エピソード19
・2022年6月27日付
調整版に変更
デンドロビウム――彼女が遭遇したチートプレイヤーは、どう考えても救いようのないような思考を持っていた。ただし、犯罪者的な思考と言う訳ではなく――単純にゲームをプレイする上で『救いようがない』と言う意味である。
遭遇してきた人物の中には、彼女がチートを狩り続ける理由に『自分達と同類』という意味の言葉が投げられる事もあった。彼女の場合はチートプレイヤーの中には『止む得ない理由』や『事務所の圧力』と言った理由でチートに手を染めた人物もいる。
しかし、そうしたチートプレイヤーでもチートを一纏めにして狩るような人間もいたのは事実だ。
「チートとバランスブレイカーは違う――とも言っていた人間がいたが、君も同類か」
デンドロビウムの一言を聞き、山口飛龍はスカウトナイフをデンドロビウムに突きつけた。しかし、それを投げるような行動には出なかった。おそらくは――挑発ではなく、警告と言う意味があるのかもしれない。
「同類? バランスブレイカーは――」
デンドロビウムが何かに言及しようとしたが、その時には山口の姿はなかったと言う。アンテナショップの自動ドアが開くような音がしたので、おそらくは――。
その直後、ARガーディアンと思わしき人物がデンドロビウムを囲む。いつか見たようなデジャブだ。
「やはり偽物と言う事か? それとも――」
デンドロビウムは何かを呼び出そうと、ARガジェットの液晶モニターに表示されたアイコンにタッチしようとしている。その一方で、ガーディアンの方は偽物ではないらしい。デンドロビウムを捕まえようと動き出したと見るべきか。
「デンドロビウム――貴様を拘束する!」
そして、ある合図があったと同時にARフィールドが展開された。まさかの街中でのフィールド展開である。しかし、この街中と思われた場所――それは野外ARフィールドだったのだ。つまり、この場所へ誘導された事を意味しているのだが――彼女は気づいていないようなふりをしている。
「このバトルに手出しは無用だ!」
重装甲のガーディアンの一人が、周囲のギャラリーに忠告する。アーケードリバースでは乱入というシステムがローカルルールとして適用されている場所もあり、下手に乱入をされると作戦が失敗する恐れもあったからだ。
「手出し無用? それは――」
デンドロビウムは向こうの発言を待っていたかのように、左手の人差し指をモニターのアイコンに――。
「こちらの台詞だ!」
次の瞬間、デンドロビウムの正面にあった地面が開き、そこから何かのフレームが出現した。その正体はARガジェットの大型版とも言えるもので、ジャンルによってはARギアやARパンツアーなどと呼ばれる。デンドロビウムの目の前にあったのは、実はARギア専用のハッチだったのだ。扉が開くと同時にフレームが出現し、ARゲームのCGが貼り付けられていく――。
「馬鹿な――この街中で大型ガジェットを使うのか?」
ガーディアンの一人は声が震えていた。大型ガジェットはバイクにおける免許が必要であり、それがない場合は大型ガジェットは呼び出せない。仮にライセンスがあっても、フィールドの広さによっては活動場所に制限がかけられたりするのだが――。




