エピソード66
・2022年7月11日付
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9月16日、デンドロビウムは――あるニュースサイトの記事を目撃する。
「チートがはびこるようなゲーム業界にしたのは――そっちではないだろう」
口調では分かりづらいが、その心中はパソコンのモニターを殴り飛ばしたい程の怒りであふれているのかもしれない。そのニュースサイトの記事では、ゲーム業界のチートをメーカーの不祥事という言葉で片付けている。該当の記事はまとめサイト経由でもなければ、フェイクニュースでもない。大手ニュースサイトの記事だった。ただし、書いたのはニュースサイトの記者ではなく個人の投稿による物――そこが唯一の違いだろうか?
そのニュースを投稿した人物の名称を見ても見当はつかないが、悪質なユーザー等によるステマ投稿は禁止している関係で――信ぴょう性はあるのだろう。しかし、それが本当に信用出来る記事なのかどうかを判断するのは、あくまでもミューすを見たユーザー自身にゆだねられている。
【このニュースは、さすがに信用できない】
【芸能事務所が信用回復の為の切り札として、ニュースサイトを買収したのか?】
【ニュースサイト場が買収されたとしたら、プレスリリースくらいは出すだろう。唐突に買収された事は考えられない】
【偽サイトにすり替えたとか?】
【ウイルスを拡散するサイトにすり替えたという路線ならば、あり得なくはないが――】
ニュースの内容には信用できるような物がない――明らかにネット炎上が目的なのか、芸能事務所が仕組んだハニートラップと言う考えもあるらしい。そうした疑心暗鬼が、ある意味でも記事をアップした人物の狙いだとしたら――?
「この記事が、このタイミングで公開された事――どう考えても、何かの狙いがあるとしか思えない」
デンドロビウムは思う部分もあるのだが、その狙いが何かは予測出来なかった。現状で思いつくのはレイドバトルの物理中止を狙ったフェイクニュースなのだが、サイトがサイトなのでフェイクの路線は難しい。このニュースを投稿したのは個人ユーザーと言う事も――デンドロビウムが意図を予測できない原因でもある。
エンドレスで悲劇が繰り返され、それによってアフィリエイト収入を得ているような人物がいたとしたら――? 我々はコンテンツ業界に関して、改めて考え直さなくてはいけないだろう。コンテンツの流通等を含めた全体的な意味でも。このニュースは、ある意味でも怪文書と言われるかもしれないが――それで切り捨てているような芸能事務所は、ネット炎上騒動のマッチポンプを認めるような物と断言してもいい。
【出だしの段階で怪文書だろう?】
【ネット炎上をマッチポンプと言うのは、別のサイトや週刊誌でもあったが――】
【ここでいう『我々』と言う意味が分からない。上から目線か?】
【ネット炎上は、まとめサイトや裏掲示板を鵜呑みにしていて、それを絶対神と信じているような人物の戯言】
【芸能事務所の炎上合戦にゲームやアニメ、漫画等のコンテンツを巻き込むな!】
ネット上では、こうした反応をする人物が出てくる事は百も承知だ。だからこそ――我々は一連の事件を『黒歴史』と切り捨てる事は簡単だが、そこからコンテンツ市場を変えるきっかけを生み出す事を提案したい。
【提案とか言って、規制法案か?】
【馬鹿にするのもいい加減にしろ!】
【結局、芸能事務所AかJから莫大な金をもらっているのだろう? 動画投稿者の炎上案件でも金が全てと言う様な具合で――】
こういう人種もいるかもしれない。非難を行うのは大いに結構――逆に歓迎しよう。だからこそ、今のコンテンツが置かれている立場を理解するべきなのだ。
【結局は二次創作否定勢力か。夢小説や腐向けを根絶する為に――二次創作を根絶し、一次創作こそ全てと断言する】
【歌い手や実況者の夢小説をきっかけに、全ての二次創作をナマモノと決定つけ、捜索活動をするのであれば一次創作のみと言う法案を――】
【一次創作こそ全て――結局、一連のネット炎上も一次創作を推奨する為に芸能事務所を炎上させたのか?】
