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勇者召喚の帝国と人形遣いの皇女様  作者: バッド
2章 けんこくきのはじまり〜
15/21

15話 人形皇女の初めてのお店訪問

 店の中は薄暗かった。ちょっとデックではきつい薄暗さですね。次回改良時の宿題にしておきましょう。最初に設定された魔術しか使用不可能なのはデックの弱点です。まぁ、だからこそ気軽に量産できるのですが。

 

 量産型は同じ性能、同じ部品ではないといけません。銃弾が使う銃によって違うなんてありえないのです。大日本帝国はよくそんな銃にでアメリカと第二次世界大戦を戦いましたよね……。あと宇宙で独立戦争した国も。


 同じ設定だからこそ、流れ作業で量産化可能です。デックも主力正式型が決まったら、あとは同じ設定のを大量に量産します。まだまだ問題点だらけで正式採用は程遠いのですが。


 そんな薄暗い店内を見回しながら、歩いていきます。中は結構広くて倉庫みたいな感じ。万引きとか大丈夫なのかしらん?


 壁には古びた松明掛けがあるけど、松明を置かれてはいない。置いてあるものもゴミか商品かわからないぐらいに雑多だ。


 ちょっと薄暗いことと雑多な商品があるので、貧乏というか怪しいお店だ。でも思うのだ。ここにも窓ガラスはない。表通りにも無かった。もしかしたら教会にはステンドグラスがあるのかな?


 昔はステンドグラスを見せて、教会の偉大さを仄めかしたという噂だし。でもこの世界の宗教って、見たことないな………。あっても、人間族には厳しい教えなんだろうけどさ。


 そこから推察できることは簡単です。人間族とたいして科学力というか、技術力あんまり変わらないよね?それで人間族を馬鹿にして蔑んでいるのかと。


 そんなことを考えながら反骨心逞しい幼女はギュンター爺さんたちと奥についていきました。


 奥には置いたシワだらけで白髪だらけの爺さんがとぐろを巻いていました。なんととぐろを本当に巻いています。ナーガなんですよ。驚きましたね。爺さんなのに全長は尻尾が6メートルはある長さです。全体で8メートルはありますかね。


 たしかに人間だと簡単にやられちゃいそうです。ナーガ族は強力な種族という噂は本当みたいですね。人間族だとベテラン兵3人と戦っても勝つのだとか。戦闘力15ぐらいなんでしょう。しかも尻尾をブンブンと振り回してくると言う厄介さ。


 そんなナーガな爺さんはこちらをジロジロと見てから話しかけてきた。値踏みされているようで、嫌な感じです。特に私のデックをジロジロと見てきましたし。


 なんだか毒のありそうな牙を見せつけながら、口元をニヤけさせて、こちらに声をかけてきた。


「いらっしゃい。人間族とは珍しいね。しかもオーガ族の護衛つきとは、どこのお大尽のお使いだい?」


 しゃがれた乾いた声でナーガは言ってきた。そんなナーガを気にせず、ギュンター爺さんは返事をした。 


「私はある大尽の使いだ。今日はアイアンタイガーの皮を持ってきた。おい、降ろせ」


 こちらを見て、命令口調で言ってくる。わざとだろうな。こちらの力をみせつけているのだ。オーガ族を命令できるという力だ。


 素直にデックたちは、背中に背負った皮をそっとナーガのカウンターにおく。私もおく。ドサドサと皮を沢山置いてカウンターは皮だらけになった。ちょっとした山だよ、これ。


 120枚はあるアイアンタイガーの皮の量にも驚いたが、それ以上にナーガが驚いたのは、ギュンター爺さんが高圧的な命令をオーガにして、オーガがおとなしくそれを聞いたところだ。


 オーガは性格が荒っぽい。傭兵でもそれは変わらないので、人間族から高圧的な命令を受けたら、殴り殺そうとしてもおかしくない。なのに、素直に聞いたのでジロジロとこちらを再度興味深く見てきた。


「へぇ〜。よく見れば角有りは1人だけ。残りは角なしじゃないか。はっ、雑魚が食うに困って人間族の使い走りなんぞ、オーガ族の誇りはないのかい? あぁ、返事をしなくて良いよ。ないからこそ、人間の荷物持ちなんざやっているのだろうからね」


 嗄れた声音に蔑みの色を込めて、ナーガはそんなことを言ってくる。おいおい、こちらはお客様なんですよ?殴っても良いですか。お爺様?


 私はデックの視線をお爺様に向けるが、お爺様は静かに首を横に振る。しょうがないので、我慢する幼女です。まぁ、オーガ族じゃないし、別に良いかな。デックを馬鹿にしたら殴りましょう。


