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ARゲームに挑む我侭姫とプレイヤーたち-不正破壊者の我侭姫-  作者: 桜崎あかり
ステージ2

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エピソード31-5

・2022年6月29日付

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 午後2時、例の動画の拡散はまとめサイト経由以外でもかなりの物となっていた。その一方である組織の助力もあって、最悪のケースになる事が回避されている。草加市内でも動画の事を知らない人間がいたのは、その為だ。この辺りは時間差で動画が視聴できなくったと考えるべきだろう。


 北条高雄の動画は、別の意味でも衝撃を受けている。炎上を呼ぶような批判的な意見のみを拾い、アフィリエイト系まとめサイトの記事にするのは――言わずと知れた常套手段だ。こうした炎上商法が色々な分野展開されているのを、デンドロビウムは分かっている。だからこそ、こうしたやり方に関して『チート』と切り捨てているのかもしれないが――本当にそう思っているのかは分からない。


 高雄は、こうも言っていた。


『この世界は最強の力があれば強いという感違いが――ネットの炎上や様々な諸問題を生み出した。チートだってそう思わないのか?』


 言っている先で、倒れている青騎士と思わしき人物に対してサッカーボールキックを決める。しかも、クリティカルだ。その後も別の青騎士に対してマウントからのパンチ連打、別のハンマーウェポンを召喚しての滅多打ち――思わず目を背けたくなる物ばかりである。これでも青騎士が倒れたままで動きを見せない事から、一時はやり過ぎや殺人事件か――という声もあった。


 しかし、ARゲームはデスゲーム化を禁止しており、高雄の攻撃も分かりづらい所ではあるが手加減がされているのを周囲は知らない。


『チートを使えば、チートプレイヤーばかりがゲームにあふれかえる懸念だってある。そして、それを悪用してRMTや詐欺ビジネスを展開しないとも言い切れない――』


 高雄は最後の一人に対し、止めを刺そうとばかりにビームサーベルを展開した。そして――。


『こっちとしては、悪質な商法やビジネスのノウハウが海外に輸出され、それが10倍、100倍で返ってくる事が怖い――それこそ、デスゲーム化されて戻ってくる事に――』


 ここから先の発言は録画していたプレイヤーがログアウトしたのか、それともタイムオーバーなのかは不明だが途切れている。しかし、高雄の言う事にも一理あると同意するような人間はいないだろう。あまりにも飛躍した発言は、まるでWEB小説のようだ――と冷めた反応が圧倒的に多い。


【まさか、ジャパニーズマフィアの再来か?】


【芸能事務所がテロ組織になるなんてあり得ないだろう】


【それこそラノベの世界じゃないのか?】


【ARゲームを政治の道具にするなんて、ガイドライン違反じゃないのか】


【国際スポーツ大会でイースポーツを公式協議にする話があった。それに腹を立てているのか――】


【どちらにしても、奴の考えている事が見えない】


【他のチートキラーのプレイヤーも同じ思考なのか?】


【仮にそうだとしても――】


 ネット上でも案の定というか、炎上を招くような発言をしている人間が多かった。これを都合のよい状況として、アイドル投資家等は芸能事務所の指示を受けてARゲームの炎上記事を書き、超有名アイドルの方が安全である、神コンテンツであると――拡散させる。それこそ、その速度はスーパーコンピュータもビックリするような速度で。


 これらの大きな騒動も、芸能事務所の思惑どおりには進まず――水際で止められる事にはなったのだが。しかし、有名芸能事務所はマイナー事務所等に責任を押し付ける事で、自分達は無実であるとネット上で大々的に発表をしていたのである。こうしたニュースが草加市内で報道されないのは、別の理由があってのことだが――それを『ご都合主義』や『デウス・エクス・マキナ』と言う様な人間はいなかった。それこそ、超有名アイドルの芸能事務所が使う手段である――と反論するユーザーが多いのも、草加市の特徴だったからである。



 一連の動画に関する騒動は、大きくは発展していない様子だったのは――ネットが炎上する前の対処だった事も大きい。対処したのはガーディアンに代表される組織もそうだが、個人のネット情報を見極める目もあった。そうでなければ、それこそ有名まとめサイトが数時間で100億のアフィリエイト収入を出すようなレベルの案件だった――と言うのもある。


 しかし、一般市民は今回の騒動で動揺するような流れを持っていなかった。持っていないというよりは、諦めムードとも取れなくもないのだが。下手に騒動を大きくすれば、草加市へのふるさと納税も減るだろう――という考えが浮かんでいるのも理由の一つか? そうであって欲しいと考えるのは一部のネット住民かもしれないが、それでも今回の件は大きくしたくない理由が他にもある。


「結局、あの青騎士は偽者――青騎士人気に便乗した勢力だったか」


 別の案件を調べていた橿原隼鷹は、今回の青騎士騒動を他人事とは見ていなかった。過去に同じような事件で炎上を体験した自分として――青騎士騒動は以前のデジャブを見ているようでもあったのである。秋葉原だとこうした事件は日常茶飯事と言うか、思い当たる部分が多すぎるのも理由かもしれないが。


「同じような案件が日本中で起きれば、それこそカタストロフに発展する可能性も高い――」


 草加市の件が大きくなれば、それこそ観光資源的な意味でも風前のともしびとなる。だからこそ、萌えコンテンツに代表されるようなコンテンツをふるさと納税に利用しようと言う自治体がなかったのだろう。


 過去には一部の都道府県で実験的に利用されたケースがあるのだが、それはあくまでも単発や継続したとしても長い期間ではない。むしろ、草加市のARゲームを利用した一例は1年以上は続いているだろう。別の自治体は、草加市のやり方をミニ独立国を思わせるような――と考えている。乱立すれば、それこそ――と。


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