エピソード26
・2022年6月27日付
調整版に変更
西暦2019年、ARゲームが様々な事件で風評被害を受ける事案が発生する。こうした案件に関しては、ネット炎上や芸能事務所が自分達のアイドルを宣伝する為の陰謀と言う者も存在し、それを示唆する書き込みがあるのが動かぬ証拠だ。一連の流れに関して、アカシックレコードに書かれた予言が現実化したという人物もいるかもしれない。ARゲームが炎上する事自体は、今に始まった事ではなく――過去にも繰り返されていた事がネット上のニュースで確認出来る。
しかし、そんなニュースがあったとしても――彼女はどうでもいいと一蹴するだろう。チートと言う名の犯罪を根絶する為、彼女はARゲームのフィールドを正常化する為に――あえて、ネット上の注目をこちらへと向けている可能性が高い。【不正破壊者の我侭姫】、それを誰が拡散したのかは不明だが、次第に広まって行くこととなった。
その証拠に――ネット上の動画では、彼女を【不正破壊者の我侭姫】と扱っている動画が多くなっている。これに関して、ARゲームの運営サイドが動画を削除する事はない。特に権利者が別にいるような映像や楽曲がないというのが、削除をせずに放置している理由だが――アイドル投資家としては黙っていられないだろう。
7月15日、この日は雨となった。ARゲームの一部では、雨天中止を知らせるインフォメーションがARゲーム専用アプリで告知されている。その一方で、雨天でも中止にならないジャンルも存在していた。さすがにレース系の中止はプレイヤーの安全第一が優先され、やむを得ないのだが――。小規模の雪程度でもサバゲの天候変化と割り切るようなサバゲやFPS関係、屋内メインのリズムゲーム等は雨でも中止にはならない。
「さすがに、こんな雨の中でチートを使えば――結果は見えているか」
バイクレースのARゲームを扱っているアンテナショップ前で、中止のインフォメーションを見ていたのはジークフリートである。彼はレースゲームに興味がある訳でなく、観戦するFPSゲームの近くにコーナーがあったので通りかかったにすぎない。
ARゲームには急激にパワーアップする、使えば1位は確実等とうたっているようなチートガジェットやチートアプリが横行している。このようなチートを使えば、ゲームエントリー前にチェックで失格になるケースが多い。その一方で、チェックを潜り抜けたプレイヤーがチートの力でランキングを荒らすケース等が後を絶たないのだ。こうした状況を運営側も放置せず、徹底的と言えるほどのチート対策を行っている。
不正プレイが横行すれば、それこそ国際スポーツ大会におけるドーピング等と同じような状況が――運営側には分かっていた。だからこそ、少々強引な手段にはなるものの、悪質なチートプレイヤーには賞金をかけているケースも存在しているのだが、これらは非常にまれなケースだ。
実際、そうした指名手配を行う前にチートプレイヤーを一掃する人物の存在が、最終手段を取る前に――と言う事かもしれない。ガーディアンの様な組織単位で動く人物もいれば、デンドロビウムに代表される個人で動く人物もいる。こうしたチートキラーの存在は、運営側も認めているのだが――あくまでも裏で協力体制を取っている事に関しては否定――と言うのは表向きと考えるネット住民もいるのだが、真相は不明だ。
あいにくの雨でも、アーケードリバースは中止にはなっていない。屋外フィールドは使用不可だが、屋内フィールドには問題がないようだ。しかし、屋内と屋外では使用出来るガジェットにも違いは出てくる。大型のロボットタイプガジェット等の屋内で動かせない物は使用不能――仕方ないと言えば、仕方がない。
それをチャンスにしてランキング荒らしをしているプレイヤーもいる訳だが――プレイスタイルすら制限してしまっては、ARゲームにおける自由度を制限してしまうので、そこまでは行っていないと言う。あくまでもガイドラインと言う物を設定しているが、それを守っている限りは自由にプレイは可能だと言う事だ。さすがにゲームバランスさえも壊すようなチートは――使った段階で処分が重い。それは当然と言えば当然だろう。そして、ARゲームの本当の目的とは――。
「――本当の目的、か」
秋葉原のガーディアン本部、見た目こそは二流企業と言うような外見だが――地下には相当な技術があるに違いない。そう思わせて、地下にあるのはARゲームの大型ガジェットを搭載したコンテナ、それにARウェポンと言う拡張現実映像の武器を収納したアタッシュケースもあった。これらの装備は秋葉原の同じようなARゲームで使用されている。つまり、秋葉原にもARゲームは存在していたのだ。
「ARゲームの目的は、日本のコンテンツ流通を正常化する為の物。それこそ、超有名アイドルの芸能事務所が行った超有名アイドル商法を根絶する為の――」
試作型と思われる大型ガジェットを見つめていた人物、それは白い提督を思わせる服装の橿原隼鷹だった。彼はアキバガーディアンという組織を立ち上げはしたが、それも出雲という人物に誘われての物である。彼にとっては――ガーディアンと言うのは重圧なのだろうか?
「秋葉原のARゲームは、現状でプレイヤー人口が頭打ちになっている。運営側も対応しきれていないのが原因なのか――」
橿原は草加市の事例を何とか秋葉原で生かせないか――そう考えていたのである。しかし、草加市のように役所が協力しているような事例と秋葉原を比較するのは不可能だ。それに――秋葉原のオタク文化もネット炎上等で数年前のような勢いがないのも、大きな痛手となっている。
「草加市の事例は、間違いなくコンテンツ流通を根本的に変える事が出来るかもしれない」
橿原が山口飛龍等に接触していた本当の理由、それは草加市が行うARゲームでの町おこしのノウハウを手に入れる事でもあった。アイドル投資家の情報等を手に入れるのは二の次、そうした情報は秋葉原でも入手出来るし――ネットで収集を行う事も可能だったのである。




