エピソード45
・2022年7月3日付
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ARゲームの運営サイドもチート対策に関しては無策と言う訳ではない。一連の青騎士騒動後、様々な干渉すると思われるガジェットを持ち込み禁止にしたほどだ。それこそ、チートプレイヤーがARゲームでリアルマネーを稼ぎ出すような行為を水際で止めようと言う――。
「我々としては、巷で騒がれている不正プレイヤーを排除しようと言う意味でチートを規制しているのですが」
運営本部の会議室では、様々なARゲームスタッフが集結していたのである。ただし、この会議は8月1日に行われた物なのだが――ネット上に詳細が拡散する事はなかった。正式発表でチートの大幅規制をしたとしても、新たなチートアプリ等が作られるのは目に見えている。結局は負の連鎖の繰り返しなのだ――と。
「しかし、不正プレイヤー以外にも隠れチートガジェットが拡散している噂もある」
「それらが及ぼすであろう被害は想像を絶する。それこそ、大事故や大規模テロが起きてからでは遅い」
「ゲームバランスに関しては、それぞれのジャンルで違うでしょうが――最低でも、複数ジャンルでバランスブレイカーが出始めているのは――」
「バランスブレイカーと言っても、ジャンルによって扱い方が異なる。同等に扱うのも他のプレイヤーから反感を買うだろう」
「チートアプリと言うのを拡散したアイドル投資家を取り締まるべきなのでは?」
「それに、特定の芸能事務所が原因だとすれば――彼らのやっている事はジャパニーズマフィアのそれと――」
会議の方は色々な意見は出ているのだが、話が進むような事はない。まるで、何処かの段階でエンドレス化しているような感覚があるような――気配さえ感じる。
一連の会議に関して、レポートをチェックしていたのは橿原隼鷹である。レポートを受け取ったのは、マラソン大会の後であるのだが――。
「秋葉原でも同じようなチート撲滅会議を行った記録がある。しかし、それは失敗に終わっている。何故だと思う?」
橿原はレポートを提出したスタッフに対し、何かを言いたそうな表情をしていた。
「チートアプリ等が出回れば、それだけアフィリエイトでの利益等で儲ける人物がいる――と言う事だ」
「アプリを流通させているサイトがスペース料を受け取っているという話は秋葉原の会議でも――」
「そういう次元の話ではなくなっている――そう言う事だ」
「超有名アイドル商法再び――ですか?」
「そのレベルで済めば、一部のガーディアンがネット炎上と言う名のマッチポンプを行う事はないだろう」
「まさか――大規模テロですか?」
橿原とスタッフのやり取りは続くのだが、ネット炎上以上に何やら物騒なキーワードも出てくる。一体、彼らは何を話していると言うのか?
「草加市が行おうとしているのは――ディストピア的な何か、と言うのは暴力的過ぎるし、分かりにくいかもしれない」
レポートを見て、ため息を漏らす橿原は秋葉原が起こしたミスを繰り返して欲しくないと思っている。特定の芸能事務所だけが過剰な利益を求めて暴走し、遂には――地球上のありとあらゆる金になる物を芸能事務所AとJが独占する事――。それが超有名アイドル商法を巡る炎上事件の原因となった考えであり、ガングートが訴えた事でもある。
「分かりやすく説明すると、どうなるのでしょうか?」
男性スタッフが尋ねると、橿原はテーブルに置かれたDVDのパッケージをスタッフに見せた。そのパッケージは、あるゲームを題材としたアニメ作品のDVD1巻である。何故、彼はこのDVDを見せたのか?
「この作品は、対戦バトルを題材としたアニメだが――その内容が超有名アイドルグループを皮肉ッているとして、ネット上で話題となった」
「おっしゃっている事が良く分かりませんが――どういう事でしょうか?」
橿原のいう事に対し、スタッフは更に困惑する。そして、DVDの裏パッケージをチェックするのだが――。
「分かっただろう。この作品で題材となったのは足立区と言われている」
「草加市と足立区では違うでしょう。足立区ならば聖地巡礼になると――まさか!?」
スタッフも、裏のパッケージを見て要約り対した。そこに書かれたあらすじを――。
「草加市がやろうとしているのは、リアルで同じ事を――と言う可能性が高い。どちらにしても、直接乗り込む可能性もあるかもしれないが」
そして、橿原は直接乗り込む事にしたのである。これが一連の事件や青騎士騒動にも関係があると踏み込んで――。




