エピソード64-2
・2022年7月10日付
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午後3時、デンドロビウムは数回ほどのプレイで切り上げようと考えていた。スコアに関しては未だにアルストロメリアがトップに降臨してから、変動するような展開がない。彼女にチート疑惑が出る事自体、炎上マーケティングだと言う人間がいるが――この流れは当然だろう。
一方で有名税と言う様な意見も存在する。理由は、彼女の今までの行動を考えるとブーメランだと言う意見も多い。
「青騎士は、現状でチートとは無縁の行動をしている。こちらには関心が――」
別のモニターで青騎士を撃破している上位ランカーの映像が出ると、デンドロビウムにとっては無関心と言う表情を見せる。今回の青騎士は、どちらかと言うと今までの騒動よりも青騎士のネームバリューを利用した宣伝行為と言ってもいい。だからこそ――彼女は青騎士に関心を持たなくなったのかもしれないだろう。他のプレイヤーの中には青騎士を積極的に狩ると言うチートキラーの様なプレイヤーもいるが、賞金が出る訳でもないのに――と言う声がある。
しかし、今回の青騎士はリアルでARゲームのフィールド外で実害が出てしまっており、ネット炎上以上にやっかいな存在なのも事実だ。
それでもデンドロビウムが関わらない事には、何かおかしいと――思う人物が出ても不思議ではない。
「青騎士の名前を使っている以上、何らかの考えを持って動いているならば分かる。しかし、あの連中は――」
スポーツドリンクを片手にデンドロビウムが小休止する。そして、彼女はかつての青騎士騒動で話題となった人物と、今の青騎士を比較していた。彼らには『ネット上で目立ちたい』や『芸能事務所の為にライバルをつぶす』と言う考えしかないのだろう。それこそ――悲劇の繰り返しであり、リアルウォー待ったなしとも言える。
その証拠に――おかしいとネット上で言及するコメントやつぶやきが存在しない中で、ある人物は不思議に思っていた。
「彼女だけが――出てこない」
その人物とは、ジャック・ザ・リッパーだった。デンドロビウムとは別のアンテナショップにいるので、実際に会ってはいないのだが。彼女がデンドロビウムの話題が出てこない事に疑問を持ったのは、レイドバトルの前半終盤辺りである。この時はアルストロメリアも参戦し始め、お互いにライバルを意識していたと思われたのだが――実際には違っていた。
「話題に上がればネットが炎上すると言う事で意図的に――と言う訳でもないのだが、どういう事なの」
彼女も思わず――と言う位にセンターモニターをチェックして驚く展開である。デンドロビウムの信者やファンは0と言う訳ではないのだが、あまり目立って言う様な信者はいない。彼女の行動に関して賛否両論と言う事もある一方で、それ以上に芸能事務所を敵に回す的な行動も――理由の一つだろう。
【アルストロメリアも大概だが――】
【芸能事務所が更に過激思考で暴走していけば、それこそリアルウォー一歩手前なのに】
【超有名アイドルの様なナマモノが唯一無二のコンテンツになるのは、何かが違う様な気がする】
【もしかすると、ナマモノジャンルを唯一神コンテンツにしようと言う、芸能事務所AとJの差し金?】
案の定というか、ジャックも言葉を失う様なコメントが――飛び交う。これらのまとめサイトも次々と削除申請を受けて削除していくのだが、それでも――ループしているのは間違いない。
「この状況化を都合よく終わらせようと考えているのは、芸能事務所の鶴の一声と言うべきなのか?」
彼女は思う。芸能事務所AとJと言うデウス・エクス・マキナが今までの日本経済を――と。しかし、その時代は終わらせないといけないのだ。芸能事務所AとJは、ARゲームでいう所のチートと言う存在なのだから。
「しかし、芸能事務所の鶴の一声をチートと考えたのは、誰なのか」
彼女は鶴の一声をチートと発想する事自体、全く考えていなかった。ソシャゲの廃課金をチートと認識するような人物はいたのだが、そこまで考えると被害妄想待ったなしと言うか、ある意味で風評被害とも言える。まるで、超有名アイドルが該当する単語を使えば『それがチート』と言う位の勢いで。




