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ARゲームに挑む我侭姫とプレイヤーたち-不正破壊者の我侭姫-  作者: 桜崎あかり
ステージ1

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エピソード24

・2022年6月27日付

調整版に変更

 動画サイトに投稿された動画を見て、何かの違和感を感じていたのはスレイプニルというHNハンドルネームを名乗る人物だった。このHNは、身に付けているARガジェットからネット上のまとめサイト管理人が命名した物だが――本人は気に入ったらしく、そのまま使っている。スレイプニルが動画を見ていた場所、それはアンテナショップ内に併設されているチャージエリアと呼ばれるエリアだ。


 現実にある施設で例えると、バッテリー充電施設と言うよりもガソリンスタンドだろうか。ARガジェットはARアーマーの実体化に莫大な電力を消耗すると言う噂が存在する。それをまかなうため、太陽光パネルを大量に設置しているらしいが――その真相はネット上の噂や都市伝説として否定されていた。


 太陽光発電で草加市全体の電力を100%賄っているという話が拡散すれば、それこそ都道府県や政府単位で秘密を探ろうとするだろう。既に産業スパイや海外からの工作員が草加市に入っている噂もあるらしく、それ程にARガジェットの秘密は企業秘密にも匹敵する物とされていた。


「産業スパイも寄ってくるほどの技術――それをゲームとして発表した理由は何だ?」


 スレイプニルが懸念しているのは、ネット上でも疑問を持っている人物が出ている――ARガジェットに関しての事だ。使用されているAR技術は、魔法と言っても差し支えないような異常な技術力を持っており、SF等では説明できないのである。


 この技術があれば、ガイドラインで禁止されている大量破壊兵器や軍事転用――世界のトータルバランスを揺るがしかねない。当然のことだが、この技術は日本政府も掴んでいないと言うよりも――この真相を知っているのが一握りの人物である。


「ゲームとして発表する事で、軍事マーケットへ売り込む為のデータを集めるつもりなのか?」


 動画の内容とは、俗に言うバトルシーンのみを集めてMAD動画にした物である。その動画では、地球滅亡を思わせるような演出が存在するのだが――あくまでもネタと言う事で片づけていた。当たり前なのだが実際にARゲームでそこまでの物が存在するわけがない。草加市が協力しているアーケードリバースで行われていたとしたら、それこそ――国家転覆と言われる可能性が高いだろう。


「本当に、これをARゲームとした理由は――」


 色々と考えているうちにバッテリーの充電が完了し、別のエリアへ向かう事にした。



 午後3時50分、アルストロメリアが来店していたアンテナショップでは、ARアーマーのカスタマイズをしている彼女の姿があった。


「アーケードリバースでは、武器の使用は自由ですが――あまり動きが鈍くなりそうな武装は、敬遠されていますね」


 男性スタッフのアドバイスを受けながらも、アーマーのカスタマイズを続けていく。最終的にはARメットはフルフェイス型という頭部を保護するようなタイプを選んでいた。ARメットはフルフェイス型以外にもサングラス型や帽子タイプと言うのも存在するのだが、安全性が優先されるジャンルではフルフェイス型が人気である。


「メットはフルフェイスでないと、ダメなのですか?」


「フルフェイス以外でも問題はないでしょうが、安全を優先するという観点でフルフェイスを推奨しております」


「安全?」


「ARゲームは一種の体感ゲームに該当するのですが、振動などを含めてリアリティを求めるあまりに――」


「リアリティ等と引き換えに、危険が増した?」


「ジェットコースターでも事故が年に何回かあるように、ARゲームでも事故は起きています」


「事故って、報告書にあった?」


「あれで全てではないでしょう」


 2人の話は続く。スタッフは、時に身振りで表現したりする一幕もあるのだが――。そして、アルストロメリアは以前に予定されていたARゲーム保険に関して尋ねる。


「ARゲームには、安全にプレイ出来るように保険を予定しているという話が――」


 しかし、その噺を切りだした時にはスタッフの表情が深刻そうになった。まさか――保険は没になったのか? しかし、没にはなっていないという事は説明した上で――。


「アーケードリバース以外では、実装を見送りしたようなのです。こちらは草加市の肝いりと言う話ですが」


「任意保険も?」


「プレイ料金に含めるにしても、保険を課金サービスの一種と考えてしまう様なユーザーがいるのも事実で、それをきっかけにネット炎上が――」


 予想外過ぎるスタッフの回答に対し、アルストロメリアは頭を抱える。


「安全性は金で買えない――それは誰もが分かっているのに。それに、ARゲームはデスゲームではない。それを否定するような――」


 アルストロメリアもヒートアップして、スタッフに言うのだが――スタッフに言ったとしても運営に伝わるかは不透明である。結局、忘れて欲しいという事でスタッフに謝る事になった。


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