと魔法を撃ってくる老いぼれナーガ。デックへと色々な魔法を使ってくれるので、戦闘試験が実になるので、嬉しいですね。


 ちなみにスライムネットは、スライムみたいな粘性の高い物が現れて敵の動きを鈍くします。マジックアローは魔法の矢を生み出す初歩の攻撃魔法。フィアーは敵へ恐怖を与えて、最悪動けなくします。普通は恐怖で逃げ出すらしいです。お爺様から聞きました。天才美幼女な私はあっさりと記憶しました。えっへん。


 ………嘘です。様々なゲームの記憶がある私です。簡単に魔法の内容は覚えました。人の名前とかは、なかなか覚えられないのに、ゲームの魔法とかルールは簡単に覚えられるのって、なんででしょうかね?やっぱり興味のある無し?


 さてデックはスライムネットはレジストしました。レジストすると拘束系や、状態異常、即死系は無かったことになります。すなわちスライムネットは消えちゃうんですよね。魔法抵抗力の塊ともいえるデックには、そんじょそこらの拘束魔法なんか効きません。本来も敵に効きにくいのが搦手の魔法でもありますし。


 そしてフィアー。精神に影響する魔法は一切効きません。人形ですし。乗っている私には効くのでは?ノンノン、私はあくまで没入型ゲームをしているだけです。ゲームをやっていて、中の敵の魔法でプレイヤー自身が魔法にかかるなんて、非現実的なこと起こらないでしょ?


 そんな訳で、まったく意味をなさないフィアー。問題は………。


『メビウス。敵のマジックアローで耐久力が1減りました』


「はぁ。やはり魔法防御に成功しても僅かにダメージが入るんですね………」


 アリスの報告にがっかりします。幼女はがっかりしますよ。誰か慰めてください。


 どうやら生半可の魔法防御力の差では、ダメージゼロにはできない模様。敵の戦闘力は34、こちらは20だけど、私が乗って3倍以上に性能限界を超えているので60ちょい。2倍差でもダメージは入るみたい。これはなんとかしないといけない弱点ですね。お爺様たちはどうやって攻撃を防ぐんだろう?あとで聞いてみることにしましょう。さらなるデックの改良を!


 新しい改良計画を考えていたら、魔法が効かないことに焦った老いぼれナーガが逃げるのではなく、こちらへと向かってきた。


「きぇぇぇ、死ねぇ!」


 ズリズリと結構な速さで地面を蛇の下半身を上手く使いながら迫ってきた。そした、ぐるりとデックの身体へと巻きつき、絞め始める。


 おぉ!ナーガの絞めつけですね。ゲームでもありましたよ。こんな技。敵を動けなくするんです。そして絞めつけによる継続ダメージを与えて、動くこともできなくするんですよね。弱点は他の仲間が攻撃をしにくい。フレンドリーファイアが発生しやすいので。まぁ、ゲームをしていた時は、私は気にせず攻撃をしていましたけどね。サイコロの目が良くて、仲間にばかり当てました。以降、仲間は絞めつけを使うことはしませんでしたとさ………。私のせいじゃないよ?サイコロの神様のせいです。


 ぎりぎりと音をたてながら、必死な表情で絞めつけるナーガ。でもねぇ、残念ながらデックは物理防御には自信があるのですよ。鉄の塊を絞めつけても、意味ないでしょ?それと一緒なのです。


