エピソード65-3
・2022年7月11日付
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アルストロメリアの動画は、探せば見つかるのだが――デンドロビウムの動画は発見しづらい状況に変わりない。大体の動画が一種のMADと呼ばれる形式の銅がなのも原因かもしれないが、それ以上に――自身がプレイ動画の公開を自動にしていない事もある。
アーケードリバースに限った話ではないが、ARゲームではプレイ後に自動公開と手動公開のどちらかに設定する必要があり、大体のプレイヤーが忘れがちだ。初期設定では手動で設定されており、自動公開にしているのはごく一部かもしれないだろうか。
【デンドロビウムのプレイ動画は――見つからないのか?】
【レイドバトル前の物ならば、いくつかは存在する】
【肝心なのはレイドバトルの物では?】
【レイドバトルの動画をアップ禁止とは言及されていない以上、動画がアップされていないのはおかしい】
【他のプレイヤー視点ならば、いくつかは存在するだろう】
【こちらが見たいのは、デンドロビウム視点だ】
【一体、デンドロビウムは何を考えているのか?】
つぶやきサイト上ではデンドロビウムが動画をアップしない事には理由があると推測される一方で、デンドロビウム視点の動画がない事に不満があった。どちらにしても、研究されるのを防止するという理由では動画を公開しないのも一つの手だ。現実問題として――アルストロメリアも同じように攻略不能ではないと証明され、首位から陥落したほどだから。
午後4時、デンドロビウムのレイドバトルを目撃する事になった人物がいた。それは、店舗の様子を見る為に覆面視察をしていた山口飛龍である。今回の彼は覆面視察なのだが、ARメットを装着していた。汎用のメットなので、人物が特定される事はないのだが。
『見た事のあるような有名プレイヤーも集まっているが――!?』
山口は、マッチングリストを見て驚きの声を出す。有名プレイヤーが数名いるのは分かっていたのだが、その中にしれっとデンドロビウムの名前が表示された時には――。
「デンドロビウムだと!?」
「まさかの展開だな」
「彼女のプレイを生で見られるのか!」
「これはすごい!」
「別の意味でも想定外だ。実況者のプレイよりも盛り上がるのは間違いない」
周囲のギャラリーも予想以上に盛り上がる。これが彼女にとってはプレッシャーにならないのか心配だが。山口も想定外のバトルを目撃できる事もあってか、視察の方は中断する事になった。
デンドロビウムの装備は、軽装アーマータイプ+バックパックという組み合わせだ。彼女の素顔が見える仕様なのは――今回も変わっていない。ARメットの着用も必須なステージでは、メットをしているようだが――。
彼女の武器はバックパックのブレードユニット、脚部のブレードアーマーといった具合か? 攻撃と防御をバランスよく振り分けるとすれば、シールドビットやシールドブレードと言ったガジェットをメインにするしかないだろう。しかし、このような装備は初心者~中級者向けの装備であり、上級者やランカーが使う装備とは思えない。
ランカーの装備も大体が攻撃力の比重を強めにした装備を使う事が多く、レイドバトルの様なイベントでは――攻撃力が低い装備は敬遠されがちだ。それでも今回の装備を使うのには、別の理由もあった。この装備が単純に汎用のブレードユニット及びブレードアーマーとは違うからである。
「今回のボスは――やはりな」
デンドロビウムにはボスの出現法則が分かっているようでもあった。だからこそ、今回のブレードユニットをチョイスしたのかもしれない。
ボスに関しては装甲車及びトライク、装甲バイクと言った部隊である。フィールドが道路メインと言う事もあり、今回のボスかもしれないが――他のプレイヤーには致命的だった。
「バイクだと? あのスピードは、こちらには不利だ」
「装甲車はスピードの割に、防御力が高い。面倒だな」
「装甲車だったら、火力は低い。しかし、トライクはガトリングをメイン武装としている」
「さすがにガトリングは厄介だ。戦車の副砲より火力が劣るものの、弾のスピードが速い」
「一撃離脱戦法が有利だが、重装甲ではそれも出来ない」
他のプレイヤーは重装甲タイプがメインであり、立ち回り的には不利である。その中で、デンドロビウムはバランスタイプ、別のプレイヤー1名もスピードタイプだ。これは明らかに勝負あり――そう誰もが思う。山口も、そう思っていたのだから。




