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エピソード67-2

・2022年7月11日付

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 アルストロメリアの騒動はフィールド外と言うよりも、屋外フィールドで展開されていた。その為に、怪我人が続出している情報は出ていない。そこにだけは感謝をするべきなのだろうか?


「何て事だ――」


 センターモニターのアナウンスを見たデンドロビウムは、閉口するしかない。他のプレイヤーも似たような反応をしているが、影響を受けている機種がアーケードリバースだけなので――他のゲームをプレイすればいいという表情だ。


《ただいま、ハッキング被害を確認する為にアーケードリバースのエントリーを一時休止しております。復旧までしばらくお待ちください――》


 まさかのハッキングである。このタイミングで、こうした騒動を起こすのはネット炎上勢力と言いたいが、彼らにARゲームへのハッキングが可能なクラッカーがいるのか? ARゲームでは数人のホワイトハッカーを初めとして――セキュリティの厳重さはネットでも有名なハッキング集団も舌を巻くほどのレベルと言われていた。そのレベルを超えたハッキングが行われたという事は、もはや国家レベルのシステムをハッキングするのと同義である。


「これほどのハッキングを出来るのは――?」


 デンドロビウムも疑問に思う。これほどのハッキングが出来るのであれば、スパコン等をハッキングするなり海外のサーバーから情報を流出させるのも朝飯前だ。そちらをハッキングした方が、ニュースとしては大きく取り上げられる。だからこそ、今回の件には疑問に思う個所が多かった。何故、ピンポイントでアーケードリバースを狙うのか?



 ARゲームフィールドの屋外エリア、そこではアルストロメリアとジャック・ザ・リッパーが周囲を囲んでいたプレイヤーを無力化している。しかし、次々と増援が駆けつけてくるような状態は――思わず2人も言葉を失っていた。一方で相手プレイヤー側は、披露している2人を見てチャンスと考えているようだが――何故、タイミング良くARフィールドが展開された事は気にしていない。


 ARフィールドが展開されたという事は、ARゲームが開始された事を意味している。つまり――何者かがARゲームを始めたと言ってもいい。ARガジェットやARウェポンを初めとしたARゲーム用のガジェットは、本来であればARフィールドが展開されていないと動作不能である。フィールド発生時に拡散するエネルギー的な何かを吸収している説もあるが、ARゲームは太陽光パネル等で集められたソーラーエネルギーで運用されていると言ってもいいだろう。


「こっちとしても、これ以上暴れられて――芸能事務所が解散になるのは避けたいからな」


 まさか、芸能事務所Aだけでなく芸能事務所Jのジュニアアイドルや他の芸能事務所のアイドルまで――加勢にやってきていた。これはドラマの収録ではないのは明らかなのだが、周囲のギャラリーはアイドル目当ての人物が一切ない。芸能事務所側にとっては、完全なアウェーと言ってもいいだろうか。


「周囲にファンがいて、やられた際に悲鳴でもあげられたら――それこそ、別のまとめサイトが炎上するように仕向けるだろうな」


 更に別の芸能事務所の男性アイドルも、他のアイドルと同じ認識である。芸能事務所Aのアイドルは、別の目的なのかもしれないが――この際はどうでもいい。とにかく、アルストロメリアを倒せば――全てが終わるのだから。


「芸能事務所の為、未来永劫に語り継がれる神話の為に――」


 どう考えてもモブ悪役と言う様な迂闊な発言をし、ジャックに止めを刺そうとした人物がいた。その人物を他のアイドルが止めようとしても――全てが遅かったのである。



 次の瞬間、乱入者の出現を示すアラートが鳴り響き、更には乱入者出現のインフォメーションもARメットやARガジェットに表示される。


《乱入者が現れました。ブルーチームの所属となります》


 レッドチームである芸能事務所連合としては、歓迎出来ない状況だろう。しかも、こちらは増援があるとはいえ――ゲームのプレイ経験が豊富な人物は皆無に等しい。


「2人とはいえ、簡単に攻略できると思ったが――」


 チートを使えば、風評被害的にも大変な事になるだろう。それを踏まえてのノーマルガジェットで参戦したのは、別の意味でも裏目に出る。チートガジェットならば、乱入者が誰であろうと倒せる確率が上がるのは当然だ。ARゲーム未経験者が多い状況を踏まえれば、尚更だろう。


 乱入してきた人物とは――芸能事務所側からすれば、遭遇したくない相手だったのである。


「ネット上でアルストロメリアがいると聞いていたが――ここまでの展開になっているとはな!」


 ARスーツに白銀のアーマーは――見覚えがあった。最近になってレイドバトルで装備を変えている話はあったのだが――。


「撃て! ターゲットは、あの白銀の――」


 そうはさせない――と乱入者が先手を取り、用意したガジェットはシールドビットである。あまりにも汎用性が高い影響か、レイドバトルでは使用率が高い事もあって――乱入者もかなり使いこんでいる状況だった。シールドビットの形状は、どちらかと言うとチェーンソーをSFっぽくデザインしたような物であり、他の人物が使う様な物とは違う。


「芸能事務所同士で椅子取りゲームとは――馬鹿馬鹿しい。これでは、海外コンテンツに挑む前に負けを認めているような物だ」


 白銀のARメットのバイザーをオープンし、素顔を見せた人物――それは、何とガングートだった。


「馬鹿な――あの地下アイドルグループの――!」


 当然だが、芸能事務所のアイドルはガングートではなく彼女の元々の名前に関して言及しようとするのだが――それを言わせる前に、容赦なく潰していく。迂闊な発言は即座に負けフラグとなるのは、ARゲームでは都市伝説とされているのだが――。ガングートはシールドビット以外では、アサルトライフルで応戦する。しかし、彼女はアルストロメリアやジャックの方を振り向く事はしない。向こうに気を取られて撃破されるのは得策ではない――そう考えているからだ。



 屋外フィールドのフィールドAでアルストロメリア、ジャック・ザ・リッパー、ガングートが展開している中――屋外フィールドBでは、別の勢力がデンドロビウムと戦っていた。


「貴様たちの遊戯に付きあっている暇はない」


 デンドロビウムは大型のビーム系の大型ライフルで、別勢力を一発で黙らせる。その勢力の正体は、動画投稿者でも有名な人物だったのだが――チートを使っていた事で、様々な悪行が判明し――引退を賭けてARゲームに参戦している人物でもあった。しかし、彼らではデンドロビウムに挑むには――強い意志が足りなかったのである。


 彼女に勝とうと言うのであれば、アーケードリバースに対する情熱を見せなければ――勝てないのは明白だ。単純に『目立ちたい』や『大金を得たい』のような薄っぺらい欲望では――デンドロビウムに勝つなど事実上の不可能である。


「薄っぺらい欲望が影響し、炎上したゲームをいくつも見てきた。これ以上は――炎上案件を増やさせない!」


 彼女は単純な怒りで戦っている訳ではない。怒りや憎しみで戦えば、それは悲劇を生み出すだけである。それが原因で、過去には色々なゲームでトラブルに直面し――内面的にも傷ついてきた。これ以上の悲劇の連鎖は起こさせない――と言う一方で、ARゲームは純粋に楽しむ為のゲームであり、リアルウォーを起こす為の道具でもない。


「アルストロメリア――これ以上のコンテンツ流通妨害は――」


 フィールドBの敵を一掃したのを確認し、デンドロビウムはフィールドAへと向かう。その目的は――アルストロメリア、ただ一人だ。


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