エピソード44-6
・2022年7月3日付
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8月11日午前11時、ニュースサイトでは各種イベントのレポートが報告されている。しかし、その中にはアーケードリバースに関しての記述がない。イベントを開催していないのも理由かもしれないが。アーケードリバースでは特にイベントを開催はしていないのは、別の理由もあった。青騎士騒動は関係ないというのだが――。
「アーケードリバースは手探り過ぎる――と言う事か」
草加市まで足を運んだ橿原隼鷹は、他のARゲームでイベントが行われている光景を見て、何かの違和感を感じた。ネット上ではイベントを行わない理由は炎上防止という間違った理由が拡散しており、これが別のネット炎上を起こすという悪循環になっている。
どのような対策をすればネット炎上を防げるのか――それが分かれば苦労はしないし、これが絶対に正しいという方法もないだろう。
必ず、何処かの部分で不利益となる人物が出てくるのは間違いないし――誰もが損をしない方法があれば、ここまでネット炎上がする事もない。同じような事を考えているのは、山口飛龍も一緒だろう。彼の場合は橿原と違って、悪質なタダ乗り便乗に例えられるようなネット炎上は水際で止めるタイプかもしれない。
午前12時、お昼のニュースでは様々なジャンルのニュースが報道される中、異質と言える内容のニュースが報道された。民放のニュースではなく、国営のニュースでトップを飾った事には驚きだが――。男性キャスターも淡々とニュース記事を読み始める。
『先日、覚せい剤所持で逮捕されたアイドルグループの元メンバーである――』
先日とは青騎士騒動から少し開けた位だろうか。その時はワイドショー等が同じニュースで横並びしていたのが記憶に新しい。その際は覚せい剤所持容疑でアイドルグループの元メンバーが逮捕された事が報じられ、実名報道もされた。
これに関してはつぶやきサイト上でショックを隠せないコメントが多く拡散し、中には心中等と言う物騒な書き込みもあった位である。この一件を事務所側も否定をしたのだが、それでもネット上の炎上を抑えられなかったという話だ。さすがに心中に関しては愉快犯によるまとめサイト誘導を目的とした、悪目立ちによる炎上だったが――。
『その後、新たな証拠が発見できなかったとして――証拠不十分で釈放されました』
まさかの展開としか言えないだろう。何と、証拠不十分で逮捕されたはずの元メンバーが釈放されたのである。これに関しては他局も報道するのだが――その内容は、政治家による買収や芸能事務所からのもみ消し等と現実味がないものばかりだった。まるで、過去に超有名アイドル商法でネットが炎上した際、ガングートに罪を全てなすりつけたかのような――そのデジャブを見ているようでもある。
このニュースに関しては、ネット上でも話題となったのだが――特定芸能事務所によって摘発される等を恐れ、誰も情報を配信する事はなかったのだと言う。アイドルグループの元メンバーとは、特定芸能事務所のA及びJが関係するグループなのかと言われると――そうかもしれないが、ニュースでも言及される事はなかった。つまり――元アイドルの人物が覚せい剤の所持で逮捕されたが、証拠不十分で釈放された――という部分しか分からないのである。
「実名報道はされたが、芸名で活動していた可能性もある。詳細な映像がない以上、この件は下手に触れれば――」
のり弁当を食べながら、自宅でニュースを見ていたのはデンドロビウムである。私服というラフな姿は――草加市内でも見る事はないのかもしれない。それ程に、ARインナースーツに慣れてしまっているの可能性は高いだろう。
「それに、今回の該当者が証拠不十分で釈放されたのは――別の目的があるのかもしれない」
テーブルに置かれているタンブラーにはホットコーヒー、のり弁当以外にはカップラーメンも置かれている。これでカロリーなどは大丈夫なのか――と若干不安を持つかもしれないが、彼女としては問題がないようだ。お昼と言っても仮に食事を取るのみで、ARゲームプレイ後には間食を取ることだってある。スポーツと同じ位に汗をかく、ダイエット効果は不明だがダイエットグッズを買うよりは安上がりと言う噂もネット上に拡散しているほどだ。
谷塚駅近くのファストフード店、焼きそばパンとカレーパン、それにいくつかの菓子パンがトレーに置かれている。飲み物はドリンクバーのサイダーを口にしていたのは――意外な事にアルストロメリアだった。既に軽い食事は終わっており、これはいわゆる一つの間食と言える。本当にARゲームをプレイすると腹が減るのか?
【デンドロビウム、様々なゲームでサービス閉鎖へ追い込む?】
彼女が見ていた記事は、ある都市伝説を言及していた記事である。それはデンドロビウムがブラウザゲーム等を閉鎖に追い込む存在なのでは――と言う記事。この内容を見て、アルストロメリアはネット炎上目的等を疑った。しかし、単純に炎上目的と言うには記事内容が詳細過ぎたのである。逆に捏造記事だったとしても、それを見破るにはそれ相応の理由を発見する事が必要な程。
「一体、これが何を意味しているのか――」
カレーパンをかじりつつ、アルストロメリアはカレーパンを持っていない右手でテーブルに置いたタブレット端末を着様に動かしている。そして、勢いよくページをタップしてしまった事で、あるサイトにつながってしまったのだが――。
「これって、まさか――」
アルストロメリアが発見した記事、それはアガートラームに関する記事だったのだが――設計図を含めて詳細過ぎる内容に驚いた。さすがにカレーパンを落とすような驚きではないが――内容を読み進めていくにつれ、何か別の意味でも――。
「アガートラーム――この正体って――」
チートアプリ等を無効化するARガジェット、そう解説されていたのである。このガジェットに関しては使用しているプレイヤーが非常に少ない。その原因はチートアプリ等を使っているプレイヤーと対戦しないと、アガートラームの効果が発揮されない事にあった。




