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ARゲームに挑む我侭姫とプレイヤーたち-不正破壊者の我侭姫-  作者: 桜崎あかり
ステージ3

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エピソード47

・2022年7月3日付

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 翌日の8月12日、思わぬ所で大きな動きがあった。それは――デンドロビウムの動向である。悪質なチートプレイヤーを狩る所は以前と変わらないのだが――。


【何かがおかしい】


【何が? チート狩りは変わらないだろう】


【特定芸能事務所が関係しているチートプレイヤーばかりを狩っていた人物が、何故に――】


【あのチートプレイヤーは運営側が数回の警告をしていたプレイヤーだろう? 誰かがやらなければ――の話じゃないのか?】


【確かに、運営が警告をして無視しているプレイヤーであれば、そうなると思うが】


 つぶやきサイト上では、デンドロビウムが本来は狙わないようなチートプレイヤーを狩っていた事に違和感を持った。チートプレイヤーがプレイしていた機種はアーケードリバースであり、デンドロビウムが無関係な作品ではない。しかし、この手のチートプレイヤーであれば他のチートキラーに任せそうな雰囲気なのが――。


「――タダ乗り便乗勢力は、容赦なく狩る!」


 その一言と共にハンドガンを連射し、チートプレイヤーを撃破する。そのやり方には、別の何者かがレクチャーをしたかのような気配を感じるほどだ。



 このプレイ終了後、デンドロビウムはある人物とすれ違った。それは、別のARゲームで行われているロケテストを見学していた鹿沼零である。彼の素顔はARメットで隠されている為、デンドロビウムには素顔は見えない。


『それが君自身の答え――と言う事か』


 鹿沼は途中からだがデンドロビウムのバトルを見ていた。明らかに何かを悟ったような表情で、チートプレイヤーを的確に撃破する。プレイを始めた頃に比べると、明らかに技術の進歩も見えていた上に――何かをARゲームから感じ始めていた。


「どのゲームでもチートプレイヤーが環境を荒らし、それが引き金でサービスが終了する。パッケージゲームであれば良かった――という意見が出るほどに」


 鹿沼に視線を合わせる事無く、デンドロビウムはつぶやく。まるで、彼は自分の眼中にないかのように――。


『パッケージゲームでは開発資金を回収できないと判断し、ソシャゲ等にシフトしたのは今に始まった事ではないだろう』


「しかし、それでもパッケージゲームを求める声がある。まるで、ソシャゲ化がパチンコ化や実写映画化と同じような炎上案件で――」


『ネット炎上こそ、今に始まった事ではない。アナログな炎上商法がインターネットを利用する事で変化しただけにすぎないだろう』


「貴様――何が言いたい? ただ単純に炎上マーケティングを推し進めようと言うのであれば――」


 デンドロビウムは鹿沼に対して何かの敵意を持った。発言の一つ一つに裏があるような――。しかし、鹿沼の方はデンドロビウムに敵意をむき出しにするような事は全くない事が、声のトーンからも分かる。一体、彼は草加市で何を行おうと言うのか?


『君も知らない訳ではないだろう? コンテンツ市場が超有名アイドル商法で疲弊した事を』


「ガングートの一件を言っているのであれば、初耳だ。コンテンツ市場の疲弊は10年以上前から問題視されている」


 デンドロビウムも何かを察していた。鹿沼が危険な人物と言う訳ではないのだが――発言に裏があると言う事に。


『日本には、海外でも勝てるような既存の作品とは違ったコンテンツが必要だ。ARパルクール等の様な――複数分野に訴えるような物が』


 鹿沼は右手に握りこぶしを作り――こう断言をした。超有名アイドルの様な一握りのファンだけを狙ったような物では、衰退するだろう。だからこそ――鹿沼はアーケードリバースを立ち上げたと言っても過言ではない。


「将来的には海外展開、更には――」


『現状でARゲームを設置し、その開発費を回収できるようなエリアは限定される』


「その手始めが、日本であり――秋葉原や北千住、足立区と言う事か」


『秋葉原等の実例は知っている。しかし、草加市は違う。ARゲームでゲームとは違う様々な分野にも貢献できる』


「それは市民が望んでいる物なのか?」


『市民の望む、望まないはネット上でも議論されているが――反対意見は超有名アイドルの宣伝を目的とした連中の遠吠えだ』


 鹿沼にはARゲームで新たなステージを生み出すというビジョンが見えていた。だからこそ――彼は、何かを急いでいるのだろう。超有名アイドルの芸能事務所AとJが妨害を仕掛けてくる前に。


「最終的に到達するのは、永遠の利益を得るスタイル――賢者の石か」


 デンドロビウムは、鹿沼に向かってARガジェットを突きつける。しかし、それにも全く動じない。ARガジェットを殺傷行為に使う事は――ご法度である事は、お互いに知っている為に威嚇と言う意味合いがある可能性は高いが。


『それこそ、芸能事務所AとJがやろうとしていた事。過剰な利益は――他の都道府県が真似をするような悪例を生むだろう』


「言葉だけで信用するような人間だと――本気で思っているのか?」


 デンドロビウムは、難しい言葉を並べて論破しようと考えている鹿沼に対して質問をする。その一方で、鹿沼は首を横に振り――何かを否定するようなリアクションを取った。論破と言う言葉に対して否定をしている可能性が高いのだが――。


『これだけは言っておこう。秋葉原や足立区も観光資源としてARゲームを利用している。そして、草加市はふるさと納税を使ってARゲームを運営している――その違いが分かるか?』


 その後、鹿沼は姿を消した。どうやら、別のロケテストが行われているアンテナショップへ向かったらしい。鹿沼が去って数分後、デンドロビウムは――鹿沼とは別のアンテナショップへと向かう。


「こっちは正義の味方としてチートキラーをやっている訳ではない。そこは見抜いていないようだな」


 鹿沼にもデンドロビウムの真意までは見抜けていない。彼女は慈善事業や正義の味方等の様な目的でチートキラーになった訳ではないのだ。それに加えて、ネット上の都市伝説を再現しようとも思っていない。デンドロビウムには、別の理由でチートプレイヤーを狩っているのだが――。



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