エピソード44
・2022年7月3日付
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午後2時30分、ハンゾウが色々なアンテナショップを巡って行く内に到着したのは、ガングードが立ち寄っているショップの隣にあるライバル店だった。こちらは店舗的な広さは野球場並ではないが、ゲームフィールドとしてはそこそこの広さを持つ。2階建てになっているのだが、駐車場や搬入口等を踏まえると――ゲームフィールドとしては同じ位なのかもしれない。扱っている機種はARガンシューティングとARFPS系、狩りゲー等であり、アーケードリバースは扱っていなかった。
「我侭姫って知ってるかい? 最近になってARゲームで暴れまわってるって話だぜ――」
ハンゾウがふと目に入ったのは、いかにも狩りゲーのハンターを思わせる衣装の男性である。外見からすると、ジークフリートと言う人物に酷似している。ネット上では画像を見た事があるが、本人と会った事はない。
「今も古今東西のゲームはチートプレイヤーが荒らし放題。迂闊な事をしようとすれば――ガーディアンにバッサリだ」
彼が誰に向けて喋っているのかは分からないが、アバターの様なCGではないのは確かだった。それは自分にも覚えがある――と言うよりも、草加市内で過去に起こった雑コラを使用した炎上マーケティング事件――それが思い浮かぶ。
「どっちもどっちも――」
彼が全てを喋ろうとした矢先、ある人物が投げたスペツナズナイフが彼の腕を直撃――そこでカラクリが判明する事となった。ジークフリートを騙っていたのは裏サイトの関係者だったのである。普通、アイドル投資家等がネット炎上を行う為に利用する為、意外な展開と言えるだろう。利益の高いバイトを探した結果、今回の裏サイトに載っていた仕事――これを行ったらしい。
「挙句の果てには一般人を利用するとは――何処まで堕ちるのか、芸能事務所AとJは――」
ナイフを投げた人物、それはジャック・ザ・リッパーだったのである。本人に出会うのは、ハンゾウにとっては初めてだったが。ジャックはチートプレイヤーがジークフリートを騙る手口でまとめサイトやつぶやきサイトを利用し、ネット炎上を行っている手法――それだと考えていた。
しかし、蓋を開けてみるとジークフリートを騙る手口は一緒だが、それを実行していたのはチートプレイヤーでもアイドル投資家でもなかった。遂には自分達の手を汚さずに炎上マーケティングを行う手段を確立した――それに対し、ジャックは怒りの形相で偽者のジークフリートにナイフを投げつけたのである。なお、その表情はハンゾウにも見えないのだが――今回の手口を踏まえると、よほどの事だろう。
同時刻、ガングートはアーケードリバースをプレイしていた。既にプレイ回数は別店舗の分を加えると、その回数は20回――1クレジットが100円計算の為、ガジェットの費用を差し引くと2000円である。ARゲームの場合はARガジェットの初期投資で10000円かかる作品もあるのだが、それさえ何とかなれば1クレジット100円で全ジャンルのゲームがプレイ出来る魅力があった。
一部で対戦格闘等で1プレイ200円と言うケースもあるが、基本は1クレジット100円なので――アイテム課金のソーシャルゲームよりも元が取れる場合だってある。ARゲームでは健康上の理由でジャンルによってはプレイ拒否されてしまうケースもあるのだが、それ以外では基本的に問題はないだろう。プレイマナーは――ネット上でもかなり厳しい印象を受けるのだが、それはある勢力をARゲームへ入れない為の対策だったのかもしれない。
「どちらにしても、ARゲームとVRゲームでは感覚も違う――まずは、それを覚える事が重要か」
ガングートは先ほどまでのプレイスタイルを若干修正しつつ、自分のスタイルを披露しつつある。デンドロビウムも試行錯誤あったとはいえ、現在では上位ランカーに匹敵する実力を持つまでに至った。それを踏まえれば、ガングートもランカーに加われる可能性は高いだろうか。




