エピソード21
・2022年6月27日付
調整版に変更
7月14日、晴天の日曜日である。各所でイベントが行われている状況だが、草加市も負けず劣らずの盛況っぷりを見せていた。電車も満員と言う事もあり、竹ノ塚駅及び西新井駅発の特別シャトルバスが運行される程のレベルである。
この状況にテレビ局は驚き、生放送のバラエティー番組で取り上げようと取材申し込みをしたのだが、どれも断られたと言う。ネット上では取材NGは当たり前と言う雰囲気だったのだが――実際は違う可能性だってある。
ARゲームは売れなければサービス終了も避けられないのは事実だが、単純に人気が欲しいかと言われると、そうではない。一体、運営は何を考えているのだろうか――真相は運営が発表していないので、どのサイトでも憶測しかないのが現状だ。
午前12時30分、昼時と言う状況下なのだが――ある中継が話題となっている。
『アーケードリバースを見るときはアニメ的演出等の都合上、部屋を明るくして、画面から離れてからご覧ください』
『アーケードリバースはルールを守って、正しくプレイしましょう。違法プレイなどの不正行為はランカーにあこがれる子供達も見ています』
毎度恒例とも言えるようなテロップが表示された後、アーケードリバースのバトルフィールドが展開された。そこまでは――特に変わりがないので、話題となるような要素は何処なのか、そう疑問を持つ人物も多いだろう。
問題はバトル開始直後からだった。ある1人のプレイヤーが先行して他の相手プレイヤーを次々と撃破していく。その人物が北条高雄だと分かり、それがネット上で拡散になった事で――話題となったという気配だ。
彼女のプレイスタイル、それは率直に言えば『チートプレイヤー狩り』の一言で片づけられる訳がない。パワープレイと分析する人間もいれば、テクニック系と考えている人間もいた。つまり、相手のプレイスタイルに合わせて対応を変えているというのが分かりやすいのかもしれない。
【あのプレイで通じる物なのか?】
【さすがに普通のプレイヤー相手では通じないだろう。チートプレイヤーの心理を知っているからこそか】
【それにしても、ソロプレイ――】
【他の味方プレイヤーも高雄には指示を出していないだろう。明らかなソロプレイは推奨されていないが】
【しかし、チートプレイヤーも実質はソロじゃないのか?】
【向こうは利害の一致等で組んでいる可能性が高い。ランダムマッチングでは話が別になるが】
高雄のプレイにはソロプレイの疑惑もあった。アーケードリバースではソロプレイは禁止ではないが推奨されていない。マイナスポイントを導入して制限をかけようとしたが、ロケテストの段階で保留になったという話がある。結局、プレイヤーの自由度を縛るようなルールは加えるべきではないと言う結論が出た事で、ソロプレイ禁止はなしとなった。
今回の動画を見ていたビスマルクは、ある疑問を抱いていた。
「あれでは単純にネット炎上を誘発しているだけに思える――」
深刻そうな表情をしているのだがARメットを被っている事もあり、口元しか見えない。チートプレイヤー問題は様々なプレイヤーに影響を与えており、賞金をかけてチート狩りをすべきと言う声もネット上に拡散しているほどだ。しかし、そんな事をしても変わる事はないとビスマルクには分かっている。
「ARコンテンツを排除しようとしているような人間が、影で動いている可能性も――」
彼女が考えていたのは、過去の超有名アイドル絡みの事件等と同じ特定芸能事務所等の陰謀だった。さすがに芸能事務所が動く訳がないと否定的な声も少数ある中で、彼女はこの考えを持っていたのである。




