"二番手"少女の小さな願い 3話
****
また、いつものように私は、怒られるのだ。
「……美咲。後で少し、いいかしら?」
そっと先生が笑う。はい、と静かに答えれば、周りがざわめいた。先生が1対1で話すことなんて、ないのだから。
はぁ、とため息をつく。また怒られるのだ。もうすっかり自信を無くしてしまった。
やがて個人練習の時間となる。
「美咲。大丈夫?」
「……先生、私続けていく自信が無いです。どうしたら、いいんでしょう。」
ずっと心に溜めていた思いが、一気にあふれだす。
「私は、いつまで"二番手"なんですか? 何が、負けているんですか?」
これは、先生にずっと聞きたかったこと。
「私だって、ずっと努力してきたはずなのに……どうしてあの子に、陽に勝てないんですか?」
先生は黙って、目を瞑っている。
「先生、教えてください! 私には無くて、あの子にあるものって、いったいなんですか!? わかっているんでしょう!?」
……なにも言ってくれない。
「先生……」
「今度、ダンスコンテストがあったわよね。誰と出るつもり?」
「百合奈と2人で出るつもりですけど…」
「なら、百合奈と陽の3人で出なさい。その時にソロを踊るのは、美咲貴方よ。」
「……いや、何言ってるんですか先生。私なんかが……」
「それなのよ、美咲。そうやって貴方は、いつも無意識に1位を譲ってたのよ。」
「……」
「本気で勝ちたいなら、ここに賭けなさい。もしそれで個人成績が2位だったら、先生はなにも言わないから。」
できるわよ、と先生はウィンクして部屋を出ていった。
「……チャンスを……掴む」
……賭けてみよう、そして、超えてやろう。
先生の言葉が、私の心を変えたのは言うまでもなかった。
その日から、私は明らかに目に見えて変わった。
……いや、普段となにもやってることは変わらない。だけど周りからは「変わった」と言われるようになった。
それに負けず劣らず陽も、磨きを掛けている。百合奈は……まあいつもの通りそこそこに頑張っている。
私は誰にも負けない。絶対に、このチャンスを掴んでみせる。