エピソード67-3
・2022年7月11日付
行間調整版へ変更
デンドロビウムも疑問に思ったハッキング――それは、数分後には解除された。そして、エントリーが出来た時にはアルストロメリアとジャック・ザ・リッパーのフィールドに入っていたと言う。レイドバトルに関してはデータ更新等の事情でプレイ不可能だったが――。
「アルストロメリア――これ以上のコンテンツ流通妨害は――」
フィールドBの敵を一掃、その直後にデンドロビウムはフィールドAへと向かう。フィールドAへ突入したデンドロビウムを待っていたのは、芸能事務所のアイドルだったのである。
「これが――リアルウォーとでもいうのか!」
即座にレーザーブレードを展開し、先へ急ごうとするデンドロビウムだったが――芸能事務所側は、それを妨害していた。ターゲットはアルストロメリアだと言うのは明白だが――。
デンドロビウムがフィールドAへ姿を見せた事に対し、驚いたのはアルストロメリアである。
「デンドロビウム――どうして?」
ジャックは別の意味でも驚きの声をあげた。最初にプレイヤーネームを確認はしたのだが、それでも本人とは考えにくかった経緯がある。
「デンドロビウム――このモードはレイドバトルではない。なのに、どうして?」
アルストロメリアは自分が起こした事もあって、自分で決着を付けようとしていた。だからこそ、デンドロビウムの出現は彼女にとっても想定外の出来事である。
一方で、アルストロメリアは更に姿を見せた別の乱入者には――気づいていない。プレイヤーネームを確認したが、瞬間的にしかチェックできていなかったのか――あるいはランクに気付かなかったのか? デンドロビウムの出現にも驚いた彼女にとっては、更なる乱入者も驚く事になるだろう。
「こちらとしても、お前達の自己満足や構ってちゃんに付きあってやれるほど――」
アルストロメリアが呼びだしたARガジェットは、銀色のパイルバンカーでだった。その形状は――何人かのギャラリーが震えている所を見ると、トラウマ的な武装なのだろうか?
「誰が構ってちゃんな物か――俺は芸能事務所Jの頂点に立つ予定のアイドルなんだぞ!」
どう考えても負けフラグな台詞を放った男性アイドルは、瞬時にして銀色のパイルバンカーに貫かれた。パイルに関してはビームパイルと言う事もあり、仮に貫かれたとしても身体的ダメージは一切ない。いわゆる一つのCG映像の部類であり、どう考えても痛みを感じるのは異常と言えるだろう。
これで痛みを感じるような人間がいるとすれば――ARゲームでの痛みを現実でも感じるような反応を持つ人間だけ。そのような人間がいるのか――と言われると、VRゲームでゲーム―バーが現実世界のゲームオーバーを意味するデスゲーム――それと同じ風に考えている人物しかいない。さすがに、ARゲームでデスゲームのルール等を持ち出すような人間はいない。デスゲームと言う概念自体が禁止されているのもあるのかもしれないが。
「典型的な負けフラグを立てるとは――お前達は、今まで何を見てきたというのか?」
さすがのアルストロメリアも、次々と向かってくるアイドルに対して――完全に呆れている。ゲーマーとしてのスキルが足りないのであれば、対策を考えてフォローする事も可能だだろう。しかし、彼らの場合はお決まりの負けフラグ発言をして――わざと負けているとしか思えない部分もあった。つまり――彼らは負けフラグと言う概念をネット上に拡散する為の、捨て駒とされているのである。
「こちらとしても、興が冷めた――芸能事務所が、そこまでの事をしてまでもコンテンツ市場を独占したいと言うのであれば――」
アルストロメリアは、彼らの行動に関して――本気でキレていた。しかし、それを表情に出してしまうと周囲のネットを炎上させようと言う勢力が動きだすだろう。
既にネット炎上勢力が暴れ出し、ARゲームがアレ出したタイミングから日常空間は非日常へと化した。もしかすると――新日常系と言う概念に該当するような世界が、現実化したのかもしれない。だからこそ――現実世界と非現実の物語やゲームの世界を融合する事には、反発の動きもあった。
【芸能事務所側も本気だな】
【チートガジェットでも使ったら、それこそ信用を失うか】
【どちらにしても――これで決着するだろう】
【泥沼になったら、それこそクールジャパンとか言えなくなる】
【政府も、別の分野で売りに出すにしても――ぱっとしない物ばかりだ】
【それこそ、芸能事務所AとJに全てをゆだねていたと言えるだろうな】
しかし、今はその部分に関して議論をしているような余裕はないだろう。ネット上でも同じような話題ばかりを続けても、議論は進まないしマンネリ化して飽きられてしまう可能性は高い。それは、アルストロメリアもデンドロビウムも同じはずだ。芸能事務所側は――マンネリだろうと確実にもうかるビジネスとして続けるつもりだが。
「ARゲームは本来であれば、誰でも楽しめるようなゲーム――それこそ日常だったはず」
「それを、リアルウォーや炎上マーケティング等と称して非日常化させたのは――芸能事務所に他ならない」
デンドロビウム、アルストロメリアの2人はシンクロ率が高いようなハモリでARゲームの本来の姿を訴える。
「だからこそ――その元凶になった事件を決着させなければ、先には進めない!」
「今こそ、ARゲームの全てを正して非日常空間から日常空間に戻す為にも――」
デンドロビウムはブラスターと一体化したチェーンソーを構え、アルストロメリアは蛇腹剣型のチェーンソーブレードを構えた。お互いに、使用しているARウェポンの交換だろうか? 予想以上にフィットしているようにも、ジャックには見えていたが――。
『私たちは、ネット炎上勢力に対して――徹底抗戦を宣言する!』
そして、2人は既に集結していたアイドルプレイヤー勢力に対して、突撃を仕掛ける。その結果として――ものの30秒に満たない時間で全ての勢力を片づけた。チェーンソーには神を倒すようなネット上の噂があったが、それが事実と言う事を証明したと言えるだろう。