あの時の補足と――
・2022年7月9日付
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8月20日、大手ニュースサイトに接続できなくなった事件があった。まとめサイトでは、この件を一種の陰謀説等として取り上げる場所は――皆無と言ってもいい。
だからこそ――草加市では接続不能になったのではないか、と言う説もあったのだが、真相は不明のままである。
『――大手ニュースサイトが、全面的に接続しづらい状況が発生しており、メーカーでは対応に追われています』
朝のニュースでは、このように報道されているのだが――どのサイトかどうかは明言されていない。メーカーの名前を出すのをNGとしているテレビ局ではないのに、某サイトの様な言及もしていないのが気になる。ネット上のニュースを鵜呑みにして、フェイクニュースやネタ記事を堂々と報道してしまい、大失態を犯したテレビ局もあり――。
そう言った部分も踏まえてか、一部のARゲームプレイヤーやプロゲーマー、更にはガーディアンも信ぴょう性を疑った。しかし、途中からARゲーム用サーバーに接続できない箇所があると言う障害情報が発表された辺りで、フェイクニュースと疑う人間は減っている。あくまでも減っただけであり、0になった訳ではない。
「焦りを見せたら、おそらくは――競争に負けるだろう」
あるまとめサイトの管理人は、様々なニュースを調べているうちに――ある文章を発見した。
「これは――怪文章の類か?」
つぶやきサイトのあるリンクをたどり――辿り着いたサイト、そこに怪文章が存在している。しかも、それは単独ではなくて複数――サイト管理人も頭を痛めるレベルだ。
《ARゲームを町おこしとして推進しようとしている市議会議員が、ゲームメーカーに助言を行った》
《芸能事務所Eが所属アイドルをゲームに出演させようとゴリ押ししている》
《あるテレビ局が、芸能事務所Aとの連携を強化する為、ライバルアイドルに対して風評被害を与えるようなニュースをねつ造している》
どれも過去にあったようなニュースをバラバラにして、そこから創作でニュースを生み出しているレベルだ。ソースを問われれば、明らかにネットが炎上すると言っても過言ではない。
「何だ――これは――!?」
しばらくして、サイトとの接続が遮断された。ガーディアンによる規制の類ではなく、どうやらブービートラップにかかったと言えるだろうか?
この事件に関してはニュースサイトやまとめサイト等で取り上げられる事はなく、内密に処分されたという事がつぶやきサイトで明らかになる。しかし、本当に内密で処分されたのかと言うと――明確なソースはない。
同日午後、時計を若干気にしていたのはアイオワである。ARスーツは着ておらず、今回はオフと言う可能性もあるのだが――実は先客との待ち合わせだった。
「若干早く来すぎた――かな?」
センターモニターの方を見上げると、そこにはデンドロビウムと青騎士がマッチングしているプレイ中継が流れている。その様子は、別の意味でも無双と言う例えが正しいのだろうか? それとも、八つ当たりで青騎士と戦っているのか? 真意は本人にしか分からないので、とりあえずは時間つぶしで中継を見る事にした。
『未だに青騎士を名乗れば有名になれる――そう思う人間がいるのか』
彼女が撃破していた青騎士は、一連の騒動で現れた方ではないのがこの発言で分かった。確かに、その際に姿を見せた青騎士と比べると――プレイスキル等で数段劣るのは明らかだろう。
『ネットを炎上させれば自分が目立てる――そういう人間がいるからこそ、ネットで発言する人間全てがネット炎上に関係すると言うレッテルを貼られる』
次々と青騎士を撃破していく彼女の装備は、近接系武装に見えた。しかし――種類まで即座に出てくるような物ではない。おそらくは、最近になって実装されたばかりの新武装かもしれないが、アイオワにとっては若干どうでもいいことだ。
『ネットを炎上させ、それで誰かが命を落とせば――ネット炎上はリアルウォーと同意義となるだろう』
アイオワはデンドロビウムの発言を聞き、何を考えているのか――と思い始める。ネット炎上で人の命が――と言うのは、フィクション作品やWEB小説の話だろう。それがリアルで発生するなんて考えようがない。
『お前達は、軽はずみな考えでネットを炎上させ――リアルウォーを起こそうと言うのか!?』
この発言を聞き、アイオワは軽いプレッシャーを感じた。彼女の言葉の重みと言う訳ではなく、軽い気持ちでARゲームに挑み――プレイするのを辞めていくような人間は0人ではないだろう。しかし、デンドロビウムはゲームのプレイ人口が減るのは軽い気持ちでネットを炎上させようとする人間がいるから――と断言しているようだ。そして――そうした行為がリアルウォーとしてARゲームのフィールド上で展開される可能性――。
そう言っているようでもあったが、ここで時間切れとなる。時計を確認したアイオワは、もう少ししたらお昼にしようとも思っていたので――この辺りが頃合いなのだろう。
「デンドロビウム――彼女は、何を伝えようとしているのか? かなり、難解すぎる――」
それからしばらくして、アイオワはジャック・ザ・リッパーに遭遇する。ただし、彼女が今回のタイミングで会おうとしていたのは――。