 デックの腕を動かして、必死に絞めつけているナーガの首を掴みます。慌ててジタバタと杖で腕を叩いてきますが、悲しいかな、杖は攻撃用ではない様子。


 首をぎゅうぎゅう絞めつけると、だんだん絞めつけが弱くなってくる。しゃがれた声を苦しそうにしながら出す老いぼれナーガ。


「お、お前たち! 今がチャンスだよ! こいつに攻撃しな!」


 ほうほう。フレンドリーファイアを恐れないとは、なかなかの胆力ですね。それかそれ以外にこちらを倒せないと考えたのか。


「おまえたち? 誰に言っているのだ? もうお前の仲間は全員死んだぞ?」


 私たちに近づきながら、お爺様が余裕な感じでゆっくりと歩いてきて、口を開きました。


 そうですね。見渡すと無人デック以外に立っているのはお爺様とギュンター爺さんのみ。あとは全員倒れ伏しています。


 その答えを聞いて、老いぼれナーガはキョロキョロと周りを見て驚愕する。


「ひっ! 角なしもサイクロプス族だったのかい! なんてことだ。なんでサイクロプスが人間族なんぞに肩入れを?」


 サイクロプス族?あぁ、モノアイが一つ目だから、サイクロプス族……。なるほどね。納得しますよ。


 ガタガタと身体を恐怖で震わせて、首を掴まれながら、必死に声を張り上げてくる老いぼれナーガ。


「待っとくれ! 降参だ。降参するよ。お金、そうだよ、たくさんのお金を払うからさ。許しておくれよ!」


 そんなことを叫ぶので、お爺様へと視線を移す。お金、欲しいですけど、どうします?とりあえず、老いぼれナーガの首を絞めているのを緩ませます。


 フッとニヒルに笑いを浮かべながら、お爺様は老いぼれナーガを見た。


「いくらだ?」


 素っ気なく問いかけるフードの男の言葉に光明を見たのだろう。脂汗を垂らしながら早口で言ってくる。


「竜大判1000枚! いや、2000枚でどうだい? 破格だろ? あと、面白い情報もつけるからさ」


「ほう。結構な額だな。面白い情報とはなんだ?」


 その言葉にニヤリと腹黒そうな笑みを浮かべて老いぼれナーガは答えます。助かる可能性が高いと考えたのだろう。


「あんたたちは、南部の小国に住んでいるんだろう? あの国はもう駄目さ」


 その言葉は聞き捨てなりませんね。どういうことでしょう?お爺様も目を光らせます。


 周りの反応が変わったことに満足したのか、調子にのった老いぼれナーガは話を続ける。


「今、東部一の槍使い。イーマ・ナーガ様のイーマ国が戦争の準備をしているらしい」


 その言葉に驚きます。マジですか?ナーガ族はかなり強いと聞きましたが。


「カサマー国を攻め落とすために戦争準備を?」


 お爺様が問いただします。気になるよね。


 かぶりをふって、老いぼれナーガは答える。


「違う違う。あんな人間族しかいない痩せた土地を誰が欲しがるもんかね。港だって小さいしいいとこないやね」


 むむむ、私たちの国を馬鹿にしましたね。本当のことだけとさっ。


「ならばイーマ国は何故戦争準備を?」


 その問いかけに声を潜めて老いぼれナーガはしたり顔で言う。


「どうやらね、竜神山脈の古代神殿で盟主の儀を行うつもりらしい。それができたら、イーマ・ナーガ国は一躍東部の覇王となるだろう? そしてその途上にある人間の国は邪魔なのさ。きっと路傍の石程度に蹴って滅ぼすつもりさ」


 私たちの国が路傍の石………。他の種族からの評価が低すぎますね。ところで、竜神山脈の古代神殿って、なんですか?心を踊るフレーズですね。


 ニヤニヤと笑いながら、老いぼれナーガは提案をしてきた。


「まだまだうわさ程度だけど、サンガ様に通行する際の根回しをしにきたナーガ国の大使もいるらしい。すぐではないけど、確実じゃないかね? どうだい? 国を逃げるのなら、ランプナー国へ私が口をきいてもいいさね? なに、サイクロプス族の凄腕がいるんだ。職にあぶれることはないよ。イッヒッヒッ」


 しゃがれた声音で笑い、話を終えた老いぼれナーガ。お爺様はこちらへと小さくコクリと頷いた。


 ていっと、私はデックを操作して再び老いぼれナーガの首を絞める。驚きの表情になる老いぼれナーガにお爺様がローブを取り払い、その顔を見せた。


 苦しみの表情でお爺様を見て、さらに驚く老いぼれナーガ。


「ま、まさかウォーレス!」


 その言葉を聞いて、ニヤリと凄みを感じさせる笑みでお爺様は答えた。おぉ!お爺様、本当に有名人なんですね。いったいなにをしでかしたのやら。


「いかにも。貴様が言う路傍の石程度の小国の王よ」


「さ、サイクロプス族を雇ったのは貴様だったのかい! どうりでサイクロプス族が大人しく従っているはずだ!」


 ぎりぎりと首を絞めつけます。幼女的にこれどうなんだろう?普通の幼女ならトラウマになりますよ?まぁ、ゲーム感覚な私には意味がないけど。我ながら破綻した性格かもしれませんね。


「待っておくれ! このことは誰にも言わない! あんたらがサイクロプス族を雇ってなにを考えているのかは知らないが、誰にも言わないから!」


 お爺様はゆっくりと首を横にふって伝える。


「残念ながら、余らは現在極めて重要な機密作戦を実行中なのだ。すまんが目撃者は存在させることはできんな」


 その答えに絶望する老いぼれナーガ。


「そ、そんな! そんなぁぁ! ぐへっ」


 ボキリと首を折っちゃいました。南無〜。機密作戦を目撃した者は生かしてはおけないのです。恨むなら、あからさまに罠にしか見えないのに、欲をはって喰い付いた自分を恨んでくださいね。南無南無。


「どうやら、試験は成功のようですな。しかし…………」


 言葉を詰まらせてギュンター爺さんが、こちらへとやってくる。倒した者たちへトドメをさしたらしい。油断大敵な世界。トドメをさすのは常道らしい。ポーションも存在する世界なので、あり得ないとは思うが、エリクサーを飲んで回復してしまう敵がいるかもしれないのだ。


「うむ。イーマ・ナーガ族が戦争準備とはな。今はまだ噂レベル。そして強国への根回しの時期なのだろう。ならば実際に動くのは来年か?」


 顎に手をあててさすりながら考えるお爺様。すぐにこちらへと顔を向けて言う。


「どうやら、想定外のことが起きたらしい。急ぎ国へと戻り対抗策を考えねばならん」


 凛々しく難しい表情でお爺様が言ってくるので、私はデックの首を縦に振らせた。


 そうしてみんなで帰途につくのであった。


 私はゲームは終了〜。操作を中止して宮殿へと意識を戻します。


 そしてベッドに寝っ転がっていたので、そのまま寝ることにします。


 おやすみなさ〜い。幼女には昼寝が必要なのですよ。

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