エピソード43
・2022年7月2日付
行間調整版へ変更
午後2時、アーケードリバースにガングートがエントリーしたという速報が拡散、詳細が流れだしたのが5分を過ぎた辺りである。
「この装備は本当なのか?」
「自分も目を疑ったが、あの動画を見た後では――」
「本当にチュートリアルをプレイして、ある程度慣らしただけなのか?」
「アーケードリバースは、あのレベルのプロゲーマーまで呼び寄せてしまったのか?」
モニターで例の映像を見たギャラリーは、その人物の装備を見て目を疑った。フルバースト前提の連装砲、バックパックのロングレンジレールガン、ホバーブーツユニット、それに白銀のARメットはデュアルアイ仕様だ。ARメットの場合、バイクのメットのようなタイプ、ツインアイ型のメット、メット機能をARガジェットに集中させたタイプ等がある。ワンオフでも、デュアルアイはめったに見ない。モノアイタイプも存在はするのだが――モノアイはアーケードリバースでは禁止装備扱いになっていた。モノアイはARゲームでもマニアックな装備だが、ジャンルによっては機能的な部分でチートと間違う程の性能が出ると言う話がネット上にアップされている。
ただし、モノアイが禁止されているのはリズムゲームやパズル、マージャン、カードゲーム系のようなジャンルであり、サバゲ―やFPSは問題ない。それでも――FPSでもチートとして禁止されているとネット上でデマを流す人間は存在していた。その勢力が、俗に言う夢小説勢やアイドル投資家等と言った『超有名アイドルを神コンテンツにする為』動いている勢力であり――ガングートにとってはトラウマでもある。
ガングートのプレイスタイルを見て、何かの疑問を持ったのはヴィスマルクだった。ヴィスマルクは最近のアーケードリバースよりも別のARゲームをプレイしようとジャンル開拓を行っているのだが――その途中で、ガングートのプレイしている様子を直接見ていたのである。
彼女の装備はARインナースーツにARメットを装備しており、周囲の人物に素顔が見える事はない。これはARメットを装備しているプレイヤーには共通だが、これによってアンテナショップ周辺に特撮ヒーローの様なARゲーム装備のプレイヤーがあふれる状況にもなっている。
「プレイスタイルを模索するのは分かるが――」
ヴィスマルクはガングートのFPS時代のプレイスタイルもある程度知っていた。それを踏まえると――ガングートはARゲームで自分のフィールドでのプレイスタイルが通じるか試しているのかもしれない。
今回披露したのは、他の味方プレイヤーとの共闘とも言える物であり、本来の彼女が取らないようなスタイルだ。FPSでもパーティープレイが必要になるようなタイプ、狩りゲー等では連携が必要となる場面が多い。しかし、ガングートは連携を苦手としているプレイヤーであり、プロゲーマーとしても何処かのチームに入る事はしていなかった。それはプロゲーマー界では有名なエピソードであるのだが――。
「アーケードリバースが一定の連係プレイを必須としているのは分かる。しかし、それをガングートが実践すると違和感があるのはどうしてだ」
ヴィスマルク以外でも似たような意見を持つ人物は存在する。実際にゲームを選んでいる現場に居合わせたペンドラゴンも同じ考えを持っていたし――。
『ソロゲーマーとしては実力のあるガングートがパーティープレイを強いられるとは――それ程にARゲームという環境では苦戦すると言う事か』
別のエリアで観戦をしていたヴィザールは、ガングートのプレイスタイルがソロプレイである事を把握した上で――ARゲームはVRゲームや従来のゲームとは勝手が違うと思っていた。
【ガングートのプレイスタイルとは違っていたな】
【相手プレイヤーを倒していく時のソレは――プロゲーマーの時のソレと同じだろう】
【違ったのは、あくまでも序盤のプレイだけだ】
【プロゲーマーでも、ARゲームでは勝手が違う。慣れるまでには時間がかかるだろう】
【時間がかからないで強豪入りしたようなプレイヤーもいるが、ああいう人種が量産されても困るが】
【プロゲーマーと言っても、ビスマルクの様なプレイスタイルもいれば、アイオワの様なスタイルもある。それこそ十人十色だ】
【えっ? アイオワってプロゲーマーだったのか?】
【名前が同じだけの別人かもしれない。ビスマルクは有名過ぎて重複登録が出来ないが、アイオワは数人いたな】
ネット上では、さりげなく大きなネタバレと言うか――偶然の発言がネット炎上を招きそうな物も存在していた。しかし、こうしたネット炎上を気にし過ぎても、ARゲームを純粋に楽しむ事は出来ないと思われる。
その噂となっているアイオワは、ARガジェットのメンテナンスを依頼していた。
「既にコンテナへは収納済みだから、回収お願いね」
アイオワがコンテナへ修理が必要なARガジェットを収納し、そのコンテナは地下通路を経由してアンテナショップへと届けられた。コンテナに入れて瞬間移動で届けられるような技術は存在しないし、ドローンで運ぶには重量オーバーとも言える。それを踏まえると、地下通路のパイプラインでアンテナショップへ届けるのが手っ取り早いだろう。この地下レールとも言えるパイプラインのおかげで、河川の洪水対策になっている事 下水道のヘドロ問題なども浄水施設を作る事で解決している。
こうした施設等もふるさと納税で集められた税金を使っているが――草加市民でも未だに信じられない人間がいるので、これに関しては半信半疑という状態は変わっていない。様々な環境変化によって、草加市を市民が住みやすい都市に変える為のアーケードリバースなのだが――浸透するには時間がかかっているのが現実である。
「こうしたパイプラインまでふるさと納税で――未だに信じがたい話だけど」
インナースーツ姿のアイオワも、ふるさと納税の一件をアルストロメリアから聞いたのだが、それでも信じがたいのが第一印象だ。更に自力で調べても、草加市役所で話を聞いても――SF小説の世界やキッズアニメにあるような次元の設定に、頭が痛いのだが。




