二つの守り人
空母"ひりゅう"飛行甲板にはカタカナで"ヒ"と
書かれている。
全長397m 全幅98m 排水量198750t
搭載機数124機。
防空戦担当・52機
電子戦担当・12機
対艦、対地担当・50機
情報収集、偵察担当・10機
マルチタスクに対応する汎用空母の分類である。
その他にも絶対防空圏形成空母、打撃空母、等がある。
「オーロラ、か。」
「ですね。」
艦橋から米沢艦長と森本第一航空打撃艦隊司令官
がオーロラを眺める。
レーダーには青い表示で僚艦の位置と艦名、進路が表記されている。
「磁気対策を強化した”クアッド・イージスシステムⅨ型改”を唐突に装備させた
技研の連中は何を無駄なことをしているのだろうかと見ていましたが
彼らには後で謝罪しておかねばなりませんね。」
「確かにな。」
艦長と司令官は厚さ15センチの防弾ガラスからオーロラを眺める。
カーテンのように靡く幻想的な姿は気持ちにも、そして”地域にも”変化を与えた。
そしてその変化は途轍もなく大きいという事をこの時点では誰も思ってはいない。
一方、艦橋の真下、戦闘指揮所は隠岐の島中部地方防衛局と通信がとれない
事に一抹の不安があった。
「磁気はまだ安定しないのか!」
戦闘指揮所の指揮官が声を荒げる。
これだけ巨大な艦艇である。潜水艦からは格好の的である。
また、一隻失うだけでも約7500名が一度に海の藻屑と化し、戦略的にも国家の外交力においても
大きな痛手となってしまう。
艦長と同等、それ以上の責任を負う役職のため、注意深い者が選ばれる。
この男の場合、不安を外に向けてしまうタイプである。
「機関室正常、レーダーに反応なし、電波には一時的に障害があるものの
磁気安定と同時に回復すると思われます・・・今、磁気安定しました。
隠岐の島に繋ぎます。」
「こちら、中部地方管轄第一航空打撃部隊旗艦”ひりゅう”。
貴基地の安否と状況を確認したい、どうぞ。」
『こちら、”海上自衛隊”どうぞ。』