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ARゲームに挑む我侭姫とプレイヤーたち-不正破壊者の我侭姫-  作者: 桜崎あかり
ステージ1

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エピソード16

・2022年6月26日付

調整版に変更

 姑息な手を使ってジャック・ザ・リッパーを消そうとしたアイドル投資家は、その後に逮捕されたらしい。しかし、彼が何のために今回の事件を起こしたかに関してはニュースで報道される事はなかった。


 これに対して、ネット上では芸能事務所がテレビ局を買収しているという話が拡散、ネット上は文字通りの炎上状態となっている。


「自分さえ楽しめれば、他の人間は切り捨てる――まるで、一昔前のアニメやゲームなどにいた邪悪な人物を思わせる」


 一連の事件をネット上のまとめサイトで知ったのは橿原隼鷹だった。今日も彼は一連の真実を掴む為に秋葉原から草加へ――と言う展開になっているのだが、今回に限れば単独潜入ではない。同行している人物は、橿原と初対面なのだが――北千住で隣の席に座った際、ある話題を切りだされて――そこで意気投合した。


「ねぇ、君――我侭姫って知ってるかい?」


 やけにフランクだった。それに加え、上半身は防弾チョッキっぽい物を着ているが、チャックを下している。更に言えば、何故か横乳が見える位の巨乳と言うか――そんな気配もするだろう。髪は黒髪のぱっつんにセミロングだが――。


「わがままひめ?」


 橿原が答えると、チッチッチッ――という具合に人差し指を振る。確かに、そう答えてしまうのは仕方がないかもしれない事情もあるのだが。


「ネット上では、そうとも呼ばれているかもしれない。だけど、探しているのはそっちじゃない」


 彼女は橿原の隣に座った。そして、バッグから小型のタブレット端末を取り出し、それを橿原に見せる。そこで、橿原はようやく自分が何を言っていたのか把握したのだ。我侭姫、つまりデンドロビウムの事である。


「あまり人が乗っていないから言うけど、彼女の事を下手に探るのは――」


 彼女が何を言おうとしているのかは把握している。どうせ「しぬ」とか「暗殺される」とか――そう言った冗談交じりだろう、と。しかし、彼女が後に言ったのは更に別の事だった。


「――それが負けフラグに直結する」


 思わず橿原は吹きそうになってしまう。さすがに彼女の私物を汚す訳にもいかないと言う事で、こらえたのだが。



 電車は梅島駅に到着した。その頃には、人の数が一気に増えている印象がある。何処かの買い物帰りだろうか? あるいは学校帰りという可能性も高いのだが、学生服やセーラー服姿の学生は一握りである。そして、大量に電車に乗り込んだ人物には『ある共通点』があった。それが、SF作品のようなスーツを着用している人物――。


 このスーツはARスーツと言うARゲームをプレイするには欠かせないスーツだ。これでも汗の吸収率なども高いので、スポーツウェアとしても流用が可能である。唯一の難点は、身体のラインが見えてしまうので、女性の場合は下着を着用する必要性が高いだろうか。あるいは、まえばり等で隠すとか――。最新のスーツは、そうしたラインが見えないようなデザインになっているので、そちらを購入して着用するユーザーも多い。


「ARゲームが、ここまで一般人から白い目で見られるような状態から脱出するのに――苦労した物だ」


 橿原は一つ思い出話を――と言う様な切り出しで、隣の席にいた彼女に語ろうとした。しかし、彼女の方はスルーするかのように遠慮されたので、話すのを止めてしまったわけだが。



 電車が竹ノ塚駅に到着するころには、ARスーツ姿のプレイヤーが何人か新しく乗り込んでいた。


「さすがに、この人数は白い目で見られる状況が減ったとはいえ、やりすぎじゃないのか?」


 秋葉原でもコスプレイヤーが歩行者天国を歩いていたり、メイドが客引きをしていたりするが――ここまでの状況ではない。何人かはARスーツ姿なのだが、上着の下にARスーツが見える人物も含めれば、数十人規模かもしれない。竹ノ塚はARゲームで町おこしをしている訳ではないが、駅周辺に該当施設が多くある事で有名だ。それを踏まえれば、家へ帰る所と言うのも納得できるのだが――それだけで片づけるには多すぎる。橿原は、その辺りを踏まえた上で彼女の方に質問を投げかけた。そして、彼女が出した答えとは――。


「あるARゲームをプレイする為でしょ? やりすぎと言われると一理あるけど、彼らは早くプレイしたい。違う?」


 橿原が想定していたような答えと違う物が出た事に関して、もはやツッコミは無駄だと悟った。自分もARゲームに関わっている以上、覚悟をしている部分はあるのだが。


「そう言えば、名前を聞いてなかったな?」


「えっ?」


 橿原の一言に対し、彼女は真顔になったかのような驚きを見せた。周囲のARスーツを着た乗客も橿原の声を聞いて、そちらの方を振り向く人物もいたのだが――。


「まさか、名無しとかそこらのモブキャラ――という受け答えをするつもりだったのか?」


 さすがの橿原も、名無しで処理できるような状況ではない事に対し、こんな事を言った。


「顔パスで通らないの? 私、ARゲームのプレイヤーでも実況者と違う意味で有名なんだけど」


 彼女の方も橿原の回答には疑問を持った。有名実況者位であれば、ネットで調べれば分かるはずだ。ネットに疎くても、ニュースで散々聞くような名前に対しては聞き覚えがあってもおかしくない――と言う様な反応である。



 彼女の方は、谷塚駅の方で降りてしまったので――草加駅に到着するまでは橿原一人である。結局、彼女が名前を言う事はなかった。顔パスと言われても、思いつく名前がないので名無しとしか言いようがないのだが。


「埼玉県の景色も変わったというか、一時期は色々と言われていたのが嘘のようだ」


 名産や観光名所がゼロと言う訳ではないのだが、あまり観光と言われてもアピールできる個所がないのはネットでも有名だった。それは10年以上前とか、その辺りの話題とも言えるような物であり――今は状況が違っている。


 様々な街がアニメやゲームの舞台として出てきた事で、聖地巡礼をするファンが増えたためだ。一時期はテレビドラマのロケ地巡りと言うのもあったが――そちらよりは聖地巡礼が有名だろうか?


「今になっては、関東地方でも様々な場所でアニメやゲーム文化が問答無用で批判される事も減っている。それも、アカシックレコードの――」


 橿原がふと過去の思い出話を思い出した所で、電車は草加駅に到着した。駅から見えるビルには、さまざまなARゲームのCG映像が表示されている。これも一種の看板と言える物だが、どちらかと言うとAR画像を応用した技術なのかもしれない。こうした技術もアカシックレコードから発見された物が多いのだが――。


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