エメラルド村にて
2.エメラルド村にて
芽亜梨は村の門番にすがるように言った。
「うわぁーん>_<。実は別世界で死んでこの世界で転生したら服が消えたんです。助けて下さぁぁぁい」
「そうでしたか。それは大変でしたね。娘の家に案内するのでお古の着替えとかを貰って下さいな」
「ありがとうございます!」
ここはエメラルド村という名前だそうだ。草原の真ん中にあるからそう呼ばれているらしい。
門番の家までの道中、村の人たちは少し驚いた様子でこちらを見ていたが、特別大きな騒ぎにはならず家に到着した。
そして芽亜梨はおそるおそるドアを開けた
「おじゃましまーす……」
「おーいレグルス、転生者のお客さんに着替えとお茶を出してやってくれ」
???「はーい。今いきます」
と、奥から教養深くて優しそうな雰囲気のお姉さんが登場した。
「はじめまして。レグルス と申します。ゆっくりしていって下さいね」
「ありがとうございます!」
するとすぐにレグルスに風呂へ案内され、きれいな中華風の古着をもらい、お茶を出してくれた。
『なんという至れり尽くせり。まるで旅行中の気分だ!』
レグルスが椅子に着くと、こちらを見て言った。
「ところでお名前をお伺いしてもいいです?」
「あっ、自己紹介が遅れました。私は“メアリ”といいます。18歳です」
実は“芽亜梨”という名前はハーフでもなんでもなく私の両親の好みで貰った名前だ。私はけっこう気に入っている。
「あら、かわいらしい名前ね」
レグルスはにこやかな表情になると、自分の紹介を始めた。
「私は22歳で、主に錬金術を修行しているの。あと、一度知り合った同士なら地位や年齢関係なくため口で会話するのはこっちの世界では当たり前だから覚えておいて」
「そうなんだー」
と、ここでメアリはここに転生してからこのほど、一番疑問に思っていたことをレグルスに投げかけてみることにした。
「どうして私が異世界から転生してきたことを皆すんなり受け入れてるの?それに以前私が居た世界と色々と言語や文化や生活が重複しているから、正直ものすごい驚いているのよ。
あと魔物の存在なんかも以前の世界で苦労を乗り超える時の壁のイメージ?みたいに捉えられるし……」
「くっくっく……」
「!?」
「ぬっふっふ……それは禁断の…いや、とてもいい質問だねぇ!お嬢さん」
「!?」
「……それは、“すべての人の願い”だからさ。と私は信じてる」
レグルスは黄昏たような様子で説明を続けた。
「特にこっちの世界の住民はそういった連中が多いのよ。妄想や空想というものを、ごっつ大事にしてる。信じる力って奴だね。だからこそ君がここに転生し、重複した部分が大きい。そう考えるのが一番説得力がある。メアリをすんなり受け入れたのはそれだけ多くの住民が信じてくれたって事だね。よかったじゃんか」
考えてみればメアリにも思い当たる事柄だった。ネトゲで“強くなりたい”みたいな原動力には信じる力が必ず伴った。
レベル上げ・スキル上げに勤しむことで、敵が爽快に狩れるようになるのではと。その楽しい境地に達したいと。だからネトゲをあんなにもやり込むことが出来たのだと。このとき感じたのである。
「なるほど。信じる力ってすごいんだね」
「うん。その気になれば天変地異も引き起こせるでしょうね。要はこの先の未来は全てメアリにかかってる。あなたが主人公である限りね。要はこの世界でメアリにとって、ご都合主義が続くと思ってればいいんじゃない?」
「レグルス、それ誰に言ってるの?」
「さあね笑」」
そしてレグルスは話題を変えてこう言った。
「それでメアリはこれから先何をしたいとかあるの?」
「う~ん……折角転生したからここで冒険したいなぁと思うんだけど、色々と情報が足りないんだよねー。スキルとか装備とかみんなどうしてるの?」
「ふむ。さすがに説明不足過ぎたね。この世界ではスキルが使えるようになるためには、地道な鍛錬を積み上げていき、自信を持って自分のスキルを悟ったときに初めて使えるようになるわ。
それと種族Lvと職業Lvだけはみんな公開されるようになってる。今はそれぞれMAXが100Lvらしいよ。
装備については武器はレア度が★10段階設定されているんだけど、防具というものはそもそも存在しないわ」
「それじゃあ防御力の概念は無いの?」
「無いというか回避とか周りの環境や魔力、その場のアドリブに任せることになっているの。体力(HP)も同様ね」
「なるほど分からん」
「例えば、私は種族は人間で18Lv、錬金術が45Lvよ。念じれば見えるから」
「うお、ホントだ。錬金けっこう高いね~」
「まあね。実は私は先日王都からここ(実家)に帰宅したばっかりなのよ。でも偶然あなたと出会ったから一緒に冒険させて貰ってもいいかしら?。それにLv1で職業無しじゃあちょっと不安だしね」
チラッとレグルスがこっちを覗くように見てきた。
「うっ……。それはマジ助かる」