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暁の帝国~現世大転移編~   作者: アイオワ
3/11

綱渡り観艦式

《大日本民主主義皇国》

世界最大の軍事力、経済規模を誇る単一民族国家。

開国と同時に明治から栄え、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦を経て

現在に至る。

技術立国としての顔が強く、多くのノーベル賞受賞者を輩出している。

軍事民事表裏一体の技術研究は日本の工業力と軍事力を底上げしている。

アメリカと並び、世界の公安として世界秩序の片翼を担う。



~時、2016年1月1日~


『38ヵ国が参加する関東地方海軍の観艦式です!既に上空からは多数の艦艇を捉えることができます!』

報道ヘリが上空を飛び回る。

集まった観客は50万人、日本最大規模の観艦式と聞きつけて全国のミリタリー愛好家が

集まったのだろう。

総艦艇数144隻、海上に集結中である。


「しかし、阿賀野総理。天候操作装置の威力は絶大でありますな。

昨日は雨天であった横須賀一帯から雨雲一つない快晴に変えてしまうとは。」

天皇陛下のお気に入り、大臣の佐渡蔵さどくら 斉昭なりあき

口元を歪める。


「我が国の科学力は天をも凌駕したのだ。

それはこの国家の技術が一つの到達点に近づいたという事だ。しかし・・・」

言葉を濁らせる。

脳裏に昨日の事前説明が過る。


「天候操作装置を使ったのは何時ごろだ?」


「現時刻が7時30分、使用時刻は3時丁度になりますがそれが何か問題でも?」


「いや、問題ない。」

腕を組み、椅子に深く座ると来るべき30分後に汗を滲ませた・・・。



・・・・・・・・

7時40分


頭の後ろで手を組み、ひと欠伸する。


「ああ、怠い...」


人員不足で連れてこられた職場は監視カメラに目を通す仕事だ。

基本的にAIが識別して怪しいかどうかを聞いてくるのでそれにYESかNOかを入れるだけの

簡単かつ退屈な仕事、いや、作業である。

6時からまだ100分しか経っていない。

新は、コンビニの鮭おにぎりを頬張ると足を組みなおした。


・・・・・・・・

「ここまで順調にいっているというのに、阿賀野総理のあの態度は何だ。」

第一総軍司令官”尾河 俊作”が右手の人差し指を上下に揺する。


「何かあったんだろう。テロの予告だったら既に二件来てるが犯人は逮捕済みだがな。

これだから共産主義者は。」

第二総軍司令官”坂本 龍雅”は吐き捨てる。


「テロの予告程度であの態度はない。

そんなに弱弱しい総理であれば我々が既に引き摺り下ろしている。」


「そうだとしたら、かなり深刻な問題ではありませんかな?」

気だるげに右肘を着く。

坂本は睨みつけるように阿賀野を見上げる。

コの字に配置された政府重役専用の座席からは全ての顔ぶれを伺うことができる。


「おっと、7時55分。用でも足してこよう。」


「式典中に行くなんて事はするなよ。」


「当たり前だ。」

席を立った坂本は頭の片隅に阿賀野の険しい表情を留めた。


・・・・・・・・・・・・・


~7時58分~


阿賀野は事前説明の内容を頭の中で反復させていた。


「全天操作装置、遂に完成したのか。」

目線の先にはアルミ合金に囲まれた巨大なビルのような装置である。


『実験においては成功しているのですが、この規模になると様々な問題が浮き彫りとなってきました。』

装置を見上げるように研究主任の”山崎優斗”が話す。


「不具合でも何かあるのか?」


『いえ、完璧です。ですが、この装置は実験で使用した規模とは違い日本列島全体の磁場を変化させ

天候を操作する装置、何が起こるか、また前例がないため考察が厳しいのです。』


「しかし、小規模のほうは成功しているのだろう?

ならば問題ないと思うが。観艦式の際には使えるようにしておいてくれ。」

ここで認識の違いが浮き彫りとなる。

前例がない、という事が科学業界ではどれだけ危険な綱渡りであるか。

それを上手く説明できなかった山崎の責任もある。

だが、小規模実験で成功している為、頷いてしまった。


「ですが、保証はしませんよ。

地磁気変化による地場の逆転、電子機器の大規模破損、運が悪ければ地球の地磁気が消え

太陽風をもろに受け、文明の崩壊にも繋がります。」


「ネガティブに考えてはだめだ。科学はいつも失敗を恐れずに研究を行うからこそ

技術躍進に一役買っているのだろう?

小規模の実験で成功しているんだ。同じようにやれば成功する。

頼んだぞ。」


そういうと渋々頷いた山崎。

その時は良かれと思って言っていた阿賀野だが、今考えれば成功時の利益とリスクのバランスが

リスクに全力で傾いていた。



(後悔しても無駄だ。前を向くのみ。)

そう言い聞かせ、首相スピーチの為に立ち上がる。



時刻、8時01分。








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