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ARゲームに挑む我侭姫とプレイヤーたち-不正破壊者の我侭姫-  作者: 桜崎あかり
ステージ2

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エピソード29.5

・2022年6月28日付

行間調整版へ変更

 7月19日、学生にとっては夏休みに突入するような時期である。それでも、高校生がARゲームに手を出すかと言われると――そうとは限らない。ARゲームに年齢制限のない機種があったとしても、動画上で人気のあるアーケードリバースやARパルクール等は年齢制限が存在していた。


 こうした年齢制限の理由は『危険なアクロバットで重大な事故に繋がらないように』と言う意味があるのだが、どう考えても炎上案件になるのを懸念しての過剰制限に思える。実際、そうした認識をしていた人間はネット上にも多く存在するのだが――。


【グロテスクな表現やエロ表現がないのに、18禁と言うのはおかしくないか?】


【事故防止と言う意味であれば、アスリート等のスポーツ経験のないプレイヤーに関して制限をかけるべきだ】


【それこそ、一般人には手の届かないゲームになってしまう。おそらくは、それを避けるための処置だろう】


【しかし、ARゲームにグロ表現を使っているような作品は存在しない。一体、どのような意図で――】


【今、何と言った?】


【エロ表現であれば、セクシーな衣装のキャラを作る事が出来たり、セクシーなコスプレのプレイヤーが実際にいる】


【だが、グロ表現はどうだ? 過度な欠損表現がないだけならばユーザーへの配慮で通じる。しかし、グロ系ゲームでもない作品でも出血は多かれ少なかれ――】


 ARゲームが本当の意味でゲームを超える物ではなく、エンタメとしてのゲームを求めている意味――。それは、リアルな表現にこだわり過ぎて虚構と現実を区別できなくなる事を防止する為、あえて流血等の描写を避けている事だったのである。ふるさと納税の返礼品としての報告書でも、その辺りには触れているのだが――読み飛ばされている印象が高い。



 正午、アンテナショップへ姿を見せた人物がいた。それは以外にもビスマルクだった。何時もの私服とは違い、今回に限って言えば紐水着にも近いのだが、素肌に水着ではなくARインナースーツに水着である。さすがに露出度が高い物では警察に捕まる可能性もあったのだろうか?


 彼女がアンテナショップに入店する事はなく、店頭にあるセンターモニターで足を止めた。下に表示されているニューステロップではなく――流れている中継動画の方が気になった様子である。


「あれが、ヴィスマルク――か」


 彼女も自分と似た名前を持つヴィスマルクには興味があった。実際、この数日間で最も人気を集めているプレイヤーでもある。彼女の動きは、決してプロゲーマーのようなスキルや実況者の様なパフォーマンスで勝っている訳ではない。プレイスタイルは明らかに別の何かを引き寄せるような物である。さすがにセクシーさで釣っている訳ではないのだが。


「あの動きは――そう言う事か」


 試合の結果を見る前に、ビスマルクはその場を去る。途中までチェックしつつも、立ち去ったのはなぜなのか? それは対戦相手がチートプレイヤーの典型的なパターンだったのかもしれない。ビスマルクはチートプレイヤーに深く興味がある訳ではないので――この反応なのである。



 午後1時、アンテナショップのプレイフィールド内、アルストロメリアが既にバトルを始めていた。既にお昼を食べ終えてから3戦程――結果は1勝しかしていない。負け続けている原因は自分でも分かっている。


「何もかもチートを使ってくるプレイヤーの責任とするのは簡単だ。しかし、そればかりを負けの理由にすれば――熱意さえも冷めてしまう」


 チートプレイヤーがARゲームを荒らしているのはニュースでも知れ渡ることとなったが、本当にそればかりが原因なのか? 自分が負け続ける原因は、もっと違う所にあると――彼女は思い始めていた。チートプレイヤーが全て悪いと決めつけるのは、ARゲームをつまらなくしてしまうと。


 自分が努力をして技術を磨かなければ、その熱意は完全に冷めてしまうだろう。だからこそ――彼女は熱意のあるうちに、ARゲームを始めようと思ったのだ。


「私は――ARゲームがどのような進化をするのか、見届けたい!」


 アルストロメリアがARゲームを始めた理由、それは草加市が全面バックアップする町おこしがどのような展開を迎えるのか――それを見極めるためだ。それが途中で『チートプレイヤーが荒らしている』と言う理由で止めるわけにはいかない。ふるさと納税の一件もあるだろう。だからこそ、せっかくの投資を無駄にする訳にはいかないのだ。全ては――それを見届けてからでも遅くはない。


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