"二番手"少女の小さな願い
風が吹き飛んでいくこの屋上は、私のダンスフロアだ。夕日に光る汗が、今までの努力を語っている。
どれだけ頑張っても、どれだけ努力を積み重ねても、どれだけ力を尽くしても、私はライバルの木下陽(きのしたひかり)に勝つことはない。
永遠の二番手、それが私、小浦美咲(こうらみさき)のあだ名だった。
このビルにある日向ダンススクールには、陽を称える声だけが、響いているのだろう。
「ダメ、美咲、もう一回やってごらん。」
「……はい。」
また今日も、努力は報われてはくれない。ダンスを心から楽しめなくなったのは、一体いつからだろうか。
「なぁにぃ、美咲、まーた暗い顔して。」
「ああ百合奈か……いや、なんでもないよ。」
「嘘つけ、顔に出てるから」
谷沢百合奈(たにざわゆりな)。私の幼馴染で、私のことをよく知っている。
「どうせ、陽の事でしょう?」
「……うん。」
百合奈が本気を出せば、1位に上り詰めることなんて容易いことのはずなのに、当の本人は『え、だるいからいいわ。こんなところで本気出すのもなんか……あれだし?』と、やりたがらない。
そんなめんどくさがりだからか、ホントにやる気が無いのか百合奈は、数百人いるこのスクールの中でも、いつも100位ぐらいに留まっている。
「大体美咲はすぐネガティブになりすぎ「小浦先輩に谷沢先輩! お疲れ様です!」ちょっと!?」
百合奈の言葉を遮り、長いポニーテールを揺らして頭を下げたのは、私の最大のライバルである木下陽であった。
私達の1つ下である陽は、大抵笑顔で私達を先輩と慕ってくれる。だけどその笑顔が、私には作り物に見えて堪らない。
この子は裏で、どれだけ努力をしているのだろうか。私なんかと、比べられないほどの努力をしてきたのだろう。
この笑顔は、その努力から生まれているのだろうか。
「……小浦先輩、顔怖いですよ。どうかしましたか?」
「……えっ、いや、なんでもない。」
「そうですか……そろそろ休憩終わりですよ、戻りませんか?」
「あ……うん、そうだね。百合奈、先に行ってて。」
「おう、わかった。よっしゃ陽~戻るぞ~」
百合奈は私をよく知っている。だから私が何を考えているかなんて、手に取るようにわかるのだろう。
「……私は、永遠に勝てない。」
永遠の二番手。その名は外れることは、永遠に来ない。
※テスト投稿も兼ねてるので色々変な感じですがご了承ください。