エピソード65-5
・2022年7月11日付
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デンドロビウムが発見したプレイヤー、それはチート以前に卑怯な手段でネットを炎上させる炎上マーケティング勢力――。それこそ、自分がコンテンツを炎上させ、アフィリエイト収入を得る為にまとめサイトへ誘導などの手段でもうけようと言う勢力だ。こうしたやり方でもうけようと言う勢力こそ、芸能事務所AとJであり――賢者の石と呼ばれる超有名アイドル商法のノウハウを作り出した元凶である。
しかし、デンドロビウムが様子見を決め込み、別のターゲットを探そうとした矢先――彼はあっさりと強制ログアウトされる。
『先ほど、不正行為を行ったプレイヤーに関し――強制ログアウトしました。プレイに関しては――被害を受けた該当プレイヤーに補てんを当てる方向で、今のプレイを続行します』
緊急アナウンスと言うには若干落ち着いた声のアナウンスが流れた事に――デンドロビウムは違和感を持った。これも最初から仕組まれていたのではないか――アルストロメリアがレイドバトル前に仕組んでいたとされている一連の事件――帥ら絡みなのでは?
一部のゲーマーも、今回の手際の良さには違和感を持った。しかし、そこへツッコミを入れようとしたら、それこそ先ほどの炎上勢力と同じになる。そう考え、誰もが今の段階では通報等を行っていない。レイドバトルが止まる事の方を問題視している可能性が高いだろう。
レイドバトルは1分ほど、先ほどのアナウンスで時間が停止された。しかし、わずかな時間でプレイヤーが休めるとは思えない。ARゲームではわずかな小休止でもあれば、そこでスタミナを回復させるチャンスは存在する。スポーツ系では1分でも休止時間があれば大きいのだが――さすがに、ARリズムゲーム系や集中力の途切れる事が致命的なジャンルは、この1分間で水を差される事にもつながるだろう。
「ターゲットの方も動きを止めている。本当に時間が止まっていたようだな」
「しかし、あのプレイヤーは何をしようとしていたのか?」
「さすがに、それは分からないだろう。しかし、有名プレイヤーや実況者、歌い手等を物理襲撃するような過激思想や発言をする人間は0ではない」
「そうした考えがコンテンツ市場で大規模テロを行い、芸能事務所AとJのアイドルだけしか存在を許さない市場を生み出す――」
「それが、ネット上で騒がれている賢者の石か」
「メディアなども芸能事務所AとJが買収し、国会も思うがまま――日本は芸能事務所AとJの支配国家と言ってもいい」
「それはディストピア的な?」
「ソレはあり得ないだろう。あくまでも、その思想はフィクションであり、夢小説勢やフジョシ勢力がコンテンツ炎上に利用しているだけだろう? あるいはアンチ勢力の炎上手段――」
中断中にも様々な発言をするプレイヤーもいたのだが、その発言にデンドロビウムは一切かかわらない。下手に関与すれば、それこそ――同じ事を繰り返しかねなかったからだ。
レイドバトルが再開し、大きな動きを見せたのはデンドロビウムだった。
「これを試す時か――」
デンドロビウムが背中のバックパックユニットから展開した物、それはシールドビットの様なものではない。シールドが分離したのは同じだが、それを左腕に装着――それと同時にビームブレードが展開されたのだ。ただし、このビームブレードは高速で振動しており、ソニックブレードと言った方が早いだろうか?
高速振動したブレードは、目の前に現れたバイクユニットの装甲を一発で切り裂き、瞬時に消滅させた。その後も次々と撃破していき――気が付くと、デンドロビウムがリアルチートを思わせるような無双展開でレイドボスを一掃していたのである。
ただし、このソニックブレードはチート武装ではない。公認の武装と言うよりは――カスタマイズ武装と言うべきか?
「たった一つの武器で、あれだけの無双展開とは――」
ARメットのバイザーをオフにして観戦していた、山口飛龍は別の意味でも驚く。武器性能の優劣だけでARゲームを攻略できるのであれば、それはソシャゲでの強力な課金アイテムに手を出すような物だろうか?
しかし、そうした課金アイテムや廃課金だけでARゲームが攻略できるようであれば、あっさりと人気に陰りが見えるのは当然であり、草加市もふるさと納税を使ったりはしなかった。今となってはARゲーム課が何を考えてふるさと納税で運営しようと思ったのか――それは、どうでもいい話である。
「違うな。あれがデンドロビウムのチャレンジなのだろう」
山口はデンドロビウムの使用している武装が――実は能力がさほど高くない武装だと言う事を把握していた。しかし、周囲の使用していた武器は明らかにデンドロビウムよりも攻撃力が上の物もある。それなのに――彼女が無双で来たのは、どうしてか?
「どちらにしても、動画がアップされてからか――と思ったが、さすがに無理か」
山口が動画がアップされる可能性をその場で否定したのには理由がある。それは、中断された理由だろうか。これが流出すれば、ネット炎上の元になりかねない。
しかし、山口の予想は大きく外れ、動画は無事にアップされた。ただし――デンドロビウムの無双シーンのみが切り取られたような動画がピックアップニュースで紹介されるレベルだったが。全体像の動画もあるにはあったのだが、肝心の中断シーンは録画システムも止まっている事を理由に、該当箇所が切り取られていたと言う。
【あのシーンがない】
【中断に関しては、停電の様な物と同じ扱いと聞く。録画システムも動かないだろうな】
【録画システムは意図的に切られたのでは?】
【意図的?】
【中断中の会話で、芸能事務所AとJのCDを宣伝している発言があったと聞く】
【それ以外にも芸能事務所AとJを神と称したり――禁止行為があったのも理由だろうな】
ネット上のつぶやきでは、一連の中断個所の詳細もぼかされている気配が感じたれた。一連のタイムラインを見れば、まとめサイトや一部の芸能事務所が想定したシナリオに書きかえられたのは一目瞭然だろう。
「どちらにしても――あの勢力が行おうとしている事の全貌を、表面化させるつもりなのか」
ARゲーム課のスタッフも、今回の一件に関しては黙ってもいられない状況だった。ふるさと納税は、芸能事務所からの進言があったというフェイクニュースが拡散しているほどなので、スタッフも火消しに追われている。実際にふるさと納税を適用した理由は公共事業に絡む物と言う事にしたのだが、それで通せるとも思えない。やはり、ARゲームのガイドライン変更は――時期尚早だったのか?
『あの勢力が芸能事務所AとJに便乗しようとした、地下アイドルの芸能事務所と言う説もフェイクニュースで拡散しているほどだ――意地でも知られたくないのだろう?』
別のサイトを見ていた鹿沼零も似たような事を考える。仮に自分がアルストロメリアと同じような考えをしたとしたら、本当に潰そうと思う勢力は――。




