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エピソード67-7

・2021年10月9日付

カクヨム移植に伴う修正。


ネジ曲げて⇒捻じ曲げて


・2022年7月11日付

行間調整版へ変更

 午後4時30分――運営側はレイドバトルの中止をせず、続行する事を発表した。これには沸き上がる観客もいる一方で、中止にして詳細を――と言う声もある。しかし、ネット炎上狙いのネットイナゴ等がいる限りは、どのような発表をしても真実を捻じ曲げて配信し、不当な利益を得る人物はいるだろう。そうしたアフィリエイト勢をチートと言及し、駆逐していたのが実はデンドロビウムと言うのも――あまり知られていないのだ。


 それから5分後、レイドバトル側も本格的に動き出す。例のガジェットが使われた形跡があるフィールドを特定したのだが――何と、1箇所だけだった。その1箇所が、デンドロビウムとアルストロメリアがマッチングした――あのフィールドなのである。


『どうやら、お前が真犯人――と言う事か!』


 該当するフィールドの外、ギャラリーにまぎれるような形ではなく別のスーパーと思わしき屋上駐車場でフィールドを見ている人物がいた。その人物に向かって叫ぶのは、ARメット姿の山口飛龍である。彼とは別に行動しているアキバガーディアン等もいたのだが、ほとんどがフェイクのエリアに突入していたという結果だ。


「この私がゲームを面白くしたと言うのに――全て芸能事務所の圧力や吸収合併、政府の陰謀とネット上では――」


 背広姿のプロデューサーに対し、山口は無言で突撃してARガジェットを装着――その右腕に装着された白銀のガントレット――。それこそ、究極のチートキラーとしてネット上で拡散していたアガートラームだった。複数が存在する話もあったが、それを完全再現した物は誰一人いない。これを完全再現された場合、それが意味するのは全てのチートを無力化する事――例え話では核兵器さえも瞬間消滅可能という話が飛び出すほど。


 しかし、この時代に核兵器は存在しないと断言可能だ。過去に研究されていたが、実現する前に技術が失われた――とも言われているが、定かではない。


『そう言うのを――炎上マーケティングと言うのだ。結局、芸能事務所AとJは――ARゲームをかき乱し――プレイヤー全てを芸能事務所AとJのファンに引き込もうとした』


 山口は語る。しかし、その表情は――厳しい物だろうか。


『全てが芸能事務所AとJによる手のひらの上と認識するだろう。お前達は、やりすぎたのだ――』


 しばらくして、アキバガーディアンが遅れて駆けつけ――一連の元凶とされる存在は、全てを片づけた。残るは、レイドバトルに現れたレイドボスを倒せば――!



 午後4時40分、あのレイドボスとの決着を付ける流れとなった。メンバーは厳選メンバーと言うよりも、アルストロメリアとデンドロビウム以外にも、ガングートやビスマルク等の上位争いをするメンバーばかりだ。このメンバーの中で戦おうと言うのであれば、相当のスキルがないと足手まとい以前の問題となる。


 このメンバーを見て、ある人物は悔しそうに見守るしかなかったと言う。その人物とは――ヴィスマルクだ。


「あのメンバーに食らいつくにしても――スキルが足りなさすぎる」


 レイドバトルには秘密裏に参加していたのだが、それでも上位ベスト20辺りに入るのがやっと。そのスキルで、あのメンバーに挑むのは――無謀とも言えるだろうか。しかも、レイドボスは攻略ウィキ等にも記載がないアンノウンでは、相手が悪い以前の問題かもしれない。



 ゲームスタートと同時に動きだしたのは、意外な事にビスマルクだった。彼女のカスタマイズは、遠距離タイプと言うよりは中距離に絞り込んでいる。遠隔操作系武装は効果がないと考え、アサルトライフルをメインとした武装を装備していた。瀬川アスナも近接武器をメインにしているが、考えとしてはビスマルクと同じである。


 あのレイドボスは遠距離や超遠距離を主軸にした武装をメインにしている――と。それが出現している全てのボスに当てはまる訳ではないのだが、近距離系武器や重装甲のアーマーは確認出来ないので――そう言う感じなのかもしれない。ゲームフィールドに火薬のにおいが全く感じられないのは――ARゲームでも再現しきれない部分があると言う事を意味している。下手ににおいや痛み、それこそ全ての間隔をARゲームで再現可能だったら――それこそリアルウォー待ったなしだろう。


「なるほど――そう言う事か」


 ビスマルクはレイドボスの動きを――既に把握していた。アーケードリバースで見せるような動きではない事に違和感を感じていたのだが、やはりというかFPSゲームのパターンである。しかも、この動きは自分がFPSゲームで対戦した事のある人物の動きをトレースしていると言ってもいい。



 1分が経過した辺りで、ガングートの方も動きに何かパターンを感じ始めている。自分でも見覚えある行動パターンだったが、確証を持てない事もあって様子を見ていたのだ。


「やはりというべきか――何とも、負けフラグを自分で立てるような行動パターンを取らせたものだ」


 過去のデータは過去のデータでしかなく、それがARゲームで通じるとは思えない。つまり――過去のデータを引っ張り出した所で、それを把握している人物ならば攻略も容易である。


 それでも物量で来られると――未熟なプレイヤーでは対処を誤った瞬間に、負けるだろう。結局は物量で来たとしても容易に撃破可能なメンバーが揃っている為、これは明らかにレイドボスを仕掛けた側の計算ミスだ。分身であるレイドボスコピーにはビスマルク、アイオワ、ジャック・ザ・リッパーが対応していく。


