勝利者などいない闘い
「どうしたどうした?二人掛かりでこのザマか?えぇ?」
サングラスの男が嘲る。
「ぐぐ…」
「ぬぅ…」
対する布津と浅野は、共に膝を付いていた。
「面倒だ。同時にかかって来いよ」
男は両サイドを挟まれている状況で宣う。
「舐めやがって…!布津さんっ!」
「言われるまでも無い…!」
二人が立ち上がり構える。
「オオラァッ!!」
「チェストオオォッ!」
左から突き、右から斬撃が襲いかかる!
「…フ」
パシッ!ピタッ!
やはり通用しなかった。突きの棒は掴まれ、振り下ろした刀は白刃取りで止められていた。
「「何っ!?」」
二人が驚愕の声を上げた。
グンッ。不意に棒が引っ張られ、虚を突かれた浅野が手を放す。返す勢いに任せ腹部を狙い打つ!
「ガハッ!」
更に返し、布津の胴へ一撃!
「ぐあっ!」
ほぼ同時に二人共床へと倒れ伏す。
「ハッハ。無様無様」
投げ捨てた棒が、カラン、と音を立てる。
「…っあ、…ダメだッ。やっぱりコイツには勝てない…」
よろよろと立ち上がりながら浅野が絶望を口にする。
だが布津は諦めていなかった。同じくよろめきながらも、刀を杖にし立ち上がる。
「浅野…。逃げろ。助けを呼ぶんだ。ここは俺が預かる」
「しかしっ」
浅野が言いかけたのを遮る。
「早く行けっっ!!」
「ハ、ハイッ!」
気圧され、浅野が駆け出す。
「逃がすか…ムッ!?」
後を追おうとした男が身体を捻る。さっきまで肩があった所を斬撃が通り抜けた。
「ここは俺が預かると言ったッ!」
カンカンカン、と浅野の駆けていく音を耳にしながら、布津は目の前の男に正対した。
「………ハッハッ。まぁそう死に急ぐな、」
「『兄弟』」
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布津は目を見開く。
「やはり…!」
「そうだ。俺は15体目」
「能力はあらゆる行動の先読み。俺の前では全ての攻撃が無駄。視えるんだよ。フフフ」
男は自信たっぷりにそう告げる。
「………」
「どうだ?俺達の所へ戻らないか?お前は数少ない成功例だ。待遇は最高だぞ?」
「断る」
言いながら布津が刀を右手に、逆手で構える。身体を大きく捻った。
「そうか…。それが答えか。所でお前、今更薙払いなどして何になる?そんなもの…」
「黙れ」
ドクンッ。
既に凍り付く様な殺気が漂っている。
「貴様が幾ら攻撃を先読みできると言っても」
ビキビキビキ。
身体中の血管が悲鳴を上げる。
「全てには限界というものが、ある…っ!」
布津の目が緋く染まる。
「何……っ?」
布津が動いた。一歩。直後、
ズガンッッ!!!
床に衝撃痕を残し、掻き消える。
迫る布津。とても常人のできる動きでは無かった。
そのまま、振り抜くッ!
ザシュウッッ!!!!
男の身体を、真一文字に刀身が通り抜けた。
ズザザザッ!布津が急停止して止まった。ゆっくりと振り向く。
「な…。みえていた、はずな、のに……」
男が崩れ落ちる。
それを見、布津が手を下ろす。
「…いくら先読みが出来ても、回避出来なければ、意味は、無い…」
ガシャンッ。
布津の手から刀が落ちる。
「く…。やはりこの力は、諸刃の剣、か…」
グラリと身体が揺れる。
ドサッ…。
布津は倒れると、そのまま動かなくなった。




