エピソード46-4
・2022年7月3日付
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午後3時30分、ガングートがARアーマーを解除して小休止をしている。そこで食べていたのは、焼きそばパン――ではなく、紛らわしいようだが焼きうどんパンだった。飲み物はウーロン茶であり、どう考えても外国人が食べるようなメニューではないだろう。
『だが――貴様達は、私の目的に水を差した! その罰は――』
あの時の言葉が再びフラッシュバックする。その時の事は、本人もあまり覚えていない。しかし、チートプレイヤーを倒した事に関してだけは覚えていた。
「あのプレイヤーは、他のプレイヤーに迷惑をかけていたと言うのか」
思う所はありつつも、ガングートは自分のやった事に関して――反省をしているようである。あのプレイヤーがやった事がマナー違反だとしても、それをルールに反する方法で裁いていい訳がない。デンドロビウムもゲームルールに従う形で行動しており、チートキラーと呼ばれる勢力も共通である。
ガングートが小休止をしている頃、様々なアイドルファンがARゲームのフィールドを荒らしまわっていた。それこそ、無法地帯にしようと感じ取れるほどに――。
【これが、過去に起きた超有名アイドル商法に関する騒動――?】
【そっちとは違うな。第一、規模が違う。アレは動いた金を含めて、桁が違いすぎる】
【敢えて言えば、過去に起こった青騎士騒動に近いな】
【なぜ、彼らはARゲームを炎上させようとする?】
【炎上マーケティングは、芸能事務所AとJの得意技だろ? 何故、他の芸能事務所アイドルが――】
【他の芸能事務所が指示したとは決まっていない。青騎士に便乗する勢力は、芸能事務所以外にもいる】
【芸能事務所以外? それこそ実況者とか歌い手の夢小説を書くような勢力しか――】
【これを止めないARゲーム運営は無能なのか?】
既にネット上では炎上マーケティングが展開されているような状況であり、これこそ芸能事務所AとJの狙いであれば――間違いなく、一大事なのだろう。しかし、逆に炎上させているのが愉快犯や一部勢力を排除しようと動く別勢力と言う可能性は否定できず、チートキラー等は様子見を決めている。ガングートも様子見なのだが、少し様子が他のプレイヤーとは異なるようで――。
「ネット炎上、超有名アイドル商法――」
ガングートは一部勢力の暴走やネット炎上は、根絶する事が困難だと過去の出来事で学んでいた。だからこそ、他のプレイヤーよりも冷静に物事を見る事が出来るのだろう。しかし、ガングートはどちらかと言うと一連のネット炎上を起こす原因となった人物に該当する。逆に起こす側の人間だったからこそ、分かる部分もあるのかもしれない。
「コンテンツが芸能事務所AとJのアイドル以外は違法と認識される世界――」
自分が過去に起こした事件が、どのような結末を迎えたのか彼女は知っている。だからこそ、一連の事件は放置しておけば大変な事になるのは――。
一方で、デンドロビウムは様々なチートプレイヤーを撃破していく。チートプレイヤーにも『あのプレイヤーに勝ちたい』や『目立ちたい』と言った理由でチートに手を出したのだろうが――。どんな理由であれ、デンドロビウムは正規プレイヤーに恐怖を与える存在でしかないチートプレイヤーは悪と認識している。
一部プレイヤーはソシャゲにおける廃課金等の一見するとチートとは認識できないような物も、チートとして叩いてネットを炎上させるのだ。チートブレイカーとは、本来の意味で言えばゲームバランスを揺るがすようなチートプレイヤーを裁く様な意味合いで使われる事が多い。
しかし、中には芸能事務所AとJの人気を稼ぐ為『だけ】にチートプレイヤーを叩き、コンテンツの炎上を意図的に起こす勢力だっている。それはアカシックレコードと呼ばれる物に書かれているのだが――その真実に近づけたのは、今の段階で誰もいないと言う。
「チートプレイは、ARゲームの様なオンラインゲームでは営業妨害その物――」
バトル中に口癖でつぶやくようなチートキラーもいるほど、オンラインゲームのチートプレイには賛否両論がある。オフラインであれば、チートツールを使うのは自己責任になろうだろうが――オンラインゲームでは過去に逮捕者が出た事もあった。オンラインゲームにおけるチートツールの使用は犯罪行為とネット上で認識されている。
ARゲーム運営だけでチートツールのプレイヤーを探すのは、労力をそちらに割いてしまい――ゲームバランス以前に運営が正常化するとは思えない。チートキラーは、個人的に運営の負担を減らす為に動いている勢力と言ってもいいのだが、出来た当時は力不足である事が多かったという。過去にもチートプレイに関しては厳重注意などをしてきた。しかし、それらもいたちぼっこと言っていいほどにチートを使う側とチートを駆逐する側の争いが続いている。
その状況を一変させたのが――ネット上でも噂になっていたデンドロビウムの出現。つまり、我侭姫の出現こそが――ARゲームとチートプレイヤーの戦いが表面化した始まりでもあった。




