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ARゲームに挑む我侭姫とプレイヤーたち-不正破壊者の我侭姫-  作者: 桜崎あかり
ステージ6

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エピソード63

・2022年7月10日付

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 一連の芸能事務所が関与した事件、それは芸能事務所AとJの謝罪と言う結果で幕を下ろす事になった。しかし、一部のファンからは謝罪に追い込んだ人物を逮捕するべきと言う声もでていたのである。そんな事をすれば――芸能事務所AとJは間違いなく、海外からカルト集団と認定される可能性が高いのに。そうした混乱している状況下、アルストロメリアは燃え尽き症候群となり、その場を後にしようとしていた。


 その状況で姿を見せた人物、それは過去に同じように芸能事務所A及びJ等から敵視されたガングートである。彼女はアルストロメリアが過去の自分と重なったのだろうか――あるいは、今の状況を放置できないと判断したのか?


「芸能事務所を壊滅させて――さぞ、満足なのだろうな!」


 その声に反応した一部ギャラリーが声のした方向を振り向くと、そこにはガングートがいたのである。ギャラリーにも同様の声があるのだが、それ以上に驚くのはアルストロメリアの姿だろう。


「貴様のやっていた事も、結局は超有名アイドルの芸能事務所と同じ炎上マーケティングだ! それを自覚していなかった訳ではないだろう?」


 まさかの衝撃発言がガングートの口から飛び出した。アルストロメリアの今までやって来た事は、全てとは限らないが芸能事務所AとJが行っていた炎上マーケティングと同類と言うのである。


「何を証拠に――そんな事を。私はネット炎上を狙ったまとめサイトに対して敵視して――」


「証拠か。確かに、そう言われれば明確な物は存在しない」


「だったら、芸能事務所と同じだなんて言うのは――風評被害の何者でもないわ!」


「正確なソースがなければ、ここで引き留めたのも因縁を付ける為とネットで書かれるだろう。それに、今回の件を誹謗中傷とネットで叩く人間も出るだろうな」


 ガングートは若干の余裕があるように見えるのに対し、アルストロメリアは焦りさえ見えるような表情――。これが意思の強さの差と言うのだろうか? 実際、ガングートは過去に自分が起こした出来事を後悔はしていない。どういう風に事件を感じるかは人それぞれであり――それを記事等で目撃していない人物には、語る資格がないとさえ言うだろう。


 俗に言うエアプレイやエア実況と言った物を彼女は嫌っているのだ。おそらく、アルストロメリアも似たような勢力に対しては嫌悪感を持っている可能性さえある。


「そこまで言う以上は、証拠があるのだろう?」


「明らかに実名が分かる範囲の証拠はない。しかし、これは――」


 ガングートがタブレット端末を素早く操作し、あるサイトをアルストロメリアに見せた。そのサイトを見たアルストロメリアの方は言葉を失う事に――。



 9月6日、ガングートはある人物とリアルで接触を試みた。その人物とはキサラギの関係者と名乗る人物である。ネット上では、電波とも言えるような情報を拡散する人物として――ブラックリストに入った人物でもあった。


「表向きは小説投稿サイト。しかし、そこに投稿されている作品は――世論誘導に近いだろう」


 その人物が語ったのは、アカシックレコードと言うサイトに関してのことである。ガングートは顔を確認した訳ではないが、目の前の人物は帽子を深く被っており――目線を合わせようともしない。結局、そこに言及をする事は避けた。目の前の人物が、他言無用と言うのであれば、プライバシー保護と言いだす可能性もあるのだが――。


「世論誘導――言い方こそ難しいが、芸能事務所AやJの行った炎上マーケティングと同じか」


「その言い方が的確なのかは分からない。しかし、向こうはそう思っていないようだが」


「同じ穴のムジナではない――そう言いたいのか。アニメや漫画等の夢小説は良くて、歌い手や実況者の夢小説はナマモノとして存在を否定する――」


「そこまでレッテル貼り等をする必要性はないだろう。どちらにしても、彼女の行動はARゲームの運営では手に負えないレベルまで到達している」


「その原因が、ふるさと納税――」


「彼女はふるさと納税の納税者――こういう例えは不適か。草加市へ一番納税している筆頭と聞いている」


 キサラギのスタッフが語った事は――あまりにも唐突過ぎるような衝撃的な内容だった。しかし、それでもいくつかは把握していたので収穫と言うよりは調べ物のソースが発見出来た――と言うべきか。


「この事は他言無用で頼む。最低でも――9月7日まで」


「7日と言う事は――レイドバトルの結果か」


「その日になれば、週刊誌や一部のマスコミも動きだす。それに加えて――」


「分かった。情報主の人物によろしくと伝えてくれ」


 最初にキサラギのスタッフと名乗った人物は――ガングートにとっては知らない人物だったかもしれない。しかし、情報の内容は間違いなく――あの時に知った物と同じだった。つまり、あの情報はまとめサイトに横流しされた物である、と。



 目の前のアルストロメリアが言葉を失う理由は、もう一つあった。この情報が実はキサラギのスタッフから流出したと明白に分かる痕跡があった為である。


「キサラギのスタッフが――!?」


 アルストロメリアはARウェポンのロングソードをガングートに向けるのだが、それをやっても――無意味なのは百も承知だ。手が震えているのを――自分が敗北を認めるのが嫌だったのかもしれない。


「アルストロメリア、今ならばまだ間に合うだろう? お前がやった事の罪の重さ――それを認めろ!」


 ガングートはARガジェットを突きつけるような事をしないだろう。そんな子供じみた脅迫をしたとしても――ネット上で虚偽を含めて書かれ、それが炎上する事も分かっていたからだ。


「自分は――ARゲームの未来を――コンテンツの未来を知りたかった――それを――」


 彼女の眼には涙が浮かぶ。泣いて周囲の同情を――と言う狙いだろうか? 周囲のギャラリーにマスコミがいれば、下手すると芸能事務所AとJに対して賢者の石を再び使わせてしまう可能性も――。


「現実とゲームは違う! 現実はゲームみたいにチートを使って容易に攻略できる程――簡単には出来ていない!!」


 ガングートの一喝、それはネット炎上を狙おうとしてねつ造記事を作ろうとしていた人物の手を止めさせた――。彼女は過去の過ちを変えられない事が分かっている上で、アルストロメリアを説得しようとしていたのかもしれない。


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