エピソード26.5
・2022年6月27日付
調整版に変更
午後1時、雨が若干弱くなっていくのがすぐに分かった。空を見ると、雲が減っているのが――明らかである。しかし、道路には水たまりが目立っている為か一部のARゲームは中止のままだ。
「天気によってARゲームがプレイできなくなるのも――色々と問題があるのだろうか」
白い提督を思わせる服装の橿原隼鷹、彼は秋葉原にある事務所の窓から歩行者天国を眺めている。歩行者天国ではARゲームが晴天時に行われており、中でも歩行者天国に展開されたリングでの対戦格闘は評判がいい。こちらに関しては定期開催の為、突然の雨で中止になった訳ではないようだ。むしろ、不定期開催系のARゲームが打撃を受けた気配である。
「全天候対応型のARゲームを開発するのが今後の課題と言うべきか? あるいは――」
橿原は全天候型のARゲームが何を連想するのかある程度の予想が出来ていた。ウォーゲーム系のジャンルが作られた場合、明らかな炎上案件となるのは明白である。
同時刻、別のアンテナショップでアーケードリバースのプレイ動画を見ていた人物がいた。彼女は普段の服ではなく、ARゲーム用のインナースーツを着用している。アスリートよりもアマゾネスを連想する筋肉がインナースーツを着用すると目立たないように見えるのだが――。
「なるほど――FPSをベースとしたARゲームと言う事か」
ふるさと納税の返礼品である活動報告書でも確認しているが、改めて実物を見るのでは驚き方が違う。報告書では文章説明等がメインで動画はごく少数程度――他の企業へ流出するのを避ける為という理由があっても、説明不足と一部の納税者に言われるのは仕方ない。
彼女が見ていた動画は、俗に言う一般プレイヤーのプレイ動画であり、有名実況者やランカーの出ているような物ではなかった。あまりにも自分のレベルよりも高い動画を見たとしても、その技術を使いこなす事は出来ないと考えているのかもしれない。
「武器に関しては特に制限はないという事は――」
アルストロメリアは、ARメットを装着しデータのカスタマイズを行う。メットを被らないとカスタマイズできないと言う物ではないのだが、この辺りは他のプレイヤーに見られるのを防止する役割があった。
彼女の目の前には現在のステータスではなく、装備している武器が表示されているのだが――。今は何もARウェポンを含めて持っていないので、画面には素手と表示されている。
《使用する武器を選択してください。使用不可の武器に関しては表示されません》
メッセージにある通り、アーケードリバースで使用できない武器は表示されていない。現状でアルストロメリアが持っている武器は10個ほどだが、その内の3つは対応していないようだ。
「遠距離武器は全て使用不可――となると、全て近距離か」
彼女が持ち合わせた武器でアーケードリバースで使えるのは全て近距離系だった。
【ビームチェーンソー:近距離】はチェーンソーの形状だが、長さは木を切るタイプの物とは違って短い。【バトルナックル:近距離】はカイザーナックルの大型版なのだが、動きが制限される。【ビームカタナ:近距離】に関してはある程度のスキルが必要になる武器で、初心者向けとは言えない。【ショートナイフ:中距離】は投げナイフである。ある程度の距離に対応できるが、使用回数に制限あり。0になると、武器チャージに時間がかかるので、これも初心者向けではなかった。
「投げナイフは一定の技術が必要だ。今の状況で使うべきではない」
ここまでの所持武器で使用できそうな物はないらしく、悩みの種は尽きなかった。
【キックブレード:近距離】
「キックブレードは、格闘スキルが必要だな。こちらも――万人向けと言えない」
そうなると、彼女に残された武器は一つしかなかった。
「やはり、パイルバンカーになるのか」
ARゲームでも対戦格闘以外ではマイナーに該当し、その威力は絶大だが――リスクも高いロマン武器。それが、パイルバンカーだった。実際、これは上級者向けであって初心者が扱うべきではないと言うプレイヤーもいるほどだ。
結局、彼女にはパイルバンカーしか選択肢はなかったので、武器の方はしぶしぶ決定した。アーマーの方はパイルバンカーに合わせるような形で重装甲になった。胸の部分は、若干巨乳と言う事もあって――ARアーマーが少ないのだが。