 彼女達も遠距離系よりは中距離系を使用しており、動きも制限されないようなガジェットを装備したのも大きい。


「本物のボスは1体だけ――それを狙えば、全ては終わるだろう。ライフ的な意味でも」


 ビスマルクの話を聞き、デンドロビウムとアルストロメリアはARバイザーでも点滅表示されているターゲットに向かって走り出す。本来であればホバー等の移動手段も使えるのかもしれないが、フィールドの狭さ等もあって――素早く動けても、それが利点にばかりなるとは考えにくかった。



 残り時間1分、やっとボスに到達した2人は――その形状に驚きつつも、急いで対処する必要性を感じている。


「相手の残りライフは――40%か」


 デンドロビウムは右腕に固定されたレールガンをターゲットに向けるが、疲れが出ているのか――少し腕が震えていた。


「それにしても、あのコスチュームは明らかに芸能事務所Aのアイドルのパクリ――と言われても違和感ないわね」


 アルストロメリアはデンドロビウムに同意を求めようとする。彼女の真意――それはコンテンツの正常化でもあるのだが。


「それを決めるのは、自分たちじゃない。それに――私はあなたの影でもなければ、姉妹とかでもないし」


 デンドロビウムの渾身とも言えるようなツッコミは――アルストロメリアにとって、ある意味でも頭を抱える物だった。アルストロメリアはデンドロビウムの本名と言うか、以前のHNを知っている。それに――彼女が何を理由で今回の行動を取ったのか。


「確かに。コンテンツ市場のこれからを決めるのも――自分が勝手に決めていい物じゃない。それは、分かっていたのに――」


 以前にガングートからも指摘され、それ以前にはネットで炎上した事もあり――そう言った状況をアルストロメリアは何度も体験していた。だからこそ――彼女はコンテンツ市場を変えるのは、一人だけでは不可能と判断し、ふるさと納税をきっかけとしたARゲームの町おこしに協力していく。


 しかし、ふるさと納税でやる事に疑問を持った一部勢力や様々な市民の声――それを受けて、アーケードリバースだけでなくARゲームその物も変化していく事になった。


「あのレイドボスは、ネットイナゴや一部の炎上マーケティング勢力が生み出した、賢者の石とも言えるような利益優先システム――それを形にしたラスボス」


 デンドロビウムはレールガンを後方に投げ捨てると、レールガンはCG演出で消滅する。その後に右手に持ったのは、チェーンソーブレードだった。これには、アルストロメリアも驚くが――。


「コンテンツ市場を取り戻す為にも――超有名アイドル商法は否定する! そして、全てを――」


 アルストロメリアも二刀流の小型チェーンソーブレードを出現させ、そちらへと持ち替えた。お互いに――武装は似たような物だが、ソレは全く気にしていないようである。まるで、2人ともARゲームを正常化する為に――息を合わせたかのような。


『コンテンツ市場を――取り戻す!!』


 2人の振り下ろしたチェーンソーブレードが、見事にレイドボスを真っ二つにする。チェーンソーと言えど、血が滝のように出たり、身体がバラバラになるような描写は全くない。


 さすがにグロシーンになるのは、ARゲーム側でもリアルすぎると避けられるのかもしれないが――真っ二つになった後は、普通にポリゴンが崩れ去るような消滅演出だった。


 これによって一連のプロトガジェットによるレイドボスは撃破した。そして、プレイ終了後のリザルトでは――わずかなスコアに2人は驚く事になる。



 9月30日、一連のレイドバトルは9月期としては終了を迎えた。その結果は――誰もが予想外とも言える展開になっている事に驚きの声があったと言う。


【まさかの展開になったな】


【アルストロメリアが逃げ切ると思ったが】


【自分もだ。やはり、あの時のスコアが影響したのかもしれない】


【デンドロビウム――最後まで、我侭姫と言える結果だったな】


【不正破壊者の我侭姫――そう言う事か】


 レイドバトルに勝利したのは、何とデンドロビウムだった。想定された勝利と言う訳ではなく、周囲からは意外な結末と言う事で捉えられている。


【しかし、これは9月期の結果だ。レイドバトルは10月もあると言う話だ】


【今度はイースポーツも視野に、色々とルールも整備されると言う話もある】


【ふるさと納税としてのARゲームは断念し、今度はクラウドファンディングに変更するそうだな】


 レイドバトルは10月以降も続く。今回のバトルは、一種の通過点なのだろう。ネットのつぶやきサイトを見て、他人の言う事は――他人の意見であり、それを自分の意見にしてしまうのも――ネット炎上の原因になると彼女は考えている。


「これですべてが終わった訳じゃないけど――」


 デンドロビウムはコーラを一口飲み、タブレット端末ではなくセンターモニターを確認する。


《マッチング準備が完了しました》


 モニターのメッセージを確認し、デンドロビウムはARアーマーを呼び出し――。その様子は特撮のヒーローを思わせるような物だが、ARアーマー自体がCG演出なので、この辺りは当然と言うべきか。


「ここからが――新たなゲームの始まりよ!」


 デンドロビウムの表情は、何かの付き物が取れたかのような――まるで、闇の呪縛から解放されたような印象を周囲に抱かせる。チートプレイヤーの存在が根絶される事は難しいかもしれないが、彼女は新たな道を進み始めた。


 それこそ、不正破壊者としての道ではなく、イースポーツとして生まれ変わろうとしているARゲームに関わる、プロゲーマーとして。


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