エピソード50-2
・2022年7月4日付
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ガングードのプレイは、他のプレイヤー視点から見ても評価できる物だったと言える。どの辺りを評価と言う点に関しては――賛否両論なのは、ゲーム故の宿命か。技術面は他のプレイヤーよりも間違いなく目立っていただろう。
しかし、やはりというか連携という箇所は賛否が分かれる。それは少し前までのプレイの話であり、過去の動画による物が多い。果たして、現在はどうだろうか?
「ガングートのプレイは、回数を重ねる事に技術が向上しているだろうが――」
センターモニターでプレイの様子を見ていたのは、アルストロメリアである。その姿を周囲のギャラリーは分かっているだろうが――誰も指は差さない。それ程に危険人物と言えるのだろうか?
「どちらにしても、ARゲームではワンパターンや必勝パターンと言う概念は――ジャンルによってゼロに等しい」
アルストロメリアは、サブモニターで中継されている試合で注目の試合がない事を確認し、ガングートのマッチングを見守る事にした。
案の定というか、チームの平均レベルは低いメンバーばかりである。こればかりは――初心者狩り防止の観点からして、仕方のない部分でもあった。
6対6バトル、ガングートは赤チーム、青が敵チームと言う事になるだろう。お互いに目的は相手ゲージを割る事である。特に輸送任務などは存在しない事も、初心者モードによる物だろうか?
赤チームはガングート以外が青チームに攻撃を仕掛けるのに対し、青チームはガングートへの集中砲火を仕掛ける。その理由としてはガングートが他のメンバーよりも出撃コストが高い事にあった。
【出撃コストの高いプレイヤーが集中的に狙われるのは、アーケードリバースでは基本中の基本だ】
【だからこそ、他のプレイヤーは火力や装甲よりも機動力を選ぶ――】
【機動力を持ったプレイヤーが高コストプレイヤーを集中砲火すれば、バトルを一方的に終わらせる事も不可能ではない】
【それを、向こうは知らなかったのか?】
【知っているだろう。それを百も承知で、赤チームはガングートを餌に利用している】
【青チームが無策であれば――だろう? そう簡単に事が運ぶか?】
【一昔前の戦略が通じなくなるのは、ARゲームでは常識だ】
つぶやきのコメントや動画で流れるコメントでも、ガングートが無謀だと言う事は言及されている。しかし、アーケードリバースは青騎士騒動後、チート検知の強化や様々なバランス調整を行っており、過去の戦術が通じるかは未知数だ。仮に通じたとしたら、それは情報収集能力に欠けている事を意味しており、情報戦で後れを取っている事を意味しているだろう。
ゲーム中でもコメントの確認は可能となっているジャンルがあるが、アーケードリバースでは確認機能はない。これは、スパイ防止や八百長対策と言った意味合いがあると言う。ネット炎上でよくあるような行為がゲーム上で起きないのは、この為だろうか。
「このバトル展開であれば――読めたな」
アルストロメリアは、途中から試合結果を確認する事無く別の場所へと向かう。もしかすると、ARゲームの順番が回って来たのだろうか。彼女がエントリーしていた機種は、ここにはなかったという事なのか?
ガングートのプレイは、エントリーしたての荒削りよりは成長しているだろう。しかし、この成長速度は――リアルチートと言われてもそん色ないかもしれない。
【信じられない。あれだけのスキルを短時間で――】
【プロゲーマーと言う噂もあるが、だからと言ってARゲームの操作は特殊なはずだ】
【知識チートか?】
【相手が単純にチートガジェットを使っていただけかもしれない。そして、チートが検知されての強制弱体化とか?】
ガングートが次々と相手チームのプレイヤーを機能停止させていく様子は――Web小説であるようなチート主人公の無双状態にも似ていたと言う。しかし、仮にもプロゲーマーであるガングートが、そこまでのスキルを短期間で身に付けられるのか? もしかすると、相手プレイヤーがチートを使用していた事で強制弱体化をしていたのかもしれない。
様々な憶測がコメントで飛ぶ中、彼女は次々と相手プレイヤーをランチャーユニットで機能停止にしていき、ゲージを減らしていた。その減らし方に関しては、味方チームのプレイヤーからも疑問の声が出るほどである。
「本当にプロゲーマーだったとは――」
「プロゲーマーでも、短期間やプレイ回数が2ケタになったばかりで――あそこまで立ちまわるのは、おかしいだろう?」
「プロゲーマーではないような人物で、あそこまで迫るかどうかは不明だが、常識が通じないプレイヤーなら心当たりがある」
ガングートのプレイスタイル、それは味方プレイヤーや相手プレイヤーにもある人物を連想させる。しかし、相手側は気づいた所で対処の使用がない。つまり――詰み状態なのだ。
「もしかすると、ガングートのプレイスタイルはデンドロビウムの動画をまねている可能性がある」
それこそ尚更――と言う様な考えが飛び出した。ガングートが参考にしたのは、デンドロビウムの動画だと言うのである。これに関しては疑問に思うプレイヤーは多かったが、プレイスタイルを見る限りでは――酷似していると言えなくもなかった。
「さすがに武器が異なる、プレイ回数的な部分で違う個所もあるが――ほぼ間違いないだろう。100%トレスとは言えないが――」
それを踏まえると、味方プレイヤーも敵に回さなくてよかった――と思うようになる。しかし、有名ランカーとは敵になる事もあるのはアーケードリバースでは宿命であり、いつかはガングートとも当たるだろう。これこそ、マッチングシステムの宿命と言うべきか――。