こうした解釈をするようなつぶやきユーザーもいるだろう。しかし、二次創作の動画を削除するのは――権利侵害が明らかな物に限定される。この議論を今更行うのも不毛な炎上を誘発し、我々の望むようなコンテンツ流通には程遠くなるだろう。我々が求める理想は――二次創作以上に支持を得られるような一次創作を生み出し、それに対価が得られるような環境を生み出す事にある。
一連の芸能事務所が関係した誹謗中傷合戦、更には様々なサイトにおける炎上事件も芸能事務所AとJによる物と判明した。しかし、これらが事実なのかどうかは警察の操作などで明らかになって行くだろう。 その上で我々は今回の事件を生み出した真犯人は何者なのか――それを考えていきたい。海外のコンテンツ関係の会社が介入した路線、ライバル会社が潰し合いを誘導する為――これではネット上で言われているようなWeb小説のネタにしかならないだろう。
特に大きなニュースのない芸能事務所や芸能人が構って欲しいからと炎上させた――とも考えられない。逆に不倫のニュース等の方が記者が詰まる可能性が高い為、リスクが高くて博打は打てないのが正しいか。では、本当の意味で犯人は誰なのか? ここまで見てアルストロメリアだと断言するのは――フェイクニュースでネット炎上を誘発させてしまう愚かなユーザーのすることだ。
最低でも自分は、今回の犯人がアルストロメリアとは思っていない。だからと言って、なりきりを行っているユーザーとも違う。仮になりきりのアカウントを複数動かしているユーザーだったら、営業妨害で逮捕されて莫大な賠償金を払う羽目となる。そうした騒動に発展せず、草加市内で完結している事に違和感を持たなかったのか?
今回の草加市のケースは、ARゲーム課及び草加市が手を組んで誕生した物と言える。ARゲームのルールさえ守っていれば、何も言及される事はなかった。それをおかしいと思わなかったのか? それこそディストピア的な世界と――疑問に思わなかったのか?
ネット炎上とコンテンツ流通、それらが表裏一体となっているのは明白だ。人は文明の利器を得た事により――それを利用する場を求めてきたと言えるかもしれない。
争いの歴史は否定しない。一方で、人の命を奪う様な争いからは脱却する必要があるのだ。命を軽視するような――それこそデスゲームと呼ばれる戦争は終わったと明言出来る世界、それを我々は求めている。それを妨害しているのは、明らかにチートと言うARゲームの中でもバグ以上に懸念すべき項目を放置したゲームメーカーだろう。そのチートを使い、ARゲームを荒らしたのはプレイヤーかもしれない。しかし、対策は出来た筈だ。ちゃんと対策をしたメーカーもある一方で、そのチートをビジネスに利用しようとした人物も出現した流れも生まれている。
ゲームメーカー全てが悪い訳ではないが――このままでは風評被害としてもゲームメーカー全てがチートビジネスと言う犯罪を生み出したと言われるだろう。だからこそ――我々はコンテンツビジネスを変える為にも、新たなガイドラインの強化を必要としているのだ。
この記事を書いた人物、その名前を見たデンドロビウムが怒るのは無理もなかった。書いた人物の名前は、以前にも聞いた事のある人物だったからである。
仮に名義を借りて書いたとしても、やる事のスケールが違いすぎる――と言ってもいい。だからこそ――デンドロビウムは冷静でいようとしても、怒りがこみ上げてくるのだ。
「キサラギ――このタイミングで、お前達が言うのか?」
その記事を書いたのはキサラギのスタッフと書かれていたが、人物名は偽名だろう。これを偽名と明言するのもアレかもしれない。ネット上でも偽名ではなく本気で本人と認識し、まとめサイトを立ち上げている人物もいるからだ。単純ないたずらや悪目立ちとしても、たちが悪すぎるレベルで、この名前を使うべきではない名前なのは間違いないだろう。
「それに――この名前は、どう考えてもなりきりと考えたくもなる」
そこに書かれていたのは、キサラギスタッフという肩書と――アルストロメリアと言うHNだった。