 私の動きに気づいたナーガがニヤリと嫌らしそうに笑う。悪巧みばっかしていそうな笑みだ。


「どうやら、角有りは誇りがありそうだね。はてさて、どうして人間族の護衛なんぞやっているのか」


 なかなか目敏いですね、このナーガ。油断はできません。どうやらお爺様たちには計画があるみたいなので、邪魔しないようにおとなしくしていようっと。


「詮索無用だ。買い取りをお願いしよう」


 ギュンター爺さんが強い口調で、ナーガを睨みながらいう。


「へっ、こんな裏店に来る客だ。どうせ碌でもないことをして、その毛皮を集めたんだろう?」


 ナーガはそんなことを言いながら、ヨボヨボの手で皮を鑑定し始めた。表を見て、裏返してから、ぱんぱんと叩いて確認して、僅かに目を見開く。


「これは驚いた。どれも一撃だ。綺麗な毛皮だね。どこから盗んできた?」


 人間族が倒したのですよ?このデックがね!もう機動兵器の時代に世の中は入ろうとしているのです。生身の戦士の時代はおしまいですね。ふふふ。


 ギュンター爺さんはナーガにそんなことを言われても、怒りもしないでぶっきらぼうに言葉を返す。


「どうでも良いだろう。買うのか?買わないのか、どちらだ」


「へぇへぇ。買いますよ。こんなに見事な毛皮は見たことがあまりない。高く買わせて貰いますよ」


 本当かな、このナーガ。裏店にあることもあって、安く買い取ろうとしてもおかしくないんだけど。


 しばらく鑑定してから、ナーガは言う。


「どうだい、122枚全部で竜大判15枚?」


「安いな。これだけ見事な毛皮だぞ? 通常では手に入るまい」


 ギュンター爺さんがすかさず値上げするように返事をする。凄いね、私は値段交渉が凄い苦手です。日本人で得意な人って、そんなにいないよね?


 うむぅと唸り腕を組んで、ギュンター爺さんを見ながらナーガは再度値段を言った。


「竜大判22枚。それ以上は出せないよ?」


「良いだろう。それと金は竜小判220枚だ。大判なぞ使いにくくて困るからな」


「へぇへぇ。人間族には使いづらいだろうよ。出処を必ず聞かれるだろうからね、イッヒッヒッ」


 そう言って、箱を後ろから持ってくると、ジャラジャラと小判を取り出して数え始める。


 おぉ、凄いよ、お爺様。小判だよ、小判。どなんだか戦国時代みたい。私、小判って一度見たかったのですよ。金ピカてわ10センチぐらいの細長い小判ですね。綺麗です。


 ところでお爺様。小判って、一枚いくらですか?




 ジャラジャラと袋にギュンター爺さんが小判を入れていく。う〜んいくらなんだろ?この世界の通貨の価値は。


 急いで帰り支度をギュンター爺さんはしています。というか小判200枚は重すぎますよ?目立ちまくるし。でもそれが目的みたい。あくどい爺さんたちです。幼女がいるんですから、手加減してくださいね。


 そんなギュンター爺さんは麻袋に小判を詰め込み終わります。ジャラジャラジャラジャラと音が凄いしますよ。これを持って裏道から帰宅……。頭の良い人なら、あからさまな罠だと気づくと思うんだけど……。


 そんなことを考える私にお爺様が私に近づいてきて、こっそり教えてくれた。


「大丈夫だ。罠だと思うやつは一部だろう。他は馬鹿な人間族とオーガ族だと思って襲って来るはずだ」


 自信満々な口調で言ってきます。マジですか、私ならこんな場面を見たらダッシュで逃げますよ?明らかに罠ですし、なんか騒ぎに巻き込まれそうですからね。


 本島かなぁと幼女的不安感に襲われながらも、ギュンター爺さんたちについて、裏道を歩いていきます。ジャラジャラジャラジャラ。小判の音が響きます。みなさ〜ん、ここにお金持ちが歩いていますよ〜。襲うとお得なサービスもつけちゃいます。


 内心で、そうやって叫びながら歩く。というか小走りになる。お爺様たち演技が凝ってるな。周りをキョロキョロ見ながら慌てて逃げる小物という感じを出している。


 でも残念賞なこととなった。裏道を通って大通りに戻ってしまったのだ。ほら言ったとおりじゃん。罠だと丸わかりだよ。脳みそのないゾンビでも引っかからないよ。


 てくてくと大通りを歩いて、街の門から普通に出る。ちなみに通行税や入場税は無い。地球の中世ならあったかもしれない。けど、ここは魔法の世界。強力な魔物やら、凶悪な山賊とかがいる世界だ。商人や旅人は来てくれるだけでも有り難いので、税を取ろうとする馬鹿はいないそうな。なるほどねぇ。


 でもお爺様?貴方の考えは幼女でも丸わかりな罠だとわかります。引っかかる人なんていないじゃないですか〜。


 帰ってきたら、いぢめてやる。幼女のウルウル攻撃をしてあげようじゃないか。きっと気まずくなるに違いない。ふふふ。


 そう考えて、コントロールをオートにしようかなぁ、幼女はもうお昼寝したいと考えて街道をしばらく歩いて森の中に入っていく。


 もうお昼寝に決定だねと、私は操作を止めようとした時だった。


「『ライトニング』」


 そう聞こえて、雷が私に襲いかかってきた。


「にょわあ!」


 驚いて思わず叫んでしまう幼女な私。雷を回避することなんてできるわけもなく、直撃を喰らう。


 デックに紫電が走って全身にまわる。でもそれだけだった。デックは防御力=魔法防御力だ。何しろ装甲の硬さは私の魔法力でできていると言っても過言ではない。過言かなぁ?でも幼女パワーがある方が良いよね?


「なんだと! 貫通もせずに死にもしないだと!」


 道の脇にある木陰から驚いた声が聞こえた。この声は………。


 その声と共にぞろぞろと20ぐらいの集団が森の中から、こちらを囲むように現れた。様々な種族で構成されている。


 その一番後ろにさっきのしわしわな皮膚の老人ナーガがいるのが見えた。杖を持っているので魔法使いなようだ。ライトニングを使ったやつに違いない。


 皺だらけの顔を醜く歪めて、しわがれた声音でこちらへと告げる。


「イッヒッヒッ。人間族にはそんな大金使えないだろう?」


 どうやら高い金を支払った理由は後で回収するつもりだったかららしい。


「なんというか………。アホなのか、頭が良いのかわからないヤツだね………」


 嫌らしそうに笑う集団を見ながら戦闘準備をする私だった。

 

 ゾンビよりアホな敵が本当にいましたよ……。

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