エピソード37
・2022年7月1日付
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2人がいたアーケードリバースの専用フィールドは、2人以外の人がいないのでは――という空気だった。フィールドが廃墟の様な物ではなく、普通のビル街と言うのも理由かもしれないが。マッチングに関しても2人以外のプレイヤーが登録されている気配はなく、まるでロケテストの様な雰囲気を感じるだろう。
既にジャック・ザ・リッパーは本来の装備に戻り、デンドロビウムも各種装備を準備中だ。
「ARゲームでも、悪意を持って炎上させるような人間は存在する――超有名アイドル商法を抜きにしても」
デンドロビウムは――ジャックの言った事に対し、こうつぶやいた。
「それに――どの世の中にも、平和を破壊して災いを呼び込もうとする連中は現れる」
『何を言いたい?』
「そのままの意味だ。ネット炎上を戦争に見立てて、それで儲けようとするアイドル投資家や芸能事務所がいる限り――」
『ARゲームは、あくまでもARゲームである。それを戦争に例えるなど――』
「世界は繰り返される――やがて、人間は血を流さなくても――人の命を犠牲にしなくても――人の感情を恐怖で満たすことで、芸能事務所は――ソレを操る政治家は――」
『それ以上は言うな! ARゲームを政治利用しようと考えるならば――私は、お前を全力で潰す!』
ジャックは、遂にビームだが―を構えてデンドロビウムに投げつける寸前の様な構えをする。どうやら、デンドロビウムの発言がジャックにとっても地雷だったようだ。
「貴様も分かっているだろう? チート勢力の事は――連中は、まとめサイトや芸能事務所に踊らされるだけ――タダ乗りビジネスに利用されているのだ」
『それ以上は――言うなっ!』
遂にジャックはビームダガーを投げつけた。しかし、ダガーが命中する事はない。そのまま、デンドロビウムの身体をすり抜けたのである。何故すり抜けたのかと言うと、まだゲームスタートをしていなかったのだ。
「やはり、例の人種と同じと言う事か――ジャック・ザ・リッパー!」
ゲームスタートと同時に両手に持ったハンドガンの引き金を引いたのはデンドロビウムだった。しかし――ゲームは始まったはずなのに、ジャックのライフゲージが減る事はない。どう考えても――この状況はおかしかった。
バトル開始から30秒が経過してもお互いのライフゲージが減る事はない。ゲームは既に始まっていると言うのに。練習モードであれば、体力が減ったとしてもすぐに回復するような仕様にする事も可能だが――。
『デンドロビウム、まさかと思うが――』
ジャックはダガーがすり抜けた段階で、何かがおかしい事には薄々分かっていたのだが――証拠がない。それに加えて、仮にチートによるエラーがあるとすれば、それはゲーム開始前に警告が出るはず。仮にチートをゲーム中に使ったとしても、警告メッセージは自分のメットに表示されていない。
「こっちとしても、カラクリがばれるのは――何っ!?」
次の瞬間にはデンドロビウムは背後を振り向き――先ほどのダガーが直撃した相手をみて、驚きの声を上げた。そこにいた人物、それは青騎士だったのである。青騎士のアーマーにダガーが刺さっており、こちらに命中した事になるのだが――。
「システムは独立しているはずなのに――どういう事だ?」
実はここのシステムはロケテストしようと言う事もあって、本来のアーケードリバースからは独立している事になっている。しかし、これが仮に特定人物をおびき寄せる為だけの罠だとしたら――。
『独立システムと見せかけた、罠と言う事か――』
ジャックの方はデンドロビウムが罠を仕掛けるような事はないと考えている。その一方で、青騎士が襲撃してきた事に関しては疑問があった。つまり――何処かの段階で罠を仕掛けられた事になるだろう。
「青騎士――あの勢力が壊滅したはずなのに、それを騙るまとめサイト勢が利用しているのか?」
『まとめサイト勢――?』
「勝負は預けるぞ――ジャック・ザ・リッパー」
デンドロビウムも当初の1対1と言う対決を潰された事に関しては激怒していた。しかし、未だに青騎士というバリューネームを利用しようと言う連中がいた事には――戸惑いを感じているのも事実だろう。
最終的には青騎士の目的も分からない以上、このバトルを続行する意味はなくなってしまった。不意打ちまがいなシチュエーションをネット上で拡散され、そこからまとめサイトやつぶやきサイト経由で拡散されれば――超有名アイドル商法時代の繰り返しになる。




