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ARゲームに挑む我侭姫とプレイヤーたち-不正破壊者の我侭姫-  作者: 桜崎あかり
ステージ6

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エピソード63-4

・2022年7月10日付

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 9月14日、外はあいにくの曇り空だ。曇りの場合は場所によるが、ARゲームの屋外プレイが不可に設定される。今の所、天気予報では降水確率は30%以下となっており、小雨が降るような気配もない。ARゲームの場合、雨によってノイズが入る事はないのだが――レース系ではスリップと言う物が付いて回る。そうした事情があって雨天中止のアナウンスがされるのだ。


 ARゲームが徹底的に大事故等でネット炎上するのを避けるのは、コンテンツの価値が下がる、風評被害と言った物が後々に影響すると考えているのかもしれない。しかし、マナーを守らないようなプレイヤーの存在がARゲームの価値を下げるのは、どのコンテンツでも一緒だろうか。


 昨日の夜のニュースだが、歌い手や実況者の夢小説を出版しようとした未成年が逮捕されると言うニュースが報道されていた。この件に関しては警察に通報があった訳ではなく、アキバガーディアンが手に入れたデータを芸能事務所に提供し、一斉の魔女狩りを始めたと言うべきか。だからと言って、芸能事務所AとJの夢小説が表舞台に出た場合、明らかに芸能事務所側も動くだろう。


 この件に関しても――そろそろ、まとめサイトが自分達がやった事の重大さに気付き――ネットで扱わなくなる。リアルウォーが起こってからでは遅いと言う事もあるが、それこそマフィアに武器等を売るような闇商人と同類に扱われるだろうか。



 一連のまとめサイトを見て、やはりというか大幅に脚色されたサイトを通報していくのは――別勢力のユーザーだろう。やっている事は――過去にアルストロメリアがやっていた方法を再利用している可能性が高い。


「ここまでくると、本当にリアルウォーが行われているようにも見える」


 足立区の某所にあるキサラギのビルでは、まとめサイト等に機密情報が流出していないか調べる部署が存在している。そのスタッフも、殺伐としたようなサイトや一連のネット炎上に関係した事件の記事を見て、リアルウォーが起こる事を心配していた。


「大量破壊兵器としてARゲームが転用されれば、それこそありとあらゆる兵器さえも無効化するような存在となるだろう」


 キサラギの社長と思わしき男性は、まとめサイトの検索をしているスタッフの一人に声をかける。そして、検索している情報を見て――とある懸念を持ち始めていた。


「それは、魔法と言う事ですか?」


「魔法――その例えは違うな。あくまでもARゲームはARゲームだ。つまり、本当の意味でデスゲームを再現する事となる」


「Web小説にあるようなデスゲームですか?」


「その通りだ。ゲーム感覚で戦争が行われる事になる事は避けられないだろう――それこそ、リアルウォーゲームだ」


 キサラギ社長は本気で大量破壊兵器としてARゲームの技術が利用されるのを避けていた。だからこそ、あの技術は――海外へ流出してはいけないのである。しかし、社長の表情はARメットを装着している関係で確認出来ない。だからと言って、別人が変装しているような様子はないだろう。


「過去に起こった戦争で、ゲームの様な戦争と例えられたケースもあった――それは、我々が望むゲームではない」


 彼は懸念している。ARゲームの技術が進化すれば、それはゲームと現実と見分けがつかなくなるかもしれない――と。社長の言う事も一理あるのは間違いないが、戦争とゲームは切り離されるべきである。ネット炎上も戦争と同じように例えられるのは――あまり良い傾向とは言えないだろう。自分達が行った過ちは、自分達で片づけなくてはならない――そうスタッフは思った。


 何としても、悲劇の連鎖だけは起こしてはいけない。芸能事務所だけが儲かるようなコンテンツスタイルは過去の物であり――時代遅れだと証明する為に、キサラギは本格的に動き出す。



 午後1時、デンドロビウムは自宅でカップラーメンを食べていた。自炊が出来ない訳ではなく、これから――アンテナショップへ向かう所だったのもある。食事もコンビニ弁当とカップラーメンという簡単な物でも――。


「テレビ局は、何処も例の芸能事務所に関するニュースか」


 テレビで流れているのは、芸能事務所AとJとは違う事務所の不祥事だ。芸能事務所AとJが起こした不祥事を別の事務所に差し替えて報道している部類ではないのは確実だろう。そんな事を今のタイミングで行えば、芸能事務所AとJは黒歴史確定であり、コンテンツ流通と言う点では障害がなくなるのは決定的だ。


 しかし、このような幕切れはデンドロビウムも望まないし、他の勢力も違うと言うだろう。ネット炎上勢は、アフィリエイト収入が得られれば芸能事務所の事情を無視してフェイクニュースを流すかもしれない。


「いつから、コンテンツ流通は――ここまでの情報戦をする事になったのか」


 デンドロビウムは思う。超有名アイドル商法時代のネット炎上もそうだが、いつからここまでの情報戦を行う必要性があったのか? まるで、芸能事務所AとJが絶対神のようなイメージを――と言う情報戦は今に始まった事ではないようだが。


「どちらにしても――決戦が近いのは間違いない」


 何処かの芸能事務所が水を差すような事をしなければ――レイドバトルが中止に追い込まれる事がなければ、今の所はレイドバトルに集中するべきだろう。そんな事を考えながら、デンドロビウムは食事を終えた。


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