エピソード42.5
・2022年7月2日付
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ガングートはアンテナショップでアーケードリバースを発見した。そのゲーム内容を見ると、動画で見た時と印象が少し異なると言うか――。
「VRがバーチャル空間を使うのに対し、ARゲームは現実のフィールドを使うとは聞いていたが――」
ガングートが気にしていたのは、フィールドの広さである。バーチャル空間を使うVRの場合は筺体とある程度のスペースで足りるのだが、ARゲームはジャンルによって使用するスペースが大変な事に。実際、レースゲームやサバゲ―ではかなりのスペースを使っているらしく、カーショップ位の広さが必要になってくる事もある。
ジャンルとしてはアーケードリバースはFPSと言うカテゴリーに属するのだが、サバゲ―のように森林や廃ビルと言ったエリアを使う訳ではない。使われるフィールドは市街地やビル街――それこそ、草加駅付近等は持ってこいとも言える場所かもしれないだろう。アーケードゲームの中には、名古屋や大阪の様な関西エリアが登場するゲームもあるのだが――さすがに、そこまでは出来ないようだ。
「フィールドに制約のあるFPSと言うべきか――関西でもARゲームが設置されテイル話は聞いているが、関東程の人気は――」
色々と考えつつも、彼女はプレイに必要な物やガイドライン、操作説明等をチェックしていた。実際にプレイしてみないと――面白さは分からないとガングートは考えている。二次創作の夢小説にあるようなエアプレイなんてもってのほかだ。そんな事をすればネット上で炎上するのは、火を見るよりも明らかだと――彼女は理解していた。
「しかし、TPSもFPSも似たような物に見えるが――」
ARゲームでは、自身がプレイヤーになると言う事ではFPSもTPSも同じように見える。ゲーム画面で見れば明らかな違いが出るのだが、プレイヤーの視点とゲーム画面が一致するようなARゲームでは――。
TPSと言うと、題材が戦争物が多い――特に架空戦記と言った題材が多く使われているだろう。しかし、そう言った題材は草加市内のARゲームでは皆無と言ってもいい。インターネットカフェ等でプレイ出来るVRゲームだと存在するかもしれないが、マインドコントロール等の要素が強い題材等はARゲームでは敬遠されがちだ。
あくまでもARゲームで禁止されているのはARガジェットを戦争などの軍事関係に転用する事であり、戦争を題材としたARゲームまで禁止するのはお門違いと思っているらしい。
主に使われている題材は宇宙人から地球を守ると言う地球防衛物、異世界ファンタジーを舞台とした狩りゲーに似たようなテイスト、現代の超能力バトル等を題材にした物――それらがメインだった。パズル要素が入ったり、リズムゲーム要素が入ったり、中にはセクシーコスチュームの女性プレイヤーが多い若干アダルト系なゲームも存在する。アダルトゲームは、表向きは禁止表現としてARゲームには存在しない。しかし、18歳以上のプレイヤーがプレイするようなARゲームでは、そう言ったジャンルもゼロではない。ただ、草加市内では表向きに宣伝していないだけなのでである。探そうと思えばネット上に情報はあるのかもしれない。
ガングートの探していたゲームは『自分でも楽しめるようなゲーム』に絞り込んでいる。そこで発見したのが、アーケードリバースだった。
ある意味でもFPSだったのは運命と言うべきなのか――。
「今の時代で戦争が起きれば――間違いなく、世界は滅亡するのが目に見えている。あの芸能事務所2社は――」
ガングートは、過去に自分が起こした事がフラッシュバックする中で――同じ事を繰り返そうとしている芸能事務所を非難した。しかし、それを悔やんでも今の状況が変わる訳でもなければ、青騎士騒動がなかった事になる訳ではない。青騎士の正体にも若干の目星がついている彼女だが――それを探るよりも、まずはアーケードリバースへの参戦を優先する事にした。
アーケードリバースにガングートの参戦に関するニュースが拡散したのは、午後2時である。ニュース番組が別のヴィジュアルバンドの不祥事を報道する中、地方ニュース等はガングートの話題で持ちきりだった。何故、ここまでの温度差が出たのか? それがガングートが過去に起こした事件を踏まえれば、火を見るより明らかであり――。
「ようやく、ニュースとして取り上げられたのか――ガングートが」
ARゲームのセンターモニターにニュース速報が流れたのを確認したデンドロビウムは、別のフィールドへと向かった。その方向は偶然にも草加駅近く――ガングートの参戦が確認されたアンテナショップの方向である。




