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ARゲームに挑む我侭姫とプレイヤーたち-不正破壊者の我侭姫-  作者: 桜崎あかり
ステージ3

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エピソード44-4

・2022年7月3日付

行間調整版へ変更

 デンドロビウムは明らかにガングートへバトルを挑もうとしていたのだろうか? 単純にバトルを挑もうと言うのであれば、言う事は『バトルを挑みたい』だけで事が足りるかもしれない。しかし、彼女はARアーマーを実体化していない状態で姿を見せた。一連の会話はジャック・ザ・リッパーが地雷を踏んだ事による物として――。


「そんな物を使うと思うか? こちらは、仮にもプロゲーマーだぞ」


 ガングートの方は展開していたスペツナズナイフを消滅させた。消滅させた理由は色々とあるのかもしれないが――運営スタッフに見つかるのがまずいと考えたのだろうか。


「安易な挑発に乗せられるのが――プロゲーマーとは思えんが、まぁいい」


 先ほどまでのタブレット端末をバックパックへしまい、別のARガジェットをデンドロビウムは用意した。まさかのソード型ガジェットである。どうやら、先ほどまで使用していたのはアーケードリバース用ではなかったらしい。


「手の内を隠したと言うのか?」


「こちらは別のARゲームもプレイしている関係で、複数のガジェットを使っているに過ぎない。そう言う判断は炎上マーケティングに利用されるのが目に見えているぞ」


「ARゲームで使用出来るガジェットは1つだけ――と聞いている」


「1個だけしか使えないのは、特定ジャンルのみ。それに、アカウントが1つまでしか持てないの間違いではないのか?」


「複数アカウントがどのゲームでも禁止やそれに類するペナルティを受けるのは――こちらでも把握している」


 ガングートの方は、デンドロビウムと戦う気でいるようだが――デンドロビウムの方は、乗り気ではないように思える。


『まもなく、アーケードリバースのマッチングが始まります。該当プレイヤーは――』


 ARメットにアナウンスが表示され、それを確認したプレイヤーがプレイフィールドへと向かう。そのプレイヤーの中には、デンドロビウムも含まれていたのである。つまり、そう言う事だ。


「どうしても戦いたいと言う事であれば、個人プレイ以外の部分を磨くことだ。そうすれば、いずれはマッチングする機会もあるだろう」


 そう言い残すと、デンドロビウムはガングートの目の前からは姿を消した。ガングートはデンドロビウムと戦えるチャンスが――と考えていたが、とんだ思い違いだったようである。


 この段階では、アーケードリバースにおけるマッチングシステムは把握しておらず、デンドロビウムとは対戦できない事は分からなかった。対戦格闘ゲームであればレベル差が離れているような対戦も出来るのだが、アーケードリバースではこうした事例は『初心者狩り』を生み出すとしてシステムで出来ないようにしている。アーケードリバースでも、このシステムにしたのはごく最近――青騎士騒動の後と言われており、ネット上ではこの仕様変更を歓迎する動きもあった。



 デンドロビウムのプレイが始まる頃、悔しそうな表情でガングートはセンターモニターを見ていた。


「ジャイアントキリング――それが起こる状況は様々だが、逆に盛り上がらないゲームもある」


 ガングートの隣に姿を見せたのは、ハンゾウだった。彼女も似たような光景を経験した事があるので、経験談なのかもしれない。


「世の中には廃課金も一種のチートとして叩かれるようなゲームもある位だ。だからこそ、時代が求めるのはパッケージタイプなのだろう」


 ハンゾウの話を聞いても、ガングートにはピンとこない。過去に実写アイドルやAV女優等を題材にしたようなソシャゲがあり、そちらのイベントが無課金よりも廃課金の方がクリアしやすいと言われ、ネットで炎上した事があった。ハンゾウの例えは分かりづらいのだが――周囲で聞いていたギャラリーの中には、納得をしている人物も存在している。


「パッケージ? 格ゲーの様なタイプと言う事か」


「格ゲーでもバランス調整が入るのは知っているだろう。その辺りまでならば許容範囲内だが、ダウンロードコンテンツやアイテム課金がチートだと言いだす人間も世の中にはいる――そう言う事だ」


「馬鹿馬鹿しい。お金を払ってプレイする以上、プレイスタイルが十人十色なのは暗黙の了解だろう? そこまでプレイスタイルを縛ると言うのか――ARゲームは」


「そう言う訳ではない。プレイスタイルを強要する事は出来ないはずなのに、運営側が拝金主義に走り、廃課金を強要するような運営をした結果――」


「それこそプレイヤーがどうこう言えるものではないのか?」


「あくまでもプレイヤーは神様――そう考えた運営もいた。予算がなければゲームの運営は不可能だ。彼らも慈善事業でやっている訳ではないのは――分かるだろう?」


 何かを遠回しに言っているような気配がする――そうガングートはハンゾウの話から感じた。 


